ギターの話
劇団!三角関数というグループを続けて丸十年が経った。どう考えてもこのタイミングで劇団を振り返るような一冊を書くべきなのではと思ったのだが、それは別の機会で叶えようと思う。それ以上に、ここ最近の人生はあまり上手くいっていない。でもそんな上手くいかない日々の中にはあまりにもキラキラした幸せがあったり、心躍る出来事が舞い込んできたり、決して不幸だとは思わない。だから苦しい気持ちをどう昇華していくかを考えた結果、趣味の話とか、仕事の話とか、結局そこに行き着く。可能な限りここに楽しかったことととか、自慢話とかを書いて自分を勇気付ける。今日も難しい毎日だから、自分で彩るこの物語を信じていくために、思いついたことを書いていくエッセイ集にしていきたい。
子供の頃からの憧れの一つに、「ギターを弾きながらオリジナルソングを歌う」ということがあった。
中学2年の時、同級生がギターをやっているということを知り、その偉大さに絶望した。高校に入ってもやってみたいという気持ちはあれど知識がないと諦めていた。そんな中でオリジナルソングを作るというノウハウだけは、大学生になってからネットのコミュニティを持つことで叶えることができた。
しかし、いくら曲が増えようとも一向にギターをやろうとしない。まず何からやってみればいいかが分からない。友人でギターを弾けるような人もおらず、ネットで依頼して曲のコードを教えてもらい、同時に安い初めてセットのギターを購入してみるも、難しいとすぐ感じて諦めてしまった。
同じくらいのタイミングで弟が高校生となり、軽音楽部に入る。完全初心者だった弟は、とりあえず僕のギターを手にして部活に行くことになった。それ以降、そのギターは完全に弟の物となり、僕はすっかり才能がないと見切りをつけてしまう。大学時代に舞台で演じたシンガーソングライターの役では、その弟のギター片手に登壇して、一切弾かずにストーリーが進んでいくという醜態を晒した。
時は流れ、社会人となった僕は毎日自宅でジャンジャカ演奏をしている弟のことを羨ましいと思った。弟子として志願するように弟に教えてほしいと言った僕だったが、その重い決意と反するように弟の考えはあっさりしていて、「4つのコードさえ分かれば大体の曲が弾けるようになるから安心しろ」と言われた。
そこで教わったのが、D、C、G、Eマイナーという4つのコードだ。これを押さえて音が鳴るようになるまでも苦労したが、綺麗に鳴った時はまあ嬉しかった。この4つのコードがひたすら出てくる楽曲を永遠と練習することで、それなりに描いていた「ギターが弾ける自分」に近付いていく。
ここまでくると後は色んなコードが弾けるようになるのでは、と思いがちなのだが、今現在までそんなに大して弾けるコードはない。ここにプラスいくつか弾けるようになり、それなりに好きな曲を選べるようにはなってきたのだが、まだまだである。不穏な音を鳴らすような曲の大半には「バレーコード」と呼ばれる激ムズコードが入っているので、まあ上達しない。でも、そんなバレーコードが入った僕の曲『休日』をファーストソロライブで披露できたのは頑張って練習してきた甲斐があった。憧れていた自分に、一歩一歩、ゆっくりではあるが近付いている。
とにかくギターは指が痛いけれど、楽しいからこれからも続けていくので舞台で弾く姿があればその時に期待して頂きたい。