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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

2022年1月15日から16日。旦那を嫌いになりました

作者: ヒロモト

「おっ?おっ?」


カズエとキヨシの夫婦は突然のアラームで目を覚ました。


「なんだ?」


『津波が発生しました。すぐに逃げてください。津波が発生しました』


「津波ぃ?」


地震も起きていないのに何でだろうと思いながらカズエは怖くなってきた。

我が家は海はそこまで近くないがどうしても3.11の事を思い出す。


(あれは新婚一年目の事だったな)


突然の地震。突然の津波。キヨシの判断で高台に避難した。結果。玄関が浸水する程度の被害だったが、あの時のキヨシは本当に格好良かった。

それ以来10年。カズエのキヨシへの思いは一切変わることなく今でも新婚一年目の様に愛している。


「んー?津波ぃ?」


(あれ?)


キヨシはゆっくり起きてきてテレビとエアコンを付けた。

カズエは既に避難袋を持ってパジャマの上からコートを羽織っている。


「あなた。避難しなくていいの?」


「うん?まだいいよ。へー。トンガで噴火?知らんかったなぁ」


避難どころかお湯を沸かしだしてコーヒーを作り出した。リラックスしてる様にも見える。

カズエは貴重品をリュックに詰めている。


「……避難」


「落ち着けって。1時40分から会見あるって。それを見てからでも遅くないよ」


カズエは車の免許を持っていないし、歩いて逃げるにもキヨシを置いてはいけない。

何度も何度もアラームが鳴り、何度も何度も避難を促す放送が聞こえる。

カズエはとりあえず避難してから落ち着きたかった。


「えっ?もう津波到達してるの?だってさ。よかったねー」


「でも。上昇中って書いてあるし次があるかもしれないし満潮が来るし……」


「会見は2時に延長~?なんだよー。眠いなぁ。明日が日曜で助かった~」


自分がおかしいのかと思うぐらいにキヨシは冷静だ。


「沖縄は大変だねぇ」


「ちょっ!ニュースにしといてよ!」


キヨシはレコーダーを起動して昼間のゴルフを再生し始めた。

もうキヨシが避難するつもりがないと思ったカズエは靴を履き玄関に座って待機した。キヨシのスニーカーも念のため揃えて置いておく。


(もう落ち着いた?いいえ。油断は禁物)


リビングから聞こえるゴルフ放送が終わった様で、キヨシは一応はまたニュースを見始めたようだったがすぐに消した。


「おーい。俺は寝るよー」


「なんで!寝てる間に津波来るかもよ!」


「大丈夫大丈夫。震災の時だって結局大丈夫だったんだからだいじょーぶ。何?今気づいたけどその格好!ばっちり逃げる気だったんだ?俺を置いて?ひでーなー。ハハハ!」


そう言うとキヨシは寝室に戻った。10分でイビキが聴こえてきた。

カズエは一睡もせずに明るくなるまで玄関にいた。

次の警報がなったら無理やりでもキヨシを避難させるつもりだった。





「なっ?大丈夫だったろ?朝ごはんある?」


9時頃に起きてきてキヨシはそう言った。

カズエはキヨシに対する愛情が一晩で一定量減ったのを感じた。


(朝メシなんて用意してねーよ!)













こわかったね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いい感じにリアルなところ。あと、どっちが道化なのか、明らかにしないところ。 実際、こういう些細(本当に些細か?)なところから、愛情は減っていくのかもしれません。 [一言] 住む場所、ニュ…
[一言] 奥さんの気持ちがとても良く分かる… これ、旦那さんの方が「逃げたい時は君一人で逃げても良いよ」と言ってくれるだけで全然違ったと思うんですよね。 ・万が一のことがあるといけないから、奥さん…
2022/02/03 10:33 退会済み
管理
[一言] 沿岸部なのか内陸部なのか。 太平洋側なのか日本海側なのか。 どこに住んでるかで互いの評価が180度変わるよねw
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