放物線?何それ?
めっちゃ久々に書きました。
やっと主人公のバトルです。
「始め〜」
またもややる気のない開始の合図がかかる。
グレンの対戦相手はそれと同時に魔力を練り始めた。
そしてグレンはーー
「フッ!」
息を短く吐き出し、対戦相手に向かって走り出した。
「なんだあいつ!魔力も練らずに相手に近づくとか」
「もしかして魔法使えないんじゃね」
そんなグレンを馬鹿にして笑っている生徒もいる。
だがーー
「なんか...速くね?」
「いや、あのスピードありえないだろ!」
グレンはどんどん加速していき、グングン相手に迫っていく。
「え?は?ちょっ!」
対戦相手もそんなグレンに気付き、魔力のコントロールが乱れてしまう。
「でも、近付いてどうするつもりだ?」
これは、クラスのほとんどの者が感じている疑問だった。
『魔法のメリットとは、中・遠距離から攻撃出来る事』
これは、この世界では誰もが知っている常識だ。
にも関わらず、グレンは自ら相手に近付いていく。
そして、ついにグレンは相手に触れられる程の距離まで近付きーー
「オラァ!」
裂帛の掛け声と共に拳を振り抜いた。
「「「「いや魔法使わねーのかよ!」」」」
観客すらも予想外の行動に、もちろん対戦相手は反応できない。
ガードされることもなく、グレンの右拳は相手の左頬に綺麗に吸い込まれた。
「ガッ」
相手はそんな呻き声をあげながら、物理法則に従ってグレンの左側に倒れ込む。
バコォォォォン!
はずだったのだが、物理法則などなんなその。
放物線を描くこともなく一直線に吹っ飛んでいき、そのまま闘技場の壁に激突した。
「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」
二度目のクラス大合唱。
「え!?魔法使ってなかったよね!?」
「おかしいだろ!素であのパワーってことかよ!?」
「俺に訊かれたってわかんねーよ!」
クラスは大混乱。
それも当然だ。実際、グレンは魔法を使っていないのだから。
だが、グレンがパンチ一発で対戦相手を吹っ飛ばしたのも事実。
『どういうことですか?!なんの参考にもならないですよ!』
アリサの心の中は大混乱。
クラスメイトが騒ぎ立てているうちに、吹っ飛ばされた対戦相手が土煙の中から歩み出る。
魔法障壁のおかげで痛みや怪我はないが、その顔は疑問に塗り潰されている。
そして放った一言は、
「いや魔法使えよ!」
これである。全くもってその通り。
この勝負は魔法使いとしての実力を調べるためのもの。
魔法も使わずに殴り合うのが目的ではないのだ。
「いや〜すまんすまん。ちょっと今のをある人に見せてあげたくてさ」
当の本人は全く反省していないが。
「ふざけんな!人を実験体にすんじゃねーよ!」
「だからごめんって」
全く謝る気が感じられない謝罪。
それを見て、観客席からも笑いが起こる。
だが、それも一瞬。
「けど魔法使ったところでーー」
空気が変わる。ピリピリとした緊張感が場を支配し、騒いでいた生徒たちも思わず黙り込む。
「さっきと変わらないよ」
そう言った直後、グレンの姿がぶれる。
さっきまで立っていた場所からグレンの姿が消え、気付けば再び対戦相手の目の前にいる。
「ッッッ!」
あまりに突然すぎて、相手は声を出すことすらできない。
グレンは既に、その右腕を引き絞っている。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎」
グレンが小さな声で何かを呟く。
すると、グレンの右腕から、かすかに紅いオーラが立ち昇る。
そしてその腕を、数瞬前と同じ様に振り抜いた。
「ガッ」
ドゴォォォォォン!
相手は同じ様な呻き声をあげ、同じ様に吹っ飛び、同じ様に壁に激突した。
さっきと違うのは、壁に激突した時の音とーー
ーー相手の魔法障壁が破れている事だけだった。
「勝者、グレン〜」
対戦相手もクラスメイトも呆然としている中、ロベルトが気の抜けたコールをする。
アリサもその中の一人。ただただグレンを見ることしかできない。だが、心の中では疑問を感じていた。
『よく見ておいてと言われましたけど、グレン君は私に何を伝えたかったのでしょうか?』
そんなアリサの胸の内を知ってか知らずか、グレンは体の向きをクルリと変えーー
ーーアリサに向かって嬉しそうに笑った。勝利の証だと言わんばかりの、元気なピースサインを添えて。
あれはバトルです。作者がそう言ったらそうなんです。
2回人を殴っただけじゃんとか言わないでください。




