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【室町編】⑦~エンカウンター・アタック 足利義視の場合~

「今日もいい天気だわ、早速、畑仕事を始めますか」

「ねえ、富子。畑仕事なんかしないで私と遊ぼうよ」

「良子姉ぇ、じゃま。まじじゃま」

「富子くん、君は冷たいなあ。ねえ代筆屋。遊ばない」

「良子様。それは業務外になります。あと先日お借りしたものはしまっておきました。ありがとうございます。」

「良子姉ぇ、菫ちゃんはもう代筆屋じゃないし。

それとたまにはあんたも婚約者の相手とかしなさいよ。ずっと放置じゃん」

「義視のこと?だってあいつ、つまんないだもん。富子たちと一緒にいるほうが楽しいよ」

べたべたといちゃついてくる姉の手を振り払って、私に庭に出た。

今日は、茄子の苗を全部植えた後に、根菜用畑に肥料撒いて、葉物の種まきしなくちゃ。

私は暇じゃないのだ。


畑に出て作業始めて暫くすると侍女の竹林が走ってきた。

「姫様、将軍様の御曹司が突然、お見えになって」

「ああ、義政様?あいかわらずしつこいなあ、ここに来てもらえばいいじゃない」

義政様とはあの既読スルーの後に、菫が義政様の屋敷に行ってうまく取り繕ってくれたらしい。

あの娘が一体何をどうしたのかはわからないけれど、義政様は以前のような熱烈なアプローチはしなくなった。

しかし私への好意を寄せていてのは変わらず、しょっちゅう日野の屋敷に遊びにくる。

あと変わったところで言えば、うちにくるたび良子のことを気にするようになったことかな。

なぜだろう、もしかして義政様は良子のことが?

「姫様、お見えになったのは、義視様のほうです。何かご立腹のご様子で」

「義視様!それい良子ではなくて私に!」


・・・きたこれ!義視きた!最悪の破滅フラグきた!・・・


私は着替えをするために部屋に戻り、着替えをしながらプレイヤーキャラが義視の場合を思い出していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

言ってみれば義視は富子にとっての不俱戴天の敵。

史実では、長らく男子に恵まれなかった義政は後継ぎとして出家していた義視を還俗させ、将来の将軍職を約束する。

しかしその後すぐに富子が義尚を産み、義尚を将軍職につけたい富子と義視との間で確執が生まれる。

これが応仁の乱が起きた一番大きな原因と言われている。

ゲームにおいては、義視の場合の最終ゴールは将軍就任である。

富子からの様々な嫌がらせ、妨害をうけつつに、困難を乗り越えていく感動のシナリオなのだ。

そんな中で富子の妹の良子は義視を深く愛し献身的に義視を支えていく。

そして富子が義視を毒殺するために毒をもった杯を義視の代わりにあおり悲運の死を遂げてしまう。

で、やはり死後怨霊になった良子は、富子を呪いころすのである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・またかこのパターンか・・・

・・やはりこれはよく考えて慎重に行動しないと・・


「ということで、第二回専門家会議を開催します。」

「えっ前回は、幕僚会議じゃなかった?それに結論は出てるじゃん。やはり義政と結婚せずに義尚は産まなければ。」

「何?馬鹿なの?それが難しくなったから義政と結婚したことを前提に考えるんじゃん。そうだ避妊すれば?」

「無理。その時代にそんな簡単な避妊の手段はない。」

「もう、お腹をバーンってけっちゃえばいいんだよ」

「痛いのいや」

「これはやはり義視様ときちんと話合って頂くことが重要かと。それにしてもお腹がすきましたわ」

「皆様、静粛に。現時点で我が陣営には菫という戦力を得ました。これにより富子が物理攻撃により殺害される可能性は大幅に下がっております。しかし」

「やはり怨霊相手じゃね、さすがに菫でも」

「わかりました。では結論としては、我々は、あらたに対怨霊のための戦力を得ること、そして島流し対策については継続的に農業の技術向上に努めることとします。」

「しかし怨霊を倒す力とかって聖属性の能力者とか?そんなに簡単に見つかるかしら」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「日野家というは、随分と客人を待たせるのだな」

「申し訳ありませんに、妄想に、いや着替えに時間がかかりまして、って私。こう見えて気ぃ使いじゃないですか?

で、初めてお会いする場合は、どんな服が似合うかなあと色々まよっちゃったりするじゃないないですか。でもお待たせしてごめんなさい。コツン。」

私は過去の記憶を総動員してあざと女子を演じてみたが、やはり通じないようだ。

所詮アニメや漫画の知識ではね。

「今日は、お前に文句を言いにきた。俺の良子を変な道に誘うな。」

「変な道って何よ。百合は立派な文化よ」

私は自分の趣味に何か言われるとついむきになってしまう。

「俺が良子を色々誘っても、良子はお前との予定があるからと言って俺を無視するし」

「うるさいな、うちには、姉妹一緒にって家訓があるのよ」

「大体、お前ら仲が良すぎんだよ。それおかしくね」

「おかしくないだろ、それにお前が思っているほどそんなに仲良くもない!この甲斐性なしが」

「甲斐性なし?お前俺を愚弄するのか」

「そうよ。そんなだから西軍と東軍いったりきたりするんじゃない、この日和見主義者!」

「ここまで侮辱されたのは初めてだ。、俺はお前に決闘を申し込む」

「受けてたつわ、このふにゃちん野郎!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「蹴鞠で勝負ということでいいんだな」

義視様は、勝負の方法は女の私が決めていいというので、蹴鞠にした。

実は前世で私たち姉妹は毎日のようにサッカーをして遊んでいたのだ。

地元の少年チームの助っ人に呼ばれるほどの腕前(この場合足前か)だった。

でもいつもゴールを決めていたのは、妹のあいつだったなあ。


もちろん、義視様との勝負は私の圧勝だった。

当然よ!

最後に唖然とする義視様のお顔を顔面シュートを決めてやったわ。


「くそ、もう一度だ!」


「今は、ちょっと調子悪かった、もう一度!」


「あとちょっとだったのに、再戦だ!」


義視様は何度も私に挑んでくるが何度やっても無駄。

圧倒的でないか。わが軍は!


「義視様、そろそろ日が暮れますゆえ」

義視様の近侍が思わず声をかける

「くそ、富子。今日のとこはこれで許してやる。また明日くるからな」


「富子きたぞ」

うわ、本当にきたわ。相手になってやるぜ


「富子はいるか!」

懲りないやつ、またぶちのめしてやるわ


「今日こそ、目にものみせてやるぞ」

その言葉、そのまま返すわ


連日のように義視様は日野の屋敷に訪れて私にぶち負かされて帰っていく。


「富子、勝負だ。あとそうそう途中で美味しそうな菓子があったから持ってきたぞ

勝負が終わったら食べようか」

「義視様、いつもありがとうございます。」


・・あれ?・・・

・・なんか、私たち打ち溶けてね?・・・

・・義視、意外といい奴じゃね?・・・


時折、良子がきて、「2人仲いいねえヒューヒュー」って茶化しにくるが、義視様は気にもせず、私との遊びに熱中している。


そんなある日の事、義視様とのいつもの勝負を始めようとしていた矢先、義政様が訪問してきたのであった。

「義政!なんでここに?」

「なんでもはないでしょ。富子は私の婚約者ですよ。」

「ん、そうだよな。すまなかった、俺は帰ることにする。迷惑かけるな」

「義視様!」

「富子、いや富子様、なんでしょうか?」

「なんで、そんなに義政様に遠慮なさるのですか?」

「いや、私は弟ですし、そもそも」

「なんで、そんなに義政様や他の人の目を気になるのですか?」

「・・・」

「義視様はご自分のやりたい事をなさればいいのです!ご自分を殺す必要はないんです」

「あ、ありがとう、富子、俺・・・」


・・・この優しさなんだ・・・


義政は、富子の姿を見て思った。


・・・富子は自分のも気づかないうちに人の気持ちに寄り添っている・・・


「義視、今日のところは引き揚げますよ。でも富子は渡しませんよ。」


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