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【破壊神復活編】㉒★ エピローグ(本編完結)

2070年にこの国を吹き抜けていった嵐のような大乱によってこの国の在り方は大きく変化した。

一夜にして、つい先日までこの国の政治と軍事を牛耳っていた竹林一族が消滅した。

この政治的空白期間が長引けば、各軍閥の権力闘争から再び内乱へと発展していくのは自明であった。

そこで良子たち5家と細川や楠間茂たちは、帝の権限を強化した専制政治体制を確立し軍閥の解体を中心とした各種改革を断行していった。

もちろん帝や彼らが自らの権力を永続的なものとする気が毛頭なかったのは、その後この国が円滑に民主化へ移行した事実を見れば明らかである。

専制政治開始から半年後、帝は民主制への移行を宣言し自ら退位する。

天皇家は象徴的存在として一切の政治・軍事への関与がないものとした。

退位された帝は皇室からも離れ、表舞台から一切姿を消し、その後の消息を知るものはいない。


マクロの話はさておき、嵐の真っ只中にいたこの物語の主人公たちのその後の様子。

まずは、楠間茂だが、本人は強く退役を希望していたものの、その意は当然通じず、参謀本部解体後に新たに発足した国防統合幕僚局の局長を就任した。

あらたに就任した何もしない丸投げ将軍と、優秀だが人のいう事を一切聞かないきまぐれな部下との間に板挟みとなって日々中間管理職の悲哀を感じている。

仕事帰りに居酒屋での飲む一杯のビールだけがが、いまのところ人生の唯一の楽しみである。

そんな彼の元にいた服部優樹菜は軍を辞めて、楠間茂が贔屓する居酒屋でウェイトレスとして働いている。

また、もとより歌が得意だった彼女は、歌手としてデビューするための準備中でもある。


そして竹林静香こと藤堂茜。

その力を大きく失った竹林家であるが、5家の統括執事家としての役割からお家断絶するわけにもいかず、当然当主をどうするかが問題となった。

竹林家の形式上の当主は竹林初美であったが、彼女はカーミラ・ドゥミトレスクとして覚醒したため、その見た目も大きく変貌してしまっている。

その他にも色々と不都合な事が多すぎるので、初美は今回の戦闘に巻き込まれて死んだものとして、竹林静香が当主として返り咲くことになった。

静香は名目上のみならず実質的な当主として、竹林家を本来の役目、5家の統括執事に戻すことに尽力する。

軍閥としての竹林家は竹林寺の崩壊により人員や設備などの過半を失ったが、残っていた軍事に関連する事業は全て売却して、主には教育と歴史研究を軸とした企業として再スタートする。


細川勝元は、他にやりたいことがあると言って、家督を弟の成賢に押し付けて政治と軍事の世界から身を引く。

また、有馬麻衣との婚約も解消した。

彼がやりたいこと、それは趣味と実益を兼ねた芸能プロダクションの経営であった。

あらたな才能を発掘するためという名目で日々、繁華街でのナンパというかスカウトに没頭している。


さて、カーミラ・ドゥミトレスクだが、まさか正体を明かすわけにもいかない。

そこで彼女は、かつて竹林静香の身代わりにされるために行方不明扱いになっていた藤堂茜であるという事にした。

しかし金髪碧眼という姿になっていても、竹林初美としての面影を残している彼女。

竹林初美を利用した実験に関わっていた旧竹林の残党もまだ多く残っており、彼女の身に何が起こるかわからない。

そこで、彼女を守るための後ろ盾ということで、細川勝元は彼女を養女にしてしまった。

さらには、勝元は彼女を自分のプロダクションの看板タレントにしてしまったのである。

勝元曰く「有名人にしたほうが、却って彼女に手を出せなくなるはず」だそうだが、有馬麻衣は、その言葉を1ミリの信用していない。

本名あらため細川茜、芸名カーミラ・ドゥミトレスクとなった彼女はコスプレ配信者として今やその人気はうなぎ登りである。


さて5家の末裔のその後。

日野良子。

彼女は、事実と異なり、大乱においてもっとも貢献した人物という事になってしまった。

そのため彼女は、2階級特進して中将となり、解体された帝国陸軍に代わりあらたに創設された日本国防軍の主席将軍にされてしまった。

土御門に次ぐ家格の高さと細川や六分寺などの有力者の後押しがあったことも手伝った。

そんな彼女であるから、権限移譲などと適当な理由をつけて国防統合幕僚局長に殆どの仕事を押し付けている。


有馬麻衣は、以前と同様にアリマホールディングからの軍への出向を続けている。

麻衣は、国防統合幕僚局にて作戦部長と情報部長を兼務しているが、彼女は、面倒な仕事を全て上司に押し付けるタイプである。

なお、アリマホールディングは、竹林から魔術関連、エネルギー関連の研究や事業を引き継いだため、彼女はその監督役に就いている。


六分寺桜は、軍を離れ六分寺インダストリーに戻り、今は亡き六分寺宗全の後を継ぐべく経営者見習いとして修行中。

六分寺インダストリーは、戦闘用車輛の開発製造技術を生かして民生用自動車の開発製造に進出。後に世界的な自動車メーカーとなる。

モータースポーツなどにも参入し、それもあって桜も最近はモータースポーツに夢中で自らハンドルを握っている。


軍を離れた永園菫。

戦闘以外に取柄がないと思っている彼女は、優樹菜の薦めもあり音楽学校に通い、作詞と作曲の勉強をしている。

そんな彼女をタレントとして売り出すべく勝元は虎視眈々とその機会をうかがっている。


そして、今回も影の薄かった主人公である土御門富子は、軍の配下から独立して設立された国民警察局へ移籍し、そこの初代局長となった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「私、レバニラ大盛とそれに餃子。どっちもニンニク抜きで」

「まいど、しかし麻衣も随分変わったわね」注文を聞きながら少し呆れ顔のウェイトレス姿の優樹菜。そう、ここは楠間茂が贔屓にしている大衆居酒屋だ。

「麻衣、だから別に関係ないって、そんな気にしなくていいよ」と桜。

「だって桜はニンニク嫌いじゃん!」

「それは元々だよ。食べるとお腹の調子が悪くなるだけ。他人が食べる分には問題ないよ」

「じゃあ、桜はキスの相手の口がニンニク臭くてもいいわけ?」不満げに反論する麻衣。

「それは・・・それは、ちょっと、いやかな」頬を可愛らしく赤く染める桜。

「桜は?」優樹菜は注文を急かす。

「私はハーフサイズのオムレツがいいかな」

「桜、小食ね」と麻衣。

「だって、あとでご馳走あるし・・」少し嬉しそうな顔の桜

「ああ、はいはい、期待しててね、あ、富子と良子が来た!」

「ごめん、遅れて」

「将軍、暇なくせにおせーぞ」と良子を睨む麻衣。

「私もごめん」と富子。


大衆居酒屋のテーブルを囲む4人。

「富子、今日、菫は?」と麻衣は尋ねる。

「学校のほうが大変らしくて、ね?優樹菜」富子は菫と同じスクールに通っている優樹菜に同意を求める。

「さあね、まあ、そんなことより、良子も富子もビールでいいよね。つまみは?」優樹菜の言葉、故意的なのか?ややそっけない。

「じゃあ、わたし、レバー串20本」

「はぁ?」驚く優樹菜。

「じゃあ、私も追加でレバー串10本」麻衣がすかさず声を上げる

「そんな事ではるなや!」そういいつつ最近のそういう麻衣の態度がうらめしい優樹菜。桜は、顔を赤らめている。




「シゲさん、相変わらず賑やかな人たちですね」微笑ましくその様子を見ている店主

「マスター。まあうるさい奴らですよ。特に日野さんと有馬さんは私の頭痛のたねです」カウンター席で一人晩酌をしている楠間茂は苦笑する。

「シゲさん、はい、これ、いつもしめ」そういってしめの料理を出す店主。

「あー、これこれ」そういって楠間茂は、ハーフサイズのカツカレーに箸をつける。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

会食を早めに切り上げて自宅の玄関の扉を開ける富子。

玄関まで迎えに出ていた菫を抱擁して軽い口づけをする。


「食事済ませた?」富子は菫の瞳を見つめていう。

「はい」可愛らしく頷く菫。

「じゃあ、私は、ちょっとシャワー浴びてくるから、先に行っててね」


軽くシャワーを浴びて、寝室に入る富子。

菫は、ベッドの端に腰かけている。

そのすぐ隣に座り首筋を菫に向ける富子。




・・・・・



「ん、どうしたの、菫?遠慮しないで早くなさいよ」


「あの、その、心配なのです。富子様に負担がかからないかと」


「そういう事言うと菫を私が心配するだけだけど」


「すいません、失礼しました」


菫は顔を赤らめた。そして富子の首筋に口元を近づける。


富子の首からサァーと赤い筋が流れる


すぐに首から口を離そうとする菫。


「だめっ」菫の頭に手を回す富子。


「ちゃんと最後まで頂きなさい」菫の髪を撫でながら優しく囁く富子。


「あ、ありがとうございます」消えそうな声で頷く菫。


菫は、まるで自分の身体の中に富子が入ったきた感覚に襲われる。


優しい富子の気持ちが身体の中に満ちてきてうれしさで涙が出る。


この幸せはいつまで続くんだろう・・・


「富子様は今何をお考えですか?」首筋から口を離した菫は尋ねる。


「そんなの決まっているじゃない。」


「えっ?」


「いやらしいことよ。菫は今何を考えているの」


菫はふと考える。


・・・以前の私は、富子様より先に居なくなるはずだった・・・


・・・でもその後に富子様がどう思うかなんて考えていなかった・・・


・・・今は、その逆だ・・・・


・・・富子様がいなくなった時のことを考えている・・・・


・・・考えずにはいられない・・・


・・・でも、それを考えることは無駄なことだとも思う・・・


・・・富子様にも言ってもしょうがないことだと思う・・・


・・・だから、今は・・・


・・・富子様の笑顔を見れればそれでいい、それで十分だ、だから・・・


「私もそうです、富子様。いやらしいことです。」


その答えに満面の笑みを浮かべる富子。


挿絵(By みてみん)


もともと、室町時代編の後に本章の時代を書いていたのですが、どうにも主人公たちの存在が薄くて削除しました。で3章で完結したのですが、心残りがあって、外伝として追記しました。

結果、却って全体として読みづらいものになったかと反省しています。

ですので、もう一度、最初から書き直してみようかなと思っています。

さて、本章にて一番書きたかったのは、桜と麻衣とのカプ、実際の姉妹ではない、妹的存在と姉的存在の百合です。

いままで、富子(元気)ー菫(無口)、富子(元気)ー麻衣つんでれ、富子(元気)ー桜(妹)というカプと言った感じで主人公を軸としたものだけだったのでツンデルー妹に挑戦してみたいかと思い。

結果、色々と余計な事を書いてしまい希薄になったなあと思っています。

今度こそ、これでおしまいなのですが、各章について、それぞれの後日談など、それこそ本来の外伝的なものは書きたいなあと思っています。

引き続きよろしくお願いいたします。

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