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【破壊神復活編】⑩ 一杯のカツカレー

「さて、今から竹林の本陣に乗り込むわけだけど、静香、じゃなくて藤堂さんはここに残っていて」日野良子は藤堂茜に冷たく言い放った。

「ちょっと良子、今さらその呼び方はないでしょ、それに私だって自分の身ぐらいは・・・」茜は良子を睨みつける。

「じゃあ静香。あんたも、さっき見たでしょ。龍三が身体を乗っ取られるのを」

「そうだけど。でも、なんで私だけ?あなたたちは大丈夫なの?」

「ええ、わたしたち五家の子孫は、奴には乗っ取られないのよ」

「でも良子!」

「いいから静香!あなたはここで菫を弔って上げて。お願い」

「うん」


・・・菫が死んだのは私のせいだ・・・


・・・富子がああなったのも・・・


その責任を感じざるを得ない茜をただ頷くしかなかった。


ん?


下を俯いている茜を顔を上げさせる良子。

「さっきの言い方ごめん、静香のせいじゃないよ」

そして茜の唇に自分の唇をあてる。

唇を合わせて抱擁する2人。

「静香、続きは帰ってからしましょう、なんて言わないよ」唇を離す良子。

「うん」

「フラグになるしね」


「あーもういいかしら、お二人さん、そろそろ」玲子がしびれを切らす。

「すいません」と良子。

「ちなみに私もこの初美って子も、あんたたちと同じくやつに乗り移られることはないから安心してね」玲子が補足する。

「俺はちょっと違うけどニャ」と黒猫。

「あんた余計なこと言うな!」玲子を足で黒猫を蹴ろうとする。

「ひぇ、ごめんなしゃいニャ」逃げる黒猫。

「おい、お前ら、もういくぞ!」細川勝元が出発を急かす。


良子たちを載せたCHー53Kキングスタリオンが上昇していく。


・・・どうか、死なないで・・・


そう願いながら、藤堂茜は上昇し南下していくその機体が肉眼では確認できなくなるまで見送っていた。


・・さてどうしようかしら・・・


茜がそう思った瞬間



ガラガラガラ!!!!



突然、大きな音ともに瓦礫の山の一角が崩れ始める。


そしてごゴソゴソと瓦礫の押しのけて地面から人影が現れる。


えっ??


茜はあわてて拳銃を抜く。


クローン兵??


2体いる。

その片方はフラフラとしながら僚友を肩で支えてながらこっちに向かって歩いてくる。

満身創痍の血だらけでいまにも倒れそうだ。

彼女が肩を貸しているもう片方は、手足をだらりとさせ下を俯いている

こちらはもう息がないようにも見える。


こっちに来るの?えっ?


僚友を肩で支えていたクローン兵は、茜に気づきほっとしたような笑顔をつくった。


そして



「・・・私のお姉さんを・・・」


その言葉を最後に彼女は地に伏した・


「ちょっと何なの?」


おずおずと彼女たちに近づく茜。


彼女たちは最早微動たりともしていない。


「えっ嘘!」


僚友に支えられていたほうのクローン兵の姿を間近に見た茜は思わず絶句してしまう。

そしてボロボロと大粒の涙を流す。


「・・・ありがとう・・・連れてきてくれたんだね・・・これでちゃんと眠らせてあげられるよ・・・」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところは変わりここは京都南部の笠置山周辺。

将軍直轄軍の一部、陸軍第1師団第一特科隊が布陣していた。

各地に分散している第1師団の中では、一番帝都に近い。

第一特科隊は帝の即位30周年式典の際の礼砲任務にあたるので、この地で予行練習をしていたのである。


「なんだい、こんな夜更けに。敵襲でもない限り起こすなといったろ」

宿営地で深い眠りについていた司令官、楠間茂くすましげる准将は副官の声に寝ぼけまなこを擦る。

「申し訳ありません司令。歩哨が怪しい人物を捕らえまして」

「はぁ、君も知ってるだろ?そういうのって大体敵のスパイか、もしくは・・・」

そういいながら楠間茂は寝起きのお茶を啜った。

「これを司令にと」

副官は一本の軍刀を差し出した。


ブハアアアアアア!


楠間茂は、おもわずお茶を噴出した!


軍大147期生の恩賜の軍刀!!


これを持っているのは、俺とあの方だけ!


「おい!俺が行く!どこにおられるのだ、その方は!」


「あ、はい、ご案内いたします で、どなたなのですか?」


「帝だよ!み・か・ど!今上天皇!」


バタッ


その言葉を聞いた副官がその場で卒倒したのは言うまでもない。



「帝におかれましては、このように無碍なお迎えを致しましたことを・・」楠間茂は地面に頭をこすりつける。

「いいよ、シゲ、頭あげてくれよ。俺だって一応軍大卒だしさ、こんな場所でも問題ないさ」帝はその身分には相応しくないようなフランクさだ。

「恐れ多いことでございます」

「さて、朕はいままで政治や軍事の実務には極力関わるべきではないと思い、そう行動してきた。」帝は口調を改めた。

「・・・・」

「だから参謀本部の少し強引とも言えるやり方にも目を瞑ってきた」

「お気持ち察し致します」

「しかし、民草、臣があってのこそ朕である、それを守ってこそのわが国体である」

「まことに・・」

「だから参謀本部、いや竹林が己の宿願のために民草を犠牲にした事、それだけは朕も許すわけにはいかない」

英明な帝は帝都でのテロリストによる大量虐殺が竹林の自作自演の謀略であったことを看取している。

「だからシゲ、また、久しぶりにお前を頼ってよいか?」

帝の瞳は真剣そのものであった。


「はあ、しかし・・・」

楠間茂は迷っていた。

正義感の強い帝のご気性を考えれば最前線に立とうとするだろう。

自分は帝を守り切れるのであろうか?

このまま、こっそり帝をお守りしていたほうがよいのではないかと。

「おい、シゲ?頼む。俺のできることは少ないが、この戦に勝った暁には可能な限りお前の希望に沿うことはすると約束する」

「身に余る光栄ではございますが、やはり・・」楠間茂を下を俯いたままだ。


・・・いいのか?俺は・・・・


・・・本当にこれでよいのか?・・・・


・・・俺をここまで頼ってくれる人がいるのに・・・


・・・俺と一緒に戦いたいって言う人がいるのに・・・


・・・そして・・・


「しょうがないですねえ。ハイハイ、わかりましたよ、でもタダではいやですよ」突然、楠間茂の口調が変わった。

「わかっている。俺のできることなら」

「じゃあ、お礼として軍大第2食堂のカツカレーを1杯奢って頂きます、それとここでは私が上官ですから戦場では私の指示に従ってもらいますよ。少尉殿」


「アハハハハ」

帝は破顔して哄笑する。30年前の友人の姿がそこにあった。


「シゲ、シゲは本当に変わらないなあ!30年前と全く変わらん、わかった!カツカレーな、カツカレーな」

「変わっておりますよ、さすがに今では大盛は無理です」



翌日、楠間茂は部隊全員の前で演説を始める。


「昨晩、古い友人が私を頼ってきました。」

もちろんその友人が誰であるかは、もはや知らぬものはいない。


「で、みんな知らないかもしれないですけど、こう見えて私は結構、人がいいんですよ。」

隊員たちの間で笑い声が起きる


「それで、私はその友人のために、これから竹林さんと戦を始めることにしました。

だからこれは私の個人的な私情による戦です。

ちなみに、私がこの戦に勝った暁には、彼からカツカレーを奢ってもらう予定ですけどね」

再び爆笑の渦に包まれる。


しかし、そこで突然、楠間茂は拳銃を抜いて部隊員たちに向けた。

「で、私は、いま、こうやって君たちを脅迫します。私の個人的な戦に参加しろってね」

・・多分、何を言わくても、ここにいる全員は自分に従うだろう・・


そう考えた楠間茂は、万一戦に敗れた時の責任を全て自分一人でしょい込む事を考えていた。


兵士たちは、いったん静まり返る


「はぁ?まっぴらだね、そんな事」

一人の古参の兵士が大声を上げた。


「俺は、シゲさんのしょぼい脅迫に屈して戦をやるなんでまっぴらだ」

兵士たちは皆、古参の兵士のほうを見やる


「だからよう、俺も、その友人とやらに何か奢ってもらうために戦をやるぞ、シゲさんに脅迫されたからじゃねえ、自分のためにやらせてもらうぞ」


うぉおおおおおおおおおおおお!!!!


一気に喚声が上がる


「シゲさん一人でかっこつけようとすんな!馬鹿やろう!」


「ハハハ、カツカレーのために戦始める馬鹿な指令とかいるのかよ!」


「そんな馬鹿には俺たちのような馬鹿がお似合いだぜ!」


「ふん、負けた時のことなんか考える必要あるか!馬鹿が?」


「そうだ!この馬鹿指令の下で戦って負けたことなんかねぇだろ!俺たち」




「お前ら、俺のことそんな馬鹿馬鹿いうなや・・・」思惑を外されて苦笑する楠間茂。

「シゲ、お前はひどい部下を持ったな」そういう帝の目は涙で潤んでいる


こうして陸軍第1師団第一特科隊の全員は、1杯のカツカレーのために命を捧げる覚悟を決めたのである。

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