【学園編】⑨★ 灰色の猫(一応完結です。)
玲子と章の魂は、再び現代へ。あの事件のあった日へと帰ってくる。
「ちょっと、章!あんた計算間違えたでしょ?」
「はあ?、間違ってねえよ」
「なんで?もう鍵譲りの日になってんじゃん!」
「はあ?玲子がその日までっていっただろ。つか、そんな事より俺死んでて草」
文字通りの修羅場である。。
全身傷だらけで血だらけの菫とナイフを手にした富子の母が対峙していた。
その横で黒猫を抱え、死んだような目の富子が立っている。
「菫もわかって!もうこんな思いを私たちの子孫にはさせたくないの!」母は叫ぶ。
「お母さまは間違っている、死んで私に鍵を渡すのがルール」冷たく言い放つ富子。
「その悲しみの連鎖はここで断ち切るのよ!だから一緒に死んで。富子。」
「菫、殺して!お母さまを殺して!」富子は菫に命令する。
「富子様!、それは!」菫は迷っている。
「菫、殺して!ルールを守らないものに罰を与えて!」
その傍らで血を流して横たわっている章の身体。
玲子も腹部から血を流してぐったりしている。
富子の母と菫の乱闘に巻きこまれたようだ。
この時代に残っていた2人は無力に近い存在だったから当然だ。
「はあ?、草とか言うな馬鹿。って、あたしも瀕死じゃんか!くそ、良子、役に立たねえな。で、章、鍵はどうなってんの?」
「ああ?、あの2人のどちらにもねえよ。ちゃんと、こっちにあるじゃねえか。過去でなく未来を変えたけど、鍵は一つのはずという原則からの矛盾解消のために、あいつらの鍵はちゃんと消えてるよ。つかそんなことわかるだろ」
「じゃあ成功したんだね、あーあ、ちょっと、あたし、眠くてさああ、意識がもう・・・」
「おい、こんな時に寝るなよ。消えるぞ」
「じゃあ、とりあえず、あの猫に移るわよ。」
「また、猫かよ」
「はあ?今は、仕方ないでしょ。早くしな・・さい・・もう限界」
「わかったよ、もう」
そして富子の抱えた黒猫の中に飛び込む2人の魂。
「ああ?、また猫か。なんか痒いし、おい玲子」
「ああ、眠い。あんたと違って、こっちは相当の魔力を使ったんだから・・・力戻るまで起こさないでよ」
「おい、どうすんだよ、この状況。お前が寝たら5大魔法も光も使えないぞ」
「あんたも、闇の大魔導士でしょ。腐っても使徒の一員でしょ。なんとかなさいよ、任せたわ、くれぐれも世界を滅ぼさないようにしてね」
「おい、玲子!」
・・・・・・・・
「おい!」
・・・・・・・・
返事はなかった
「ちっ本当に寝やがった。」
そして菫と母の戦いには、勝負がつく。
菫が奪い取ったナイフは、富子の母の首筋に刺さっていた。
「と、富子・・愛していたよ・・」母の最期の言葉。
「お母さま、私も愛していたよ・・」そう言うと富子も気を失った。
菫は自分が殺人を犯した事実に呆然として立ちすくんでいる。
「お、遅かった?」
トンプソン・コンテンダーを手に部屋に飛び込んできた良子。
富子の母、玲子、章の死体が横たわる惨劇の現場に唖然とする。
「おせーぞ、良子」
「えっ?猫が?」
「まじでお前役に立たねーな」
「その声は、章?」
「そーだよ、お前がヘマして俺と玲子の身体が死んだから、いま玲子とこの猫の中にいる」
「玲子は?」
「寝てる、当分起きない。それとお前たちの鍵は全部おれたちが貰った。もう「鍵譲り」は消滅した。いまさらだけどな」
「も、申し訳ない。でもどうすれば・・」
「まずは、菫と富子の記憶を消す。」
「章くんの魔術は、私たちには通用しないでしょ?」
「ああ、でも、お前、その銃とそれの弾は玲子から受け取ってんだろ。ちょっとみせてみろよ」
「これ」銀色の大きな弾丸を手の上に乗せる良子。
「ああ、これか」
そういうと黒猫はぶつぶつと術を唱えだした。
「いままでの記憶を封印し、偽の記憶で上書きする念をその弾にこめた。それであの2人を撃てよ」
「大丈夫?」
「ああ、俺が直接術をかけることはできないが、その弾を通じてならかけることができる。多分だが」
「多分か、記憶は消せないんだよね。」
「封印するだけだ。早くやれよ。人体には影響はないから、まあ脳に多少影響あるかもしれんが」
「わかった・・」
そういって、良子は菫と富子、それぞれに弾丸を打ち込んだ。
倒れこむ菫。
そして目覚めた2人は、過去の記憶を失い、それぞれの分家に引き取られた。
土御門本家と永園本家はここで断絶する。
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そして10年後。
クライマックスの舞台は、一文字女学院の講堂。
「おい、セイメイ!一体なにが起こった!?何が起きている!?」
結界の中で良子は、黒猫に問いただす。
黒い霧はどんどんと広がり、それに触れた人々どんどん倒れて、被害はますます拡大していく。
「広橋、ああ、怨霊だよ。10年前のあの時、記憶は消すことはできても、心の闇は消せなかった。」
「そんな!富子一人にこれだけの闇があるなんて」
「富子一人のもんじゃない、あれは、初代土御門富子からの「鍵譲り」を始めてからの土御門家の連中の後悔と絶望と悲しみと苦しみの集大成だ。多分、有史以来最大で最悪の怨霊だ。1000年かけて溜まった闇だ。」
「そんな・・・」
「あの弾丸で富子は、大きな心の闇をもっているという記憶が封印した。だからいままで何も起きなかった。」
「私のせいか・・」
「そうだな、でも一概には言えない。いずれ術が消えて暴発するのは明白だったから。ただ時期が悪かったな」
「どういう意味?」
「闇属性の俺じゃ、もうどうにもならないってことさ。」
「どうなるの?」
「うまくいってこの日本が滅亡するくらい。最悪の場合、東アジアの人類は全部死ぬくらいかな。」
「章くん、玲子なら、玲子ならなんとかしてくれるんじゃない?」
「えっ、だってあいつは、もう10年以上も寝てるんだぜ」
「じゃあ、章くん、玲子を起してよ!」
「ええええ、だって折角、俺一人になれたのに・・・」
「そんな場合じゃないでしょ」
「お前は、知らねえだろ。あいつの寝起きの悪さと起きた時の不機嫌さは、まじで人類滅亡のほうがまし」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ。ほら、春アニメのほうはいいの?」
「あ、そうだった。じゃあ、起こすか」
「おい、玲子。いつまでも寝てんじゃねーよ」
・・・・・
「おい、玲子、さっさと起きろよ」
・・・・・
「やっぱダメッぽいね」
「章くん、私知ってるのよ、玲子を起こすおまじない」
そう言うと、良子はしゃがみこみ黒猫の耳で囁いた。
「それだけは、絶対いやだ」
「諦めなさいよ」
「諦めた。人類の未来を」
「それ諦めるのやめなさいよ」
「つ、わかったよ、もう」
そして黒猫は諦めて言う。
「お姉ちゃん、もう朝だよ、起きないとチューしちゃうよ」
「きもっ」
若い女性の声がした。
「ああ?こっちだってやりたくないのを我慢してやったんだよ!おい。」
「はあ?何よ、それにこの状況。まじでハルマゲドンじゃん。何やってんのよ。章。」
「ああ?仕方ねえだろ。こっちは、闇属性だし」
「章、つーかルキフェル。大魔王のくせにだらしないの。」
「ああ?ここでその名で呼ぶかよ。ありえねー、空気読めよ。」
「うるさい、で、これなに?この怨霊。まじきもい」
すると闇の一部は黒い矢となり猫に向かって降り注いでくる
「はあ?何?私に反抗しようっていうの?このミカエルに?」
猫は黒い矢を睨みつける。
猫の身体は、眩い光で包まれ、黒い矢は消え去る。
いつしかその猫の毛の色は灰色となっており、身体もふっくらとしている。
ボンベイ種だった猫は、ブリティッシュショートヘアに変わったようだ。
玲子は、術を唱え始めた。
「私に反抗していいのは、可愛い弟のルキだけよ!」玲子は叫ぶ。
「おい、ミカ!何言ってやがる。それとお前、何をやるんだよ」
その言葉に少し照れる章。
「折角の機会だから5大魔法世界に接続するわ。それにあたしの光とあんたの闇を加えて・・」
「はあ?まじか?封印じゃ・・・」
「食らえ!マジカル・レインボー・イリュージョン!!!」
「だっせえ名前」
7色の光の巨大な渦が現れる。
赤(火)、橙(地)、青(水)、緑(風)、銀色(空)、白(光)、黒(闇)の光
「ああ?ミカ。そもそも虹の色と微妙に違うじゃん、闇は光らねえし」
「はあ?虹が7色なんて日本だけの話でしょ。世界には、黒と赤の虹もあるくらいよ。」
黒い闇は、7色の光の渦の中心にどんどんと吸い込まれいく。
「あ、やばっ!」
7色の光の渦は、突如、その輝きを減らす。
「おい、ミカ。なんで今、力を絞った?出し惜しみとかすんなよ」
「はあ?馬鹿なの?さっきの出力だと、闇だけじゃなくて、この世界全部が吸い込まれるからよ。でも、さすが5大魔法+2ね」
7色の光の渦と黒い闇は、拮抗する。
「よし、ルキ。ちょっと代わって。この状態を維持するのよ。」
「ああ?ミカ!それ俺がやるのかよ。なんで?」
「うるさい、早く変わりなさいよ!ルキ」
「はいはい、アイハブコントロール」
「結構」
そういうと、7色の光の渦と闇が拮抗する中で灰色の猫は闇の中心にいる富子のほうに歩を進めておく。、
「富子様!」
灰色の猫は、まるで教師が叱るような声色で闇の中心にいる富子に話しかけた。
「竹林?」その懐かしい声に、正気を取り戻す富子。
「富子様、そこにおしゃがみください。」
「は、はい」その言葉に素直に従い、しゃがみこむ富子。
バシッ
灰色の猫は、富子のおでこに猫パンチを食らわせる
「痛っ」富子はおでこをおさえる。
「富子様、これは我儘をいった罰です。」
「ご、ごめんなさい」
「あなたの、いや、貴方たちの鍵は全部わたしが頂きました。」
「竹林・・・本当に・・・本当に・・・やってくれたんだ」
「はい、ですからもう2度とこんな我儘を言わないことを約束してください」
「はい、竹林、2度としない。2度としないよ」
「これからは、自分の始めたこと、言ったことに責任をとりなさい」
「うん、ちゃんと責任をとるよ」
大粒の涙を流しながら、灰色の猫を抱きしめる富子。
スウウウウウウウ
暗黒の闇が消えていく。
7色の光が燦々と降り注いでいく。
倒れていた人たちは、次々と目を覚まし起き上がる。
「あああ、助かった、でもあなたたちって大天使と大魔王だったの?」良子は灰色の猫に向かって確認した。
「良子、そうよ、なんか文句ある?」と玲子
「大魔王で悪かったな」と章。
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「とある街の中を一匹の灰色の猫がのんびりと散歩しておりました。
世の中の魔力のすべて統御できる力をもち、その小さな身体の中に、大天使と大魔王を宿しています。
美しい毛並みと柔らかな身体の曲線とその優美な表情に、誰もが思わず見返してしまうほどのこの美猫は、誰でしょうか?
そう」
「俺にゃ」
「はあ?何言ってんの?私でしょ?」
(完結)
もしかして、後日談とか書くかもしれませんが、これでこのお話は一応「おしまい」です。
コロナ禍の中での暇つぶしとして、何の計画もなくだらだらと書いていた、こんな駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
なんとか、あちこちの辻褄を合わせて(合っていない箇所多々ですが)完結させましたが、正直、最初から書き直したい気持ちで山々です。
よろしければ、感想など頂ければ幸いです。
2021.08.15追記
学園編からの50年後の日本を舞台とした「破壊神復活編」を追加しました。
当初は外伝にしようかと思っていましたが、事の他、大きくなったため。
玲子と章の「野暮用」の内容になります。
引継ぎ、お読み頂ければ幸いです。




