表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/71

【学園編】⑦ シルフィード 

「こんな大きなお風呂に入るの久しぶりだよ」

「土御門さん、あの・・」

「菫ちゃん、もっとこっちに来なよ」

「あ、はい、でも、あの・・」

「背中洗ってあげるよ」

「土御門さん、ですから、その・・」

「何?」

「怖くないんですか?私の身体みて」


・・・細くて長い手足


・・・形のよい胸の膨らみ


・・・まったく贅肉のない身体


・・・それでいて艶めかしく女性らしい身体のライン


・・・一糸纏わぬ姿の類まれなる美少女の姿。そしてその白い肌はしみひとつなく純白で・・・




ではなかった!




彼女の背中、胸、腹部、腕、腿には、痛々しい幾筋もの刀傷が残っていた


まるで歴戦の勇者のような


「傷のこと?」富子は不思議そうな顔で菫の顔を覗き込む。

・・はい・・・

小さく頷く菫。

「うん、初めてみた人は、正直、驚くかもしれないけど、前にここで、着せ替えごっこした時に知ったから、今は別にって感じだよ」

「土御門さん、私に気をつかって頂かなくても」

「ごめんっ、菫」

そういって突然、富子は菫に抱き着き、強く抱きしめた。

「別にって言ったけど。嘘ついた。ありがとうって気持ちだよ。変な意味でなくて」

「ありがとう?」

「うん、何でかわからないけど、今、突然、菫ちゃんに対してありがとうって気持ちで一杯になったんだ」

「そ、そうですか、ありがとう?」

そのやりとりを聞いてた黒猫は表情を強張せる。

「あ、セイメイ、なんか怖い顔だよ」

「お前が、気持ちわるいこと言ってるからニャ」

「それっ」

富子は手桶に入れたお湯をセイメイに向けてかける。


「あちっ、この馬鹿、また動物虐待しやがって!」

その姿を見て、菫も表情を和らげる。そして尋ねる。

「土御門さんは、私の傷の原因をお聞きにならないのですか?」

「菫ちゃんは聞いて欲しいの?」

「いえ、もしお聞きになられても、私も覚えていないので・・」

「思い出したいの?」

「わかりません、でもなんというか、とても大切なことを忘れているような気がするのです」

「そうなの?」

「だから、そのせいで、その時に失ったもので、今の私には何もないのです。人して本来もつべきものが」

「そんなことないよって言って欲しいわけじゃないよね」

そういった富子は思う。

これはまったく自分には、『らしくない』物言いだ。

失言だ。

むしろまいんが、いいそうな失礼な言葉だ。

しかし富子には、なんとなくわかる。

菫が、単なるなぐさめの言葉を欲しっているのではないということが。

「はい。だから、私は、その結果がどうあれ、過去を知って、それとしっかりと向き合いたいのです」

菫は、自分に言い聞かせるように言う。

「そっか、思い出すとことによって辛くなる過去を知って生きるのと、その過去を知りたいと思って知ることができないまま死んでいくのは、どっちが辛いんだろうね」

富子のその言葉は、特に自分に向けられたものではなく、独り言のように思えたので、菫は口をつぐんだままであった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい、超絶美少女とお風呂を一緒にしてどうだったか?」

良子は、割り当てられた寝室で、拉致してきた黒猫に話かける。

「うんにゃ、眼福だったぞ」

「それはよかったな、どうだった?」

「胸も結構あるし、プロポーションも抜群で最高だっったわ、いいものを見せて貰ったわ」

「おい、猫、とぼけるのもいい加減にしろよ、傷跡は?あの子の傷跡は?」

「ああ、傷跡?はいはい、それは成長してたよ」

「成長?」

「あの時に比べて、大きく、深く成長していた」

「あの子の自分で気づかない贖罪意識がそれをなしているってことなのか?」

「さあな、いや、そうではなくて、あの子に取り憑いたものが、あの子の闇を利用した結果かもしれんニャ」

「かもなって、お前、そいつの正体は大体は分かっているんだろ」

「なんとなく、想像はついてるニャ。あいにく眠った状態だと思うニャ」

「だから?」

「何か、あの子の精神が、大きな変調をきたさない限り、目覚めて暴走するなんてことはないだろう」

「それじゃ・・」

「そうだニャ、封印されたあの子の記憶を下手に呼び起こしていたら、藪蛇になるとこだったわ、この未熟者が」

「だからお前にも、ここに来てもらったんだよ。で、ちょっとお願いがあるんだが」

「いやニャ」

「まだ、何も言っていないんだけれど」

「おまえのお願いなんでろくなもんじゃない」

「封印が弱まってきているのは確認してんだろ、その証拠があの子の傷跡の成長だってことお前だって分かって・・」

「それは、そうだが・・・」

「いつかわからん将来に、突然、あの子の心は壊れて、破れて、決壊して、暴走するような可能性を考えれば」

「いまのうちに、こちらで制御できるうちに始末したほうが得策ということか・・・」

「だから、一瞬でいいんだ。一瞬、あの子に取り憑いたものの目の覚ましてやって、こっちに注意を向けて欲しい」

「で?」

「これで仕留める」

そういうと、良子は銀色の銃弾を取り出した。

「エールリヒの魔弾か。ここでそれを使っちゃうのか?」

「ああ、怨霊だけを殺す弾丸。あの人の遺作」

「遺作って、まだあいつは・・・」


トントン


突然のノックの音に二人は会話を止める。


「あたしだよ、セイメイいるよね」

「土御門か、入っていいぞ。何かあったのか?」良子は入室を促す。

ドアを開けて富子が入ってきた。

「菫ちゃんが、すごく苦しそうなんだ、それで、セイメイになんとかして貰おうと思って」

「俺は、医者じゃないニャ」

「うん、病気というよりは、なにかに、うなされているような感じなんだよ」

「わかったニャ。ちょっとその前にお前の顔をよく見せるニャ」

「うん」

そういって富子は、セイメイを抱きかかえ、自分の顔を近づけた。

「お、お願い・・・セイメイ・・・」


バタッ


そういうと富子はその場に倒れこんだ。

良子は、富子の身体を抱きかかえて、自分のベッドの上に寝かせる。

そして黒猫のほうを向く。

「感謝する、お前がやる気になってくれて。でも、お前の術は、私らには通用しなかったんじゃないのか?」

「薬を使ったんだよ」

「えげつない」

「人の事言えた義理かよ。あっちの2人はお前に任すから。俺は先に行ってる」

「わかった」

黒猫は、菫の眠っている寝室へ、良子は、麻衣と桜の寝室へと向かう。

菫の寝室に入ったセイメイは、苦しいそうにうなされいる菫の顔の近くで横になり目を瞑る。

そして寝ている菫の心の世界の中に忍び込む。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒猫は、深い森の入口にいる。


「・・・枯れてるニャ・・・」


森の木々はすべて立ち枯れている。


カサカサカサカサ


冷たい風に吹かれて乾いた音をたてる枯れた木々の葉。


「秋山に 落つる黄葉ば しましくは な散り乱れそ 妹があたち見む」


黒猫は古い歌を口にした。


・・・まったく風情のない紅葉狩りニャ・・・


地面に落ちた赤い枯れ葉を踏みながら、黒猫は森の奥へと進んでいく。


少し進むとその先に少し開けた場所があることに気づいた。

そして小さな人影も見える。

人影は、微動たりともしない。


・・・死んでいるのか?眠っているのか?・・・


黒猫はその人影に近づいてく。

見覚えのある姿だ。

というか、今さっきまで見ていたものだ。

薄く透けるような青白いドレスに身を包んだ金髪碧眼の美しい少女。

彼女は片膝をついた姿勢で目を閉じている。

彼女の身体には枯れたツタが絡まっている。


「・・・シルフィードか・・・もともとはこの子の守護精霊。四大精霊の末裔も落ちぶれたもんだニャ・・・」


黒猫は考え込んだ。


・・しかし、何故、こいつがここいる?すでに永園から切り離したんじゃなかったのか?・・・


・・あるいは、古巣が恋しくて、こいつがもとに住処に戻ってきただけの話か・・・


・・そしてこの子の抱える闇に捕らわれたか・・・


「まあ、どっちでのいいニャ、こんなざまでは、もはやお前がお前でいる意味もない、飛べないシルフはなんとやらニャ」


「すぐに焼き払ってお前を楽にしてやるニャ、ちょうど都合よく広橋、いや日野もおるし」


・・しかし、それ、ちょっと都合よすぎて、ご都合主義すぎてなんだか気持ち悪い気もするが・・・


そう思いつつも、黒猫は良子に念話を送る。

「おい、すけべ女。これからこいつを叩き起こす、そのためにちょっと何か燃やすものを想像してくれないか」

「セイメイ、あいよ。こっちは準備OKだ。で、これでよいか?」

黒猫は、良子から送られてきたイメージを具現化する、いや夢の中なので具象化をいうべきか。


「ち、また無粋なものを」


黒猫の目の前にテルミット焼夷手榴弾の束が現れる。


ボウッ


シルフィードのいる場所に大きな火柱があがる。


燃え盛る炎の中でその少女はかっと目を剥いて睨む。


「さて、撤収にゃ、あちっ」


黒猫を慌ててその場を離れる。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒猫を目を覚ました。


トンプソン・コンテンダーを構えた良子が、菫と対峙していた。


菫は虚ろなながらも狂気に満ちた目で良子を睨んでいる。


「ニャは。シルちゃんは、寝起き悪くて不機嫌そうだニャ」

「ああ、そうだね。で、シルちゃんって誰よ」

「早く始末しろよ、すけべ女」

「あー、わかった、じゃあシルちゃん、痛かったらごめん」


ドーン


良子は、引き金の弾いた。

光の銃弾は菫の額を貫き、反動で菫の身体は壁に叩きつけられる。


「あ、パワハラ教師だ、生徒虐待の現場ニャ。児相に連絡しないと」

「やめて、あたしまじで首になるわ」

そういって、倒れた菫を抱き起しベッドの上に寝かせて、布団をかけてやる良子。

「これで一応、一件落着ね。これで菫の記憶が戻っても大丈夫か」

「まあ、そうなればいいがな」


眠っている菫の顔を眺めつつも黒猫は少し怪訝な表情であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ