【学園編】⑤★ DJ猫助参上
「演劇部に入ろうよ、菫ちゃん」
「菫は、生徒会に来いよ。」
「生徒会役員は、強制的に演劇部に加入させられるからニャ。どっちでも同じことだニャ。」
富子の部屋で、菫がこれから参加する部活について相談にのる富子と麻衣とセイメイ。
「一度、見学にさせて頂けませんでしょうか?他のメンバーの方ともお話させて頂きたいし」
「他のメンバーっていったって、もう3年生が抜けたから、あとはあのチビしかいないし」
「じゃあ、部長をここに呼ぼう!」
そういって富子は電話をかける。
ピンポーン
暫くしてインターフォンがなった。
「あ、来た!」
富子は玄関のロックを開けて、インターフォンに向かって話す。
「開けたよ!中に入って」
「トミーお姉ーちゃん!まいんお姉ーちゃん!セイメイ!」
小柄な少女が、富子に飛びついてきた。
陶器のように透けた白い肌に輝くような銀髪。
瞳の色は、ルビーのような赤と金色のヘテロクロミアである。
そして大きなうさ耳リボンに首にヘッドフォンをかけている。
六分寺桜。
富子たちの同級生で演劇部の部長、生徒会役員の一人である。
ちなみに学業の成績は学年で№3。
「桜ちゃん、早かったね。」
「トミーお姉ーちゃん、うん、飛んできたよ、新入部員の話聞いたら、矢も盾もたまらず飛んできたよ、心に羽をはやしてきたよ。で、あなたが菫ちゃん?」
「はい、永園菫と申します。でも私はまだ演劇部に入部するかどうかは・・・」
「えっ?菫お姉ちゃん、演劇部に入ってくれないの?ジャスコいかないの?」
桜は目を潤ませて、菫をみつめる。
「いや、六分寺さん、私、入らないとは言っておりませんが、その、まだ、」
「おい、菫、気をつけろ。こいつの妹属性攻撃は手ごわいぞ。あとそもそもジャスコ関係ないだろ、つーかジャスコとかないし。でもさ、チビ助、確かもうすぐライブ配信だろ」麻衣がくぎを刺す。
「うん、やるよ、ここで。トミーお姉ーちゃんに呼び出されたから仕方なくここでやるよ。
Bフレッツマンションタイプというありえない貧弱庶民回線でも、わたし頑張ってやるよ。」
「おい、桜、もう特別ゲスト、『DJ猫助』とか書いてあるニャ!」セイメイがタブレットの画面を見ながらぼやく
「うん、セイメイにもちょっと頼むよ、あとみんなスパチャよろしく」
そういって桜は鞄からDJコントローラーと小型のスピーカーを取り出した。
「あれ、桜、いつものMac BOOK PROは?」
「最近は、スマホアプリだよ。もうスタバからの配信とかしないし。ださいし」
「スタバで、Mac BOOK PROひらいて、『世界をびっくりさせる次のPLANをdesignちうなう』とかいうtweetはもうしないんだ」
「やめて、まいんお姉えちゃん、私の黒歴史。あ、開始時刻だ!」
そういってvtuberの中の人である六分寺桜は、DJライブ配信を開始する。
3DCGのアバターは、銀髪ヘテロクロミアの美少女。
あ、見る人が見ればわかっちゃうのであるが。
「じゃあ、一文字女学院デジタル演劇部の打ち合わせを始めます。議題は新歓公演の脚本についてです。」DJコントローラーを操作しながらも、桜が議題を提示する。
「脚本?いつも通りあんたの例の謎のフレが作ってくるんじゃないの?」
「まいんお姉ちゃん、それが、なんかまだ来ないんだよ。。」
「さすがに、あいつも、考え直したか・・・」セイメイは独白する。
「じゃあ、私たちでなんか考えるか? ってちょっと菫、『永園菫』ってその実名でのコメやめなさいよ!」
「今井さん、すいません、こういうの慣れてなくて」
「ねえ、4人でバンドを組むってお話どうかな?」
「つっちー、それで?」
「毎日、お茶するの」
「盛り上がらねー、それどこが面白いのよ。あー、この『すみれ』ってのが菫なのね?」
「はい」うなづく菫。
「じゃあさ、女子高生たちが、劇をやって、それを通じてお互いの関係をみつめ直すってのどうかな?」
「劇の中で劇をやる?ちょっと面白いけど、難易度が高そうだわ、ちょっと菫!いきなりスパチャで5万とかやめろ!みんなひくぞ!」
「す、すいません、私、慣れてなくて」ひたすら謝る菫。
「私は・・」
桜がおもむろに口を開く。
みんなが、桜に注目する。
「おしっこに行きたい。トイレ貸して、トミーお姉ちゃん。あと、セイメイ、その間よろしく」
「おい!俺はこのスマホアプリ使ったことないぞ、ちっ、仕方ないニャー」
そういってセイメイはDJコントローラーの前にちょこんと座った。
「つーか、桜、もうすでにドタり始めてるし。。」セイメイは愚痴る。
アバターが黒猫に変わる。
DJ猫助キターーーーーー
視聴者は一気に盛り上がる!
セイメイは、桜の残したドタリを修正して華麗なコントローラー捌きで曲をつなげる
ほおおおおおおお!
富子たちは関心する。
「ねえ、セイメイはヘッドフォンできないじゃん。だから次の曲を聴けないのに、なんでドンピシャでつなげられるんだ?」スマホで動画をとりながら、麻衣が尋ねる。
「聞いてないわけではないニャ、人間に聞えない音域までピッチ上げて聞いているニャ、猫の可聴範囲を舐めるニャ」
「そうなんだ、さすがはセイメイ。つーか、猫」感心する富子。
「おい、そもそも桜の耳だって普通の人間の可聴範囲を超えているニャ」
「ごめん、桜はそうだったね、それで雑音を消すためにいつもヘッドフォンしてるんだっけ、忘れてた」少し反省する麻衣。
トイレから桜が戻り、セイメイとDJを交替する。
「ところで、菫お姉ーちゃんは演劇部に入ったら何をしたい?」
「六分寺さん、私、人見知りなんで、それを直したくて」
「おい、菫。それ直さんでいいやつ、美少女の人見知りとか利点しかないだろ」と麻衣。
「あと、引っ込み思案で、自分から人に話しかけれないのも、」
「それも直さんでいい」断言する麻衣。
「へえ、ところで、菫お姉ーちゃんは、好きな人いるの?」
「おい、ちびすけ、それ演劇部に関係ないだろ」
「す、好きな人ですか?それは、土御門さんと、今井さんが、、」少し顔を赤らめる菫。
「そうじゃなくて、異性だよ、好きな異性のタイプは?」桜は聞き直す。
「い、異性ですか?あ、あの、その、茶目っ気があって、ちょっと毒舌なんですけど、色んなことが出来て、わざと嫌がる素振りしながらも、ちゃんと他人を助けてあげるような、ほんとはとても優しい方とか、、」さらに顔を赤らめる菫。
「だってさ」セイメイのほうを向いてそういう麻衣。
「しらんニャ」そっぽをむくセイメイ。
「あっ」突然、桜が声を上げる。
「ちょっとセイメイ、また替わって。もうチルっといていいよ」
再び、セイメイがDJコントローラーの前に座る。
「桜、なんかあった?」
「うん、フレから脚本きた、今、読んでる。」
「チッ」舌打ちするセイメイ。
送られていた脚本に目を通す桜。
「ねえ、桜ちゃん、どんな話なの」
「ちょっと悲しい話だよ」そういって桜は概要を説明する。
それは、一人の少女と一体の召使ロボットの話。
少女の母親は、新しい愛人との愛に溺れ、じゃまになった少女を殺そうとする。
召使ロボットには、自分の与えられた「その少女を守ることと」という使命と、「人間に危害を加えていけない」というロボットの行動原則のどちらに従うかを悩み、結局、少女を守るために、少女の母を殺してしまう。
ロボットの行動原則を破ったそのロボットは、その代償として人としての感情を与えられると同時に、人間の言葉がわからなくなり、会話ができなくなるという罰を受ける。
涙を流しながら、自分に言葉をかける少女の言葉は、当然、わからない。
召使ロボットは、自分の中に沸き上がる少女への愛情と少女の母親の殺した罪の意識に苦しむ。
「こんな内容だよ、どうかな」
「暗っ、でもデジタル演劇部としてはいいテーマじゃない」否定しない麻衣。
「私もいいと思うよ。ちょっと悲しい話だけど」賛成する富子。
「菫お姉ちゃんは?」
「えっ?私ですか?」
「そうだよ、もう部員だし」
「はい、いいと思います。この劇を通じて、私も何か変われるような気がします。なんとなくなんですが」
「じゃあ、これで決定ね」
「俺の意見は無視か。俺は絶対反対。」セイメイが珍しく意見を言う。
「はい、ありがとう、賛成4反対1で可決しました。じゃあ配役を決めるわ。その少女がトミーお姉ちゃん」
「やった、主人公だ」
「少女の母が、まいんお姉ちゃん」
「くそ、悪役かよ」
「悪役かどうかはわからないわ、そんでその愛人が私」
「私が、ロボットということですね。着ぐるみみたいのを着るのでしょうか?」と菫
「菫お姉ちゃん、着ぐるみとか着ないよ。うちらデジタル演劇部だから、3Dキャラをリアルタイムモーションキャプチャーで動かすんだよ」
「また、大型gateboxか透過型液晶使うの?」麻衣が質問する。
「使わないよ、だってキモオタ映り込むし。」
「うちの学内のイベだから別にキモオタいないじゃん」
「JKの顔が映り込むとかもっとダメだよ、まいんお姉ちゃん。だから今度は、ARアプリ使う。」
「ARアプリっか、しょっぼ、でもどうせ大金はたいて、舞台セットは作るんでしょ」と麻衣。
「うん、ARだし。それにおじいちゃんの会社の関連会社の江野村工藝社に仕事作んなきゃいけないんで」
おじいちゃんの会社というのは、日本最大の財閥である六分寺グループ。
そして一文字女学院もその財閥グループの配下にある。
「うわ、子会社への利益供与ニャ」
「じゃあ、明日から練習したいけど、場所どうしよ?一応、防音設備があるところがいいんだけど」
「桜の屋敷でいいじゃん」
「ダメだよ、うちの家、検門で猫とか入れない」
「えっ、俺も行くの?」セイメイは驚く。
「当たり前だよ、セイメイにも役作るから」と桜。
「あ、あの、そのうちでよければ、音楽練習室がありますんで」と手を上げる菫。
「やった、じゃあ、明日から菫ちゃんちで合宿だ」
なぜか急遽、合宿を行う行うことになった4人と一匹。




