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【学園編】④ トライアングルデート

「じゃあ、私、セイメイを迎えに夕方来るね」


セイメイを連れてきた土御門富子を、広橋良子はマンションの玄関に迎える。

良子は大きな襟で胸元が大きく開いた薄ピンクのスカートスーツ姿である。

いやらしい。


・・・あ~あ~・・・

そして、深いため息をつきながらキャリーバックから、のそのそと出てくる黒猫。


今井麻衣と永園菫も一緒である。

富子、麻衣、菫は、3人とも一文字の制服姿。

オーソドックスなセーラー服の上に6ボタンのコートを羽織っている。

「三人は、これから遊びにでも行くのか」と良子は尋ねる。

「うん、デートだよ。3人で」富子は答える。

「しかし3人で制服デートとは、青春だねえ。それと今井、お前いつもよりスカート丈10センチ長くないか?」

「広橋なんで、そんな細かいことまでチェックしてんのよ?」

「担任として当然の義務だろ、生徒全員とスリーサイズとスカート丈を覚えておくのは」

「そんな義務とかねーよ、広橋。生徒全員のスリーサイズ知ってる教師とかまじ怖っ

、つーか、どうせ広橋出まかせでしょ」

「今井、なんならここでお前のスリーサイズ言ってやろうか」

「えーとニャ、バスト七十~」

「てめぇ、糞猫は黙ってろ!」

「じゃあ、3人とも気を付けてね」

そういって、良子はマンションの扉を閉める。


ガチャッ、カチャカチャ


「おい、エロ女!何故、チェーンまでかける!?」

「可愛い子猫ちゃんが逃げないようにするためにな」

「うわっ、拉致にゃ、必ずトリモロスにゃ!」

「まあ、そういうなや、ちょっと準備してくる」

そういって良子は、寝室に向かう。


「おまたせ」

「おい!お前!」

「なんだよ。セイメイ」

「つーか、その恰好なに?なんでスカート履いてないの?なんでノーブラとパンティに男物のシャツという童貞妄想浪漫装備なの?青年コミックス誌にある事後の朝スタイルなの?」

「どうだ、セイメイ、ぐっとくるだろ?」

「全然来ません、むしろ性的嫌がらせです、動物虐待です、5年未満の懲役または・・・」

「ぶっちゃけ、いつも堅苦しい教師を演じるのは疲れるんだよ、セイメイ、お前の前では、本当の私を見て欲しい」

「はあ?それ口説いているんですか?字面なんかいいこと言ってるようですが、単にずぼらなだけです。すいません、ちょっと心揺れましたが、よく考えるとありえません、ごめんなさい」

「セイメイ、つーか、お前、昔から堅物だし、まあいいや、で、これが今日お願いしたいこと」

そういって、良子は、セイメイの前にテストの束と作成中のプレゼン資料をおく。

「今回の試験で補習となった生徒のテストの採点と今期の報告書のレビュー、それと・・・」

「それと何だよ」

「演劇の脚本、演劇部の今度の公演のために書き下ろしたんだ。素直にお前の意見が欲しいのだけでど。」

そういって、良子がセイメイの前にタブレットを置く。

タブレット画面を見つめるセイメイ。


そして


「おい!お前、これ!こんなもん!」


セイメイは珍しく語気を荒げる。

「セイメイ、そうだね、でも、もうそういう時期だと思う」

「それはそうではあるが。。。」

良子は話題を変える。

「ねぇ、セイメイって昔はすごい陰陽師だったんでしょう?」

「今さら、知れたことニャ」

「ねぇ。じゃあ、記憶操作ともできるの?」

「知らんにゃ!、そんなこと、陰陽師の範疇外にゃ。むしろ魔導士の仕事ニャ」

「ねぇ。記憶の操作された人は永久にそのままなのかな?」

「はあ、だから、俺は知らんけど、まったく知らんけど。それ何の話したいのが全く想像つかんが、記憶に関係する強い衝撃的な事実とかを知ることで、操作される前の記憶を呼び戻すことがあるらしいニャ。知らんけど」

「そっか。ごめん、じゃあ、そろそろ仕事始めますか」

その言葉を最後に良子とセイメイは、お互い無言となり、それぞれの作業を開始する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

時は、今朝、3人が良子のマンションに訪れる前に遡る。

3人と黒猫は、菫が一人暮らししている高級マンションにいた。



昨日のこと、麻衣と富子は、菫から相談を受けていたのだ。

「あの、その、明日は、どのような服装で行けば、よろしいでしょうか?」

「菫、普段、休日に外出する時に着ている服でいいよ。」と麻衣。

「わたしは、あんまり外出しませんし、する時は学校の制服なのですが・・」

「じゃあ、明日の朝、菫の家によってから行こう。どうせ、良子姉ぇのとこ、行く途中だし

菫ちゃんのコーディネートをしよう。まいんもいいよね」

「つっちー、ああ、わかったよ、私の女子力高めのコーディネート能力を見せてやるよ」



「うわ!これもすごく可愛いよ、まるで中世のお姫様だよ」

黒のゴシック風ドレスに身を包んだ菫はまるでパリコレのファッションモデルのようであった。

「ありがとうございます。土御門さん」

「ああ、こっちも可愛い。私も着てみたいな。これどこのブランド?」

「どうぞ、ブランドって何かよくわかりませんけど」

「おい!馬鹿富子。むやみに触るニャ!それオートクチュールだぞ、多分200万以上するニャ」

「まじか、じゃあ、ご飯とかこぼせないね」

「菫は、こんな高級仕立服じゃなくて既製服とかもってないの」と麻衣が尋ねる

「プレタポルテとかは、あんまりないのです。これとか・・」そう言って、クローゼットからドレスを取り出す菫。

「うわっ!シャネルだ!実物みたの初めてだ!それにプレタポルテとかリアルで言う人とかいるんだ、ちょっとひく」と麻衣。

「ねぇ、プレタポテトって何?」

「ポテトじゃないが。高級な既製服とだけ覚えとけ。しかしお前ら、菫さんで人形ごっこするのはもうやめろニャ。」

「だけど、困ったわね、確かに気軽に遊びに行ける時に着れる服はなさそうね」と麻衣も考え込む。

「やはり、私は、学校の制服にしときますね。」菫はそう言って、別のクローゼットの扉を開く。一文字の制服がずらりと並んでいる。

「私たち2人が私服で菫ちゃんだけが制服かあ」富子は少し残念そうな顔をする。

「ご迷惑でしょうか?」菫も少し寂しそう。

「じゃあ、菫さんの制服借りて、3人で制服デートにしろニャ」

「いいの?菫さんの制服着ていいの?」なぜか目を輝かせる富子。

「私は、構いませんが。」

「私もそれでいいけど、サイズがね」と麻衣。

「菫さんは、中学から一文字だろ。貧乳のツンデレは中学の時の制服でも借りろニャ」

「くそ猫!また貧乳って言った!まあでもそれでいいか?いい菫?」

「はい、ありがとうございます。なんか私に合わせてもらったみたいで・・」そう言って、また涙ぐむ菫であった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

良子のマンションを出た3人は、まずはアパレルショップに向かう。

菫の普段着を用立てる目的もある。

またまた着せ替え人形ごっこに興じる富子と麻衣であったが、結局、胸元に大き目のリボンがついた白いブラウスとラップデザインの青いプリーツスカートをコーディネートした。


「どうでしょうか?」

試着室のカーテンを開ける菫。

やはり清楚な美少女には、ウェストを絞ったきれい目コーディがよく似合う。

「菫ちゃん、かわいいい!、回ってー!」

「つっちー、何それ女性声優さんのコンサートかよ?お水美味しい?かよ」


くるっ


菫は華麗にターンを決める。

スカートが軽やかに膨らみ、フッといい香りが漂う。

「お、尊いね、菫。でもちょっとリボンが結びが、私が直してあげる。」そういって菫に近づく麻衣。


あっ!


試着室の段差に足を躓かせて、菫に向かって倒れこむ麻衣!


・・うわっ、この子、やっぱきれい・・


鼻と鼻がくっつきそうなくらいなお互いの顔の距離!


麻衣は、思わず菫のその可愛らしい唇に自分の唇をあててしまいたいという衝動に駆られる。


・・いかん、いかん・・・


しかし、なぜか菫はゆっくりと瞼を落とす。


・・お、おい!・・・


「ごめん、菫、おどろかせちゃって」

そう言って、顔を離す麻衣。

「こちらこそ、なんか勘違いしちゃって身構えてしまって」

「お前、どんな勘違いだよ、まったく」そう言いながら、リボンの結びを直す麻衣。

自分の顔も火照っているのがわかる。


「はい、可愛い。」そういって写真をとる富子と麻衣。

そして試着室のカーテンを閉め、制服姿に戻った菫。


「じゃあ、私、支払いしていきますね。」

そういって国際カードブランドのマークの入った黒いカードを取り出す。

「えっ?菫ちゃん、クレジットカード持ってるの?その黒いの知ってるよ。戦車とか買えるやつでしょ?」驚く富子。

「流石に、いくら菫でもセンチュリオンはねえだろ、高校生だし。」

「土御門さん、今井さん、これただのプリペイドです。」

「なんだ、キャッシュパスポートのプラチナか。でも国内でそれを使う人とか、ちょっとひく」

「すいません」謝る菫。

「ねぇ、まいん、菫ちゃん、お腹がすいたから、そろそろご飯にしましょう」と食事の提案をする富子。


昔ながらの静かな洋食店に入る3人。


「あたし、ナポリタン!」

「つっちー、お前、野菜とかあんまり好きじゃないだろ」

「まいん、うん、でもナポリタンがいいんだよ。」

「ああ、それ、お前の思い出の味だったな、菫は?」

「では、私も同じものにします。」

「合わせなくてもいいんだよ。じゃあ私は有機豆乳のチキンむね肉のドリアにしようかな」

「まいん、それほんとに胸大きくするのに役立つの?」

「うっせー、つっちー、あほ猫みたいなこと言うな!豆乳が好きなだけだよ」


「お飲み物をいかがなされますか?」ウェイトレスが尋ねる。

「私、オレンジジュース」と富子

「私は、ミルクティーにします」と菫。

「つっちーは、オレンジ色縛りか?菫はほんとイメージ通りだね、じゃあ私は」

「豆乳ラテでしょ、まいんは」

「うっせー、決めつけんな!そうだけど・・」


料理が運ばれてくる。

スパゲッティを少しづつ皿の端で時計周りにきれいに巻き取り、口に運ぶ菫。

まったく音もたてず、優雅である。


富子は反対にスパゲッティにフォークを突き刺してぐるぐると、口に入らないくらいに大きく巻き取りおもむろに口に運ぶ。口の周りが、ケチャップでべちゃべちゃ。

「あーん、もう、つっちー、いつも思うけど、その食べ方、絶対、わざとだろ!」

そう言って、紙ナプキンで富子の口を拭いてやる麻衣。

「うん、半分はわざとだよ、でもこれが私にとって一番美味しい・・・食べ方・・、だって・・・」言葉を詰まらせる富子。

「おい、つっちー泣くなよ、死ぬほど旨かったか。よかったね」

「土御門さん?、今井さん?」

「ほら、菫も引いてんじゃん。あ、一応、解説しとくと、ナポリタンはつっちーの母親の思い出なんですよ。

小さい時にケチャップで汚れた口を母親が拭ってくれたその思い出を反芻するためのつっちーのいつもの食べ方なんです」

「そうなのですか」

菫は、納得したらしい。

「では、わたしも」

そういって、菫はフォークをスパゲッティに刺して、盛大に巻き取り、おもむろ口に運ぶ。

菫の口の周りにケチャップがべたべたとつく。

「うわっ、菫ちゃん、子供みたいだよ!」泣き笑いの富子。

優しい表情で、富子に顔を近づける菫。

「うん、じゃあ、私が拭いてあげるね。」

そういって紙ナプキンで菫の口の周りを拭いてあげる富子。

「土御門さん、ありがとうございます。」

「うわっ、つっちー、その役、わたしに替われよ。つーか菫、魔性すぎる、天然で魔性とか一番やっかいだわ、ひく」軽く嫉妬する麻衣。


食事の後の少し長めのお茶タイム。

そのあとに、雑貨屋、アクセサリー店を回り、ステーショナリーショップに入る。


「ねぇ、3人で交換日記しない!」と突然、富子が言い出す。

「つっちー、えー手書きで?LINEでもいいじゃん」と麻衣はめんどくさそうだ。

「是非、やりたいですが、あと可能であれば、、」と菫。

「何、菫ちゃん?」富子は尋ねる。

「可能であれば、ご迷惑でなければ、セイメイさんとも交換日記ができれば。」

「菫ちゃん、それナイスアイディアだよ、やろう3人と1匹で」喜色満面の富子。

「あいつ、嫌がりそう。でもいいか、あいつへの嫌がらせになるなら」麻衣には、セイメイの嫌がる顔を目に浮かぶ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕方になり、良子のマンションを訪れ、黒猫を引き取る富子たち。


「お待たせ、良子姉ぇ、セイメイ!」

「あ~疲れたニャ、ほぼほぼ、拉致で拘束ニャ」

げんなりした様子のセイメイ。

「いっぱい、可愛がってやったぞ。それと永園。言い忘れていたが」

「なんでしょうか?広橋先生」

「特進では、免除された部活だが、普通科では必須だから4月からどっかの部に入らないといけないぞ。考えておけ」

「はい、わかりました。」


そして菫の家の行き、そこで解散して富子は自宅に戻る。


「ねぇ、セイメイ、こんど私たち3人とセイメイで交換日記したいんだけど」

「交換日記?あ、別にいいんじゃね」

「あれ、もっと嫌がると思っていたんだけど」

「なんでも嫌がるわけじゃないニャ。昔は御堂関白という馬鹿と交換日記もしてたニャ」


・・・いつも通り、嫌がると思っていたのに不思議だな・・・


・・・それに今日のデートの話もきちんと聞いていたし・・・


なんとなく違和感を感じた富子であった。


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