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【学園編】③★落ちてきた黒猫

俺は、真っ逆さまに地上に向けて落ちていく




・・・これは、死ぬな、間違いなく・・・


・・・次は通りすがりイケメンに憑依して、あらたなラブコメ展開か・・・


・・・ないわな。多分、即死にゃ・・・


・・・ブラを咥えて死んでる猫とか洒落にならんにゃ・・・


・・・また魂をかき集めるのか、何百年かけて・・・


・・・もう、そんな気力はないわ・・・


・・・ああ、ごちゃうざの最終回見たかったな・・・


・・・ごめんニャ。富子、お前罰金500万だな・・・



トンッ


あれ???


俺の目の前に少女の顔があった。


金髪碧眼の美少女が俺を見つめている。


もしかして、俺は、ぎりぎり命をつないでいるのか?


そしてこいつに乗り移れるのか?


でも、ちょっと感覚が違うな


俺は何回も肉体的には死んでるから、死の感覚はわかるのだが、いつもの瀕死の状態とか程遠い。

というか、普段の俺だ。


「猫さん、大丈夫ですか?」

その少女はそういった。


「はい、おかげ様で助かりました、ありがとうございます。」

俺はどうやら、この少女に抱きとめられて命拾いしたらしい。


「どういたしまして」

少女はほほ笑んだ。


「猫さん、ダメですよ。いたずらしちゃ」

少女は、ツンデレのブラを地面から拾い、汚れを払う。


「すいません、つい出来心で」


・・・しまった!・・・


不覚にも言葉でしゃべっていた。


「にゃにゃにゃにゃにゃ」


今さら、遅いかもしれんが、俺は普通の猫のふりをする。


「あっ」

少女は、ようやく何かに気づいたらしい。

そして沈鬱な表情になり下を向く。



「セイメイ!!」


半べそをかいた俺の飼い主の声だ


「セイメイ!ほんとよかった!ほんとよかったよ!」

その少女から俺を抱きとる富子。


「あ、もしかして永園さんが、助けてくれたの?ありがとう!本当にありがとう!」


・・こいつが、あの永園菫か、確かに美形ではあるな・・・


富子の横にいたツンデレ女も少し涙ぐんでいる。


・・ちょっとふざけすぎたな・・・


永園菫は、俺の戦利品をたたんで、ツンデレに手渡す。


「あの、これ、今井さんのですか?」

「ありがとう、永園。って迷うことなく私に渡すか!、はいはい、私は、ご覧の通りのちっぱいですよ」

「いや、その、あの・・」

「でも、助かったよ永園。で、なんでこんなとこに居たの?」

「まいん、私が呼んだんだよ。色々お礼もしたいから。でも永園さん、すごく顔色悪いよ」

「だ、大丈夫です」

「とりあえず、うちに上がってよ、永園さん」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「本当にびっくりしました。だってしゃべる猫ちゃんが本当にいるなんて。

私、てっきり自分の症状が悪化したのかと思って、それで・・・」

すっかり顔色もよくなった永園菫。


永園菫は、俺がしゃべったことが精神上の問題による幻聴だと思ったらしい。

その話をききだした富子とツンデレが、俺が本当に言葉をしゃべる猫だということを明かした。


「でも、お前、ほんとにいい加減にしろよ」ツンデレが俺を撫でながら言う。

「悪かったニャ、ふざけすぎたニャ」

「お前、もう富子の家族なんだからね」

「家族、そういうの、俺、よくわかんないんだ。でもごめん」

「わかったよ、セイメイ。お前がニャつけないでしゃべる時って」

「よくしゃべるんだよ。セイメイは、小説の吾輩は猫であるみたいな感じで」

富子が話題を変えてくれて助かる。

「そうなのですか、小説は読まないのですが・・・」

「えっ、永園、あれ読んだことないの?意外だな」

「はい。今井さん、ところで、今日は何のお集まりなのですか?」

「期末試験の赤点回避のお祝いだよ。」

「赤点回避のお祝いですか。ありがとうございます。」

「えっ、永園。なんでお前がお礼言うんだよ?赤点回避はつっちーだよ。お前赤点とか関係ないだろ」

「特進は100点満点で49点がボーダーだからニャ」いちおう俺は補足する。

「セイメイさん、よくご存じですね」

「永園、でも、それでもお前には余裕だろ」ツンデレが不思議な顔をしている。

「誰だって苦手なものはあります」

「永園。ちょっと点数表見せてみろよ」

「今井さん、はい、どうぞ」


100点満点が並んだ点数表。


しかし


国語総合(現代文)  5/ 50

国語総合(古典)  45/ 50

合計        50/100


今井はその点数に驚く。

確かに特進なら赤点すれすれだ。

そして何か思いついたように永園のカバンを指す。

「永園。国語の教科書持ってる?ちょっと見せてみろよ」

「ああ、今井さんにはやはりわかりますか。はい。どうぞ」


彼女の国語の教科書のすべてのページに紙が張り付けられていた。

そして、その紙には、教科書の内容と同じ文字が『横書き』で記されていた。


「永園。失礼なこと聞くけど、お前ディスレクシアなの?」

「はい」

「ねぇ、まいん、そのディスなんとかってなんなの?」

「学習障害の一種だよ。あるパターン、状況での読み書きができない障害だニャ」俺は、簡単に富子に説明する。

「はい、セイメイさんの言う通りです。私は、子供のころから、縦書きの日本語、それも現代文がちゃんと読めないんです。文字を見ていると文字が踊りだすというか、動き出すというか。回りだすとかいうか」

俺は、タブレットを操作する。

そしてあるページを表示して、永園に言う。

「永園さん、このページみてくれませんか?」


手に持ったタブレットの画面を熱心に見る永園。

そして、いつしか大粒の涙をぽろぽろと流していた。

「よ、読めます、縦書きでも。これが、吾輩な猫なんですね、小説、自分で初めて読めました。ありがとうございます・・」

「セイメイ、永園さんに何見せたの?」

「ディスレクシアの人用のマルチメディアライブラリニャ。まだそんなに充実してニャいが」

「ねえ、テストの時とか、どうにかならないの?タブレット持ち込むとか」

「難しいニャ、特に特進じゃな」

俺は、ふとツンデレのほうを見る。

ツンデレはらしくもなく暗い表情だ。



今井麻衣は、自分自身を恥じていた。



・・・永園菫がこんな障害を抱えていたなんて思ってもいなかった・・・


・・・なんでもできるただの美少女だと思っていた・・・


・・・この子の性格からしてずっとこの子は一人で悩んでいたんだ・・・


・・・そんな子を私は利用してきたんだ・・・


・・・自分が社会から疎外されないための道具として・・・


・・・わたし、やっぱ最低だわ・・・



「おい、ツンデレ。お前、永園さんのライバルなら常に監視できたほうがよくね?」

「セイメイ、何を?うん、そうだな。」


今井麻衣は立ち上がった。


「つっちー、菫!お祝いは中断よ!いまから学校に戻るわ!ついてきなさい!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土御門富子、今井麻衣、永園菫は、学校に戻った。

職員室の扉を開き、担任であり国語教師のもとを向かう


挿絵(By みてみん)


「良子姉ぇちゃん!」

「土御門、先生と呼びなさい!」

広橋良子ひろはしりょうこ

一文字の国語教師であり富子たちの担任であり、土御門富子の親戚である。


「広橋!単刀直入に言うわ。永園菫への合理的配慮を要請します!」

「今井、きていきなりそれか。現実的には、特進では無理だよ」

「今井さん、大丈夫です、私、そんな特別扱いされなくても」

「菫!大丈夫じゃないだろ。わかった、じゃあ、広橋!永園菫の普通科への転科を申請します!」

「そうきたかあ、今井」

「前例はあるでしょ!問題ないはずよ」

「あー、わかったよ。新学期からそうできるように手配する。気づいていて何もしなかった私も悪かった。永園菫はそれでいいか?」

「あ、ありがとうございます」菫は涙を溜めている。意外と涙もろい。

「あー、しかしこれで学年TOP3がすべて特進からいなくなるのか?酷い年だ。特進の担当は泣くぞ」

「広橋、恩に着るわ」

「良子姉ぇちゃん!ありがとう。」

「その代わり悪徳教師はちゃんと見返りを要求するぞ。土御門、今度の週末、お前の彼氏を借りるぞ」

「うん、いいよ、良子姉ぇちゃん」


教室をでる3人


「今井さん、土御門さん、本当に今日はありがとうございました」

「礼なんかいらんわ、菫。お前をこれから監視してやるからな。あと、まいんでいいぞ」

「あたしは、つっちーでいいよ、菫ちゃん」

「まいんさん、つっちーさん、本当に本当に・・・」

顔を可愛らしく赤らめながらも、また大粒の涙をぽろぽろと流す菫。


永園菫の新しい日々が始まる。

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