【軌道戦士編】⑯終章 ~ 約束された勝利の剣
その蒸気機関車は宇宙を飛んでいた。
もくもくと煙を吐いて・・
・・・煙w その煙いる? 煙w まじ煙w 煙w 宇宙で煙とかヤバくねw・・・
・・・煙w 煙w 煙wwww 煙とか頭悪そうww 煙w 煙w 煙w けむりwww けw
視聴者からは、めちゃくちゃ弾幕をはられている。
「ねえ、蒸気機関車で宇宙とんだ人間はわたしたちだけだよね。」桜は嬉しそうだ。
「いや、結構いるんじゃね、銀河なんとかとかあるし」と今依。
「桜?煙突に白いヒラヒラみたいな布、あれ、要る?」コメを見ながら良子は言う。
「だって煙突だし、これ蒸気機関車だし、生配信中だし、いま4億6200万人視聴中だし」桜は口を尖らせる。
良子たちの眼前には、ニューフロンティア軍の宇宙衛星「有頂天」が迫ってくる。
「いよいよあそこが我々の最終目的ね」良子はCICのメインスクリーンに映る巨大な人工物を指す。
あそこに目指す敵がいる!
奪い返すべき大切な人がいる!
「有頂天」、それは、まるでハリネズミのように多数のレーザー砲や機銃を備えた鉄壁の要塞である。
そしてそれらはすべて自動制御になっている。
正面からまとも行けば、瞬時に宇宙の藻屑と消えることは確実だ。
・・有頂天のメインコンピューターをハッキングして制御を奪うしかない・・
当然、良子たちはそう考え、今依は、そこへの侵入を試みている。
しかし、さすがの今依でも最終防壁の突破には手こずっている。
すでに32京通りの組み合わせ解析を試していたがダメであった。
・・・「最後の鍵は空」・・・
・・・これが、竹林が空の刻印をもつ私に託したメッセージ・・・
・・・これは、絶対に最終防壁を通るための鍵のはずだ・・・
・・・ヒントは、五大元素、エーテルにまつわる何かか?・・・
そう今依は直感している。
・・私の知る限りのネットワークと知識を総動員して、この最終防壁は絶対に突破してやる!!・・・
・・最高の解析能力をもつシステムは、やはりあそこか?・・
そして、ある場所に回線をつなぐ。
彼女が知る最高の電子計算能力をもつ施設に。
「はい、帝都運行管理統制統合本部の中央路線管理室の保線課の山口です」
「山口少尉!、お前の先輩だった有馬だよ!頼みがあるんだ。」
「せんぱーい!、先輩がいなくなってから大変だったんですよー、そして、私、もう出番もないかとー」
「その話は、後で聞く。いますぐ、第58世代協調分散型自立推論タイプB暗号化復号化相互性論理推論処理ネットワークに入れ。」
「えー、それ実習でしか・・」
そういいつつ山口はその長い名前のシステムにログインする。
「山口、入れたか?。じゃあ、今送ったメモを解析にかけて!付与する条件としては、、、」
「先輩、了解です。で、これ何ですか、最後の鍵は空って?」
「ヴカアアアアアア!!!ヤロウオオオオ!!!ヤマグチ!!!」今依は絶叫する。
「先輩、ごめんなさい、ごめんなさい、何で怒られているのか、わからないのだけれど、とりあえずごめんさい」
「それでいいんだ!山口!でかした!よくやった!痛みに耐えて頑張った!感動した!
この戦いが終わったら、真っ先にお前の家に行ってやる。
そしてお風呂にする?ごはんにする?って聞くお前に
「うっせ、どっちでもねえよ」ってぶっきらぼうに答えて、
涙目になったお前をいきなり抱きしめて
「お前が一番先に決まってんだろ」って言ってやる!
で、このあと、めちゃくちゃ・・・」
「せ、先輩、ありがとうございます。正直意味不明ですけど、そんで、なんか死亡フラグまで立ててますけど。」
「俺の嫁にしてやるってことだよ!まあ、そんなことより、いけええええええええ!!!!!!」
渾身の力をこめて今依は、キーボードのエンターキーを押す。
パスワードを入力せずに。
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「最終防壁突破されたようです!」
「自動索敵システムダウン!!」
「自動迎撃システム停止!!」
「有頂天メイン処理装置制御不能です。完全に乗っ取られました!」
「くそ、ばれたか。あの有馬というスーパーハッカーなら絶対にひっかかると思ったが、、」
「中将!敵の宇宙船?なのか、なんか列車的なもの?なのかよくわかりませんが、それの突入を許しました!」
「白兵戦用意だ!」
流星号を降りた4人は、真壁がいると思しき中央指令室に向けて走り出した。
敵兵が次々と現れるが、菫が瞬殺していく。
次々と敵兵が現れ、混戦になってきた。
「桜!ちょっとみんなから離れないようにして!」そう良子がいった瞬間
ドンという音、爆発音。
桜の身体の敵兵の只中にはじき飛ばされていた。
すぐさま、敵兵は桜の頭に銃口をつきつける。
「ごめんなさい・・」桜が泣きそうな顔になる。
「良子様、残念ながら手が出せません」珍しく菫が早々と諦める。
「わかったわ、菫。降伏しましょう。」良子は降伏を決意する。
3人は、武器を捨てて手を上げて降伏する。
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「4人を捕らえました。」
「わかった、ではこちらに連れてこい。」
部下からの連絡を受けて真壁は破顔し、富子のほうをむく。
「小娘、聞いての通りだ。お前の最後の希望は今、ついえた。
これから目の前でお前のお仲間を殺してやる。」
武器を取りあげられて両手錠をかけられた4人は、真壁の前に連行されてきた。
「お姉ちゃん!まいん!菫!桜!」富子は声を上げる
「ははは!彦仁の忘れ形見どもは、ざまあないな」
「久しぶりね安倍晴明、いつぶりかしら」と良子。
「俺氏、彦仁の忘れ形見に会う。1200年ぶり。」
「そうね、じゃあ、あんたたち、案内ありがとう。菫!」
「はい」
シャアアアアアア!
手錠をかけられていたはずの菫の両手が剣のごとくうなり、一瞬にして彼女たちを連行してきた兵士をなぎ倒す。
まさに風を纏った目に見えない剣でも振るったがごとく。
真壁も大きな手傷を負う。
すかさず、菫は、富子を解放し、良子と今依と桜の手錠も破壊する。
富子は、真壁のもっていた拳銃を取り上げる。
「菫ちゃん、何いまの?もしかして風王結界?」と富子。
「感動の再会シーンなのに、初手そこか?。絶対絶命のピンチからの大逆転なのに、まずそれを言うか」今依が呆れる。
「まあ金髪碧眼だし、【室町編】ではさりげなく、大食い設定し、そもそも富子だし、そう言いたくなるのも仕方ないわよ」と良子。
床には、菫の両腕が転がっていた。義手である。
「サ、サイコガン!」富子は言い直す。
「いや富子!ちゃんと見ろよ。ちゃんと見て正しい発言しろよ。菫の手、これ剣だろ?どう見ても。
菫の両手が義手で、その下に両刃の直剣を忍ばせていたくらいわかるだろう。なんでも適当に思いついたことを言うな!」と今依。
「ちゃんとX線検査しなかったお前らの敗北よ」とドヤ顔の良子。
血を流しながら、床の上に倒れる安倍晴明。
「くそ、今回もか。そして今回もお前らは、あのなんか白くてなんか気持ち悪いやつ、なんだっけ、杏仁豆腐?みたいな名前のあれを俺に食わせて、この身体から切り離して、安倍晴明の霊的エネルギーを四方に分散させるんだろう」
「しかし、なんどやっても無駄だ!100年、いや1000年かかっても俺は分散した魂をかき集めて、復活し、野望を成し遂げる!お前たちの努力なんか無駄なんだよ、ハハハハハ」そう強がる安倍晴明。
「そんな面倒なことは、もうしないわよ」と富子はそう言って、
パンッ
真壁から奪った拳銃を放った。
「えっ、お前、俺を撃ったの?」
「うん」
「えっ、まじ?俺、というかこの真壁を殺す気?」仰天する安倍晴明。
「当たり前よ!いくらなんでもこんな辛気臭いおっさんと口づけをするなんてまっぴらよ。
以前なら憑依先は、割と罪のない人だったじゃない、だから安倍晴明を肉体から切り離すためにああしたけど、S級戦犯の真壁はどっちにしたって極刑でしょ。」と富子。
「そうか、ところで、お前ら、俺が憑依先が死なない限り、その憑依先から抜けられないこと知ってるか。そして憑依先が死ぬ直前に見た対象物に自動的に憑依することがわかっていたか?」
「それは今知ったわ」と富子。
「まあ、あと、俺は、お前ら5人には、憑依できないし、ここには他に憑依できる人間はいないし、いずれにしてもさらばだ。」
「いや、お前の次の憑依先はこの子よ!」
そういって富子は、安倍晴明の目の前に、真壁の黒い愛猫をつきつける。
ニャー、ニャー
「やめろー!やめろー!」
ガクッ
ついには息を引き取った真壁。
そして
「にゃあああ、お前ら!許さないにゃ!」
その黒猫は叫んでいた!
もちろん、女性声優さんが声あててるようなすごく可愛い声である。
「きゃわああああああ!しゃべる猫だよ!アニメでしか見たことのないしゃべる猫だよ!ねえ飼っていい?」驚喜する桜。
「いいわ、そのつもりよ。皆で飼いましょう。」と良子。
「すごいな、ちゃんと語尾に『にゃ』をつけてる。このおっさんアニメ脳だわ。ちょっとひく」今依はひいている。。
「お前ら、俺が猫の姿になったからって、これからのお前らの冒険に同行してモンスターとの戦闘の際に、いちいちあの敵の弱点はニャーとかぐだぐだと説明したり、その時の富子たちの気持ちはニャーとか言ったりする、いわゆる狂言回しとか絶対しないからにゃ!
そして、もちろん『やれやれまた富子に振り回されたにゃー、仕方ないニャー』とか言ったりするヤレヤレ系保護者にもなんねーからにゃ!
あと、『僕と契約して、魔法なんとかニャー』とか・・・」
「あ、もう、お前、全然やるきじゃん。めっちゃ乗り気やん」とそういって抱き上げた黒猫の頭を撫でる良子。
しかし、今依は少しうかない顔である。
「どうしたの?まいん、もしかして猫アレルギー」と富子が今依の顔を覗き込む。
「だってさ、こんな奴きたら、つっこみ役としてのあたしの影、薄くなるじゃん・・・」
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「こうして5人の少女と1匹の猫は仲良く暮らしました。おしまい」
「ママ、ありがとう。面白かった。うちのクロちゃんもしゃべる猫にならないかなあ」
「富ちゃんが、いい子にしていればきっとなるわよ。」
「そうか、じゃあ、あたしいい子になる」
その瞬間、ヒーターの横で居眠りをしていた黒猫は一瞬、目をひらき耳を立てたが、またすぐにうつらうつらをはじめた。




