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【室町編】③~エンカウンター・アタック 足利義政の場合②~

うっわっ、まじきた義政きたわ、これ。

こいつは、そこそこ能力が高いのに、とにかく野心がない、やる気がないのよね。

通称デカダン将軍。

それでもって女癖が悪くて側室をやたら作って、富子を激怒させていたんだっけかな。

とにかく史実通りになることを避けるには、こいつと婚約なんか絶対にダメ。

どうすればいい?

とりあえず、さっきは公家の娘らしくない姿を見せたし、幻滅しているはず!

物言いを気をつけろって言うくらいだから、私のこと気に食わないに違いないわ!

これは第一印象で最悪とか思われているかも

もしかして意図せずしてあたし婚約フラグ回避できちゃった

すごくねえ、あたしすごくねえ


「富子様、富子様、とみこさーまー」

「はっ?」

「やっとこっちを向いて頂きましたね」

「えっ貴方は?」

「もうひどいなあ、私の話をちゃんと聞いていましたか?」

「え、あ、はい」

もちろん何の話も聞いていなかったのは、言うまでもない。

「じゃあ、そういうことでよろしいですね」

「了解いたしました。」


なんだかわからないけど、これで義政との結婚はないわ。

今日は、労働で疲れたからひと眠りしますか。


「姫様!富子様、おめでとうございます。」

侍女の竹林が頬を紅潮させてわたし言う。

「ありがとう。ってなんでお前がそんなことを?」

「ご婚約、おめでとうございます!」

「婚約って、誰が?」

「何おっしゃてんですか?義政様と姫様のご婚約ですよ」

「そんなのいつ決まったのよ?」

「ひ、姫様、先ほど、義政様からの求婚にご承諾なさったじゃないですか?」

「はああああああ?」

あたしは、義政の話をまったく聞いていなかったことを明かし、事の次第を竹林から聴いた。

どうやら義政様は、私が花の御所で右の額に傷をつくってしまった事の責任をとったということなのである。


え、こんな傷、大したことないじゃん、前髪で右目を隠せば見えないし。

そう思い、私は後ろで結んでいた髪をほどき、斜め分けにして右の傷を隠すように前髪を下す。

長い前髪で右目も隠れてしまう。


あ、この感じ。なんか懐かしいというか、心地よいわ

これからもこの髪型にしとこうかな。

右からの攻撃には、ちょっと弱そうだけど。。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正直自分の行動に驚いている。


・・ふっ、結局、俺は自分のことが何もわかっていなかったんだな・・・


屋敷の戻った俺は、今までの人生を振り返ってみる。

今日までの俺の日常は退屈だった。

この退屈はこれからもずっと続くのであろうと思っていた。


結婚すること。

それは後継ぎをつくりのための単なる作業のひとつ。

そこそこの家格があって周囲が納得する相手であれば誰でもいいんだ。

俺の結婚相手としてすでに何人か公家の娘の候補が上がっていた。

日野家もその一つであった。

いままで何人かの公家の姫君と交流をしたことはある。

どいつもつまらない連中だ。

花の話だの昔の物語の話だの和歌だの皆同じような話しかしない

文を交わしたこともあるが、格調たかく流麗な文体であるが、皆揃って中身がない

こいつら皆同じ代筆屋にでも頼んでいるか?


しかし日野富子は異質だった

俺が今まで出会ったことのないタイプの人間だった

深窓の令嬢、堂上家の姫君なのに

農民のような姿で、屋敷の庭で鍬を振るっているんだぞ

そしてあいつの言葉には嘘がない

虚飾がなく、へつらいもない

真っ直ぐに俺の目を見て何の遠慮もなく話す

その言葉のひとつ、ひとつが

そのしぐさのひとつ、ひとつが

俺にとっては、心地よいのだ。


・・この少女の顔をずっと見ていたい


・・あいつの声を聞いていたい。


・・富子を俺のものにしたい


俺は、いずこからか沸き上がった自分の欲求に素直に従いたいと思った。

衝動に基づいた行動をしたいと思った。


俺は、富子に婚約を申し入れていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい、義政、ヨシマサ!」

俺は兄の義勝に声をかけられれて我に戻った

「義政、お前もそんな表情をするんだな」

「兄貴!いつのまに!」


俺、今、どんな表情してたんだ????

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