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【軌道戦士編】⑪真壁反乱 ~ 広橋良子は頭を冷やす

「ちっ、やはり待ち伏せしていたのね!」

第3基幹駅ローエンラントの直前で、解放軍の巨大装甲列車ハンニバルは、流星号を待ち伏せしていた。

ハンニバルは、まるで翼のように大きな帆を左右に広げて、強い追い風を受けて突進してくる。


ドーン、ドーン


砲弾が流星号を掠め、至近で爆発する。


「菫!戦車砲で反撃を!」良子は指示を飛ばす。

「・・・」

「どうしたの?菫」

「FCS(射撃統制装置)が故障しているようです。手動で砲塔制御し、照準器を使いますが、あっ?」

「何?菫?どうしたの?」

「いえ、・・・大丈夫です、撃ちます。」


ドーン!


砲弾はハンニバルから大きく逸れていく


「えっ?菫が外すなんて!」良子は驚く。

「すいません、ちょっと慣れていないので」珍しく菫がいいわけをする。

「あ、もしかして、私のおじいちゃんたちのせいかもです。ごめんなさいかもです・・」と桜。

「桜、どういうこと?」良子が尋ねる。

「今回の改修で、APFSDSのためにラインメタルのL4400から六分寺重工の1000式戦車砲に換装してんじゃん。その時、レティクルもドイツ式から日本式に変わったんでしょ、多分。

ねえ、そうでしょ菫」

今依が画面で今回の改修内容を確認しながら補足する。

「はい、私、シュトリヒでないとちょっと、でも私が悪いんです。私がちゃんと確認を」

「菫、それに気づかなかったのは私の責任よ。悪いけど今はその照準器に慣れることに集中して。桜は全速で後退!」良子は声を上げる。



ドーン、ドーン


敵は間断ない砲撃を加えてくる。

至近での爆発に流星号は大きく揺れる。

手動での砲塔操作と慣れぬ照準器にさすがの菫も苦戦している。


「これはまずいわね。。」


良子は、CICのモニターを眺める。前面と左右の風景が映し出されている。


「良子姉ぇ、ジムの出撃準備はできているよ」

「今、出てもしょうがないわ、そこ降りてCICに来なさい!富子」

そして、今依に声をかける。

「ねえ、まいまい、線路の左側に大きな山のようなものあるけど、あれなんだろう」

「広橋、多分近くの農民たちが積み上げた枯草や枯れ木とかだと思うわ」

「菫、焼夷弾はあったっけ?」

「あるのはテルミット焼夷手榴弾だけです。場所は、B10の3段目です。」

「わかったわ、ちょっと行ってくる。流星号は、後退を続けて!菫は当たらなくても砲撃を続けて。あと、ここの指揮は富子に任せる」

そういって良子は武器庫に向かい、あるだけの焼夷手榴弾を抱えて列車から飛び降りる。

「お姉ぇちゃん、何を?」


「それっ」

流星号から降りた良子は、焼夷手榴弾を枯れ木の山になげつける。


ボウッ!


乾燥していたのであろうか?

枯れ木の山は一気に燃え上がり、火柱があがる。


猛烈な炎が照り付ける中で、良子は走り、焼夷手榴弾で次々と火災を拡大させていく。


ゴワアアアアアアア!


ついには、巨大な竜巻、火災旋風が巻きおこる。


グラッ


そして今まで追い風をうけて猛烈な速度で接近してきたハンニバルの動きが止まる。車体が大きく左右に揺れる!


ビュウウウウウウウ


強烈な火災旋風と温度変化を受けて風向きが変わったのだ。


ハンニバルの乗員たちはあわてて帆をまこうとするが、間に合わない。


ドーン、ガーンガラガラガラ。


横風を受けてついには、ハンニバルは脱線、横転する。


巨大な帆が燃え上がり、いっきに火は車輛全体に広がり。そして


ドガアアアアアン!


巨大な爆音をともに、解放軍の誇る最新鋭の装甲列車は爆散した。

火薬か砲弾にでも引火したのであろう。


「やった。」

「良子姉ぇ、やったね。」

「うん、こっちでも確認してるよ」

「お姉ぇ、大丈夫?」

「大丈夫と言いたいところだけど、ちょっと残念な状況かな」

良子の四方を灼熱の炎を取り囲んでいた。

脱出はできそうもない。


「みんな、ごめん。あとはお願い。私、ちょっと先にいくわ・・・」

「おい、良子姉ぇ、ふざけんな!」無線で富子が怒鳴っている。

「富子、相変わらず、口が悪いわね。」

「そこ、場所確認するから発煙筒あげろ!」と富子。

「富子、わかったよ、でも線路との間も炎なんだけどね。」


ドーンと発煙筒が上がる。

しかしすでに、その周辺は火の海だ。


「桜!全速前進!2両目を発煙筒のところでとめて!菫、クレーン車へ!」富子は叫ぶ。


キキイイイイイイ、

流星号は急停車する。


「桜!2両目、前後切り離し!」

「よし、菫!ひっくり返せ!」


そして富子は無線を通じて良子に叫ぶ。


「馬鹿お姉ぇ!先に行くとか言うな!飲み会途中抜けとかじゃないぞ!

お前、頭冷やせえええ!」


ザバアアアアアン!!!


菫がクレーンで横転させた2両目、石炭給水車から大量の水が流れていく。。

流星号と良子の間の炎の壁が消える。

水しぶきを浴びて良子もびしょ揺れになる。


流星号から飛び出してきた富子は良子に抱き着いた。

「お姉ぇの馬鹿!お姉ぇの馬鹿!」

「ごめん、富子!」

「馬鹿お姉ぇ、先にいくとか言うな。勝手に死のうとするな」

「ごめん、頭冷やした。十分冷えた。ありがとう富子」

涙を流しながら姉の胸を叩く富子の頭を優しく撫でる良子。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第三基幹駅。ローエンラントに到着した富子たち。

竹林たちもすぐに合流し、地下神殿に向かう。


「広橋大佐は妹に怒られたそうね」

「うん、だいぶ怒られたよ。勝手に死ぬなとか、職業軍人にそれはないよね。」

「いえ私も怒りますよ。任務の途中放棄には。

では始めますよ。広橋大佐、日野大尉、有馬中尉」


3人は、鍵の少女と指を合わせる。


良子の頭の中には、激しく燃える炎のイメージが浮かぶ。


「あんなことあったから、火の刻印、あんまりいいもんじゃないなあ」



途端、竹林の携帯無線電話がけたたましく鳴り響く。

電話をとる竹林。

そして電話を終えた竹林が緊張の面持ちで口を開く。

「ちょっと、これから大変なことが起きそうね。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここは須弥山の上空。


ドーーーーン!!!


キューーーーン!!!


耳を引き裂かんがばかりの轟音とともに空が真っ赤に染まった。


「真壁少将。EPエーテルポットン空中機雷、反応率17%で作動いたしました。ターゲットは完全に消滅しました。」

「そうか。ご苦労。」


須弥山へ視察に向かう途上であった宇宙移民共和国連邦グレン・キラ総帥は本人も知らぬまに原子に還元されていた。


「真壁少将。演説の準備が整っております。」

「わかった。では始めるとしよう」

真壁少将は演説を開始する。


「地球、そして宇宙にいる全人類の皆さん。

私は、宇宙移民解放軍地球展開軍総司令の真壁であります。

まず最初に申し上げることは、さきほど宇宙移民共和国連邦総帥を名乗るグレン・キラなるものを我々は誅しました。

その理由でありますが、まず第一にこのグレン・キラなるものが、移民のための移民による共和国を私したことにあります。

国家を私物化し、キラ家の繁栄のみを求め、我々移民をないがしろにする彼を売国奴として誅殺いたしました。


2つ目ですが、私は宇宙出身者、移民の子孫でありますが、地球こそが人類の揺りかごであると考えております。

特に文化、芸術といったものは、民族や信条の違いを超えた人類共通の資産であり遺産であると思っております。

しかしながら、グレン・キラならびにキラ家一党は、地球に存在するものすべてが悪であるとしてその破壊をもくろんでおりました。

私は、それを阻止するためにも行動したのであります。


私の理想は、地球出身者、宇宙移民がその対立を超えてともに手をとって未来を拓く世界の実現であります。

その理想を実現する第一歩として、現時刻をもって、現時点での宇宙移民解放軍地球展開軍が実質実効支配している地域を、『ニューフロンティア共和国』として、宇宙移民共和国連邦からの独立を宣言するものであります。


ですので我ら『ニューフロンティア共和国』は、旧宇宙移民解放軍地球展開軍に対して戦争状態にあったすべての国家、組織に対して、即時休戦の申し入れをいたします。


なお、先ほど、グレン・キラなるものを誅殺するにあたって、我々は、EP兵器を使用いたしました。

本日、建国いたしました我が国は、現在、その兵器の使用についてもいかなる条約も批准しておりませんこと、また、我々は相当数のEP兵器を保有していること。

その事実を十分お考えの上、人類にとって良識ある判断と行動をとられることを切に願うものであります。

私の演説は、以上でありますが




よろしければ、チャンネル登録をお願いします。@makachann2700」

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