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【軌道戦士編】⑤初陣 ~ トライアングルの響きは切なすぎる

ガガガガガ、

突然の銃砲撃を受けて爆煙に包まれるジム。

「富子!」

思わず叫ぶ良子。

しかしどうやら大丈夫そうだ。意外に頑丈な機体の作りである。

「どうだ!みたか!新素材ルナチイム合金装甲の威力は!」

太川勝元はドヤ顔である。でもこの場合のドヤ顔はOKだろう。

「菫、まいまい、いったん、流星号に戻って、そこから富子の支援をするわ。ここにいても埒があかない。

富子!とりあえずその機体、頑丈そうだから踏ん張って耐えて。まいまいとの交信チャンネルはわかるわね。」

「うん、わかった良子姉ぇ、なんとかやってみる。みんなも気をつけて!」


激しい銃砲撃を掻い潜り3人は流星号に戻る。


「広橋大佐!流星号、前に出ますか?」

「ちょっと待って、桜。敵も装甲列車か何かで来てるはず。その位置が掴めない以上、迂闊に動けないわ。今、観測気球を上げる」

「了解しました。」

「まいまい、電子支援、いけそう。」

「広橋、大丈夫。このエリアの運行管理システムが、生きていることは確認している」

そういって今依は、細い指で軽やかに端末を操作する。

旧北部車輛基地の詳細なマップがCICのメインスクリーンに表示される。


「よしいける!富子聞えてる?」

「まいチュー!聞こえてるよ」

「じゃあ、そこから後退50メートルで、右折」

「了解」


・・・・・


「まいチュー!右折できない!右折路なんてないよ!」

「えっ、そんな、じゃあ、さらに70メートル後退して、左折」


・・・・・


「まいチュー、左折もできない、あ、きゃあああああ」

大きな爆発音とともに富子の悲鳴が聞こえてくる。

「富子、大丈夫?」

「うん、かすっただけ、機体の致命傷にはまだなっていない」


・・・おかしい・・・


・・・もしかして・・・


今依の頭に疑念がよぎる。

端末をたたき、マップの更新情報を確認する。


・・・うそ・・・


・・・マップ情報が更新されていない?!!・・・


疑念は絶望へと変わる。


ド、ドカーン


「きゃああああ」

また、無線を通じて爆発音と富子の悲鳴が聞こえてくる。

今依は動揺する。

「ひ、広橋、マップが更新されてない!」

「まいまい!気球からの送信映像に変えて!目視でやってみて」

「やってみる。だけど・・・」


メインスクリーンの画面が切り替わる。


強い風に煽られ激しく揺れる画像。かろうじて地上の様子がわかる程度。


・・なにこれ!・・・


今依は必死に観測気球の制御を試みる。

しかし気球は、強風に煽られてなかなかうまくいかない。


・・くそ、なんで、これ・・・


「きゃああああ」


ヘッドセットからは、爆音と富子の悲鳴が度々聞えてくる。

相変わらず気球のカメラ制御は全くうまくいかない。

苛立ちは、絶望に変わっていく。


・・・もう・・だめだ・・・


キーボードを操作していた今依の手が止まる。


・・・富ちゃん・・・ごめん・・・


・・・もう、あたし、何もできないよ・・・


下をうつむき、肩を小刻みに震わす今依。


「今依・・・」


「ごめん、菫、わたし・・もう」


菫は、今依の肩に優しく手を触れる。


「あきらめないで」


その声に振り向く今依


菫は、望遠ゴーグルをつけて立っていた。


「今依、2人で約束を果たそう、ちゃんと果たそう」

「約束、うん、やろう、ごめん、菫、そしてお願い」

涙を拭う今依。菫の決意を感じとって少し気丈さを取り戻す。

「広橋!気球をすぐに降ろして!」

「まいまい、何を?、あ、うん分かった」

CIC車の屋根の上に上がろうとしている菫の姿をみて、理解した良子。

「広橋!観測機器切り離し!菫、準備は?」

「いけます!」

「広橋!緊急上昇!」


スーッ


永園菫は、空に向かって上昇していく。


髪結びがほどけ美しい金髪が風になびき、ゆらめき、煌く。


白い海鳥が雲一つない青い空に吸い込まれるように。


まるで天使が羽ばたくように。


優雅に美しく。


しかし、そのか細い身体は時折、風に煽られ、吹き飛ばされそうになりつつも


その青い瞳は凛として、しっかりと地上の姿を捉えている。


「捕捉しました」


交戦中の富子の機体を中心に、敵のGOW、線路を中心にした周辺の情報が鮮明な画像となってCICのメインモニターに映し出された。

「菫!、そのまま我慢して!」

「はい!」


「富子!まだ生きてる??」

今依は無線を通じて富子に呼び掛ける


「まいチュー、なんとかね、でもちょっとやばくなってきた」

「そこから50メートル、後退!。よし、そこを右、次は左、そのまままっすぐ。正面に小屋見える?」

「うん、見えた」

「そこで止まって、よし!撃ちまくれ!」


ガガガ!

ジムの銃口が火を噴く。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うわあああああ!、チャチュ中佐!」

「どうした田中!」

「横からいきなり攻撃が!火が!助けてください」


ズガアアアアアン


大きな爆発音とともに田中からの無線は切れた。

「田中がやられたのか?」

「チャチュ中佐ちゅーちゃ、チャチュ中佐ちょーちゃ、申し訳ありません!」

「鈴木!どうした?」

「背後から急に!敵が」


ドガアアアアアン


再び大きな爆発音。鈴木からの無電も切れる


「2人ともやられたのか?、一体に何が起きている?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「富子、無事?敵はあと1機だけど、残弾は?」

「もうないわ、バッテリーももうすぐ切れそう。」

「正面からの肉弾戦しかないわね、そこ左折して、一気に前進!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なに???」

突然、正面に現れた敵機の姿に驚くチャチュ中佐

「くそ、連合の悪魔め!肉弾戦をしようと言うのか?面白い相手しようぞ」

格闘用トンファーを握るチャチュ中佐のGOW。


「まいチュー、いた、真正面だ!」

「そのまま突っ込んで!相手の懐で、青いボタン!」

「了解、きた!、3!、2!、1!」


コックピットの画面越しの解放軍のGOWの姿がどんどん大きくなっていく。



「食らえ!ヴォターンパーンチ!」


ドグワアアアアア


ライフルを放り出したジムの右腕が繰り出した強烈なストレートが、チャチュ中佐の機体の胸部に決まる。

圧縮空気を利用したジムの一撃必殺技である。


白い煙を上げながら、後ろに吹き飛ばされたチャチュ中佐の機体。


ビー!ビー!ビー!


チャチュ中佐のコックピットでは、緊急事態を伝えるアラームが鳴り響く


「くそ、ここまでか、残念だが、後退するしかない」

後退していくチャチュ中佐の機体


ヒューン


ジムは渾身の一撃を加え、まるで燃え尽きたかのように停止する。


「富子、やったわ、敵は後退していく」


「・・・・・」


「富子?富子?」


「・・・・・」


「富子?、ちょっと」


「・・・・・」


「広橋!菫をお願い!私、ちょっと見てくる!」


そう行って、車外に飛び出していく今依


「了解、まいまい。桜、警戒しつつ微速前進!」




息を切らして、線路の上を走る今依。



・・・いつもそうだ・・・



・・・富ちゃんはいつも私に心配をかける・・・



・・・だから、もう気に掛けないようにしたんだ・・・



・・・だから嫌いになろうと思ったんだ・・・・



「ハアハアハア」


息を切らしてようやく「ジム」の傍らにたどりついた今依。

あちこちに被弾による亀裂が走り、焼け焦げ後もたくさんある。

その悲惨な姿は、戦闘の激しさを物語っている。

今依は、よじ登って外からコックピットのハッチを開く。


「富子!」


・・操縦席で目閉じて動かない富子・・・


「富子!目をあけなさいよ!」


・・・・


「なんで、なんで、」


今依は叫びながら、富子にもたれかかり涙を流す。


・・・あたしのせいだ、あたしのせいだ・・・


・・・あたしがもう少しうまくできれば・・・・



ビクッ


????


身体を少し痙攣させて富子は目をあけた。

目の前には、はんべそかいた幼馴染のまいんがいる。


「ん、まいん?どーしたの?」


「富ちゃん!、だ、大丈夫なの?」


「大丈夫、たぶん、ちょっと気を失っていただけだよ」


「よ、よかった、よかった、富ちゃんが無事でほんとによかった、ほんとうによかった」


今依は、富子を強く抱きしめて、今度は安堵の涙を流す。


「まいんはほんと泣き虫・・」

富子は、今依の頭を優しく撫でる。

そう言われても、とめどもない涙をとめることのできない今依。


そしてふと後ろからの視線を感じる。


「菫・・・」


「有馬さん、浮気ですか?」

菫は、彼女に似つかわしくない冗談をいう。


「こ、こいよ、嫁、こっちにこいよ」

今依は、笑顔で菫に目配せする。


「はい」

優しい笑顔で、うなづいた菫は今依の横で腰を落とす。

富子は、菫の腰に手を回し、その身体を引き寄せる。

富子に身を任せてもたれかかる菫。

今依も、菫の背中に手を回し、ぎゅっと身体を寄せる。

しっかりと抱き合う3人。


「ありがとう、まいんも菫もいつも守ってくれて」

その言葉に再び泣き出す今依

「あは、泣き虫まいんはほんとに昔と変わんない」

「富ちゃんが悪い、いつも心配ばかりかける富ちゃんが悪い」

「やっぱ変わんないなあ、胸も成長していないし」

「成長してるし、胸も成長してるし」

「じゃあ、触って確認させてよ」


「・・・いいよ、ちょっとだけなら・・・」


その言葉を聞いて、少しむくれたような表情で、自分の胸を富子の身体に押し付けたのは菫であった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、こちらは、敗走していくハンニバルの車内。


「中佐。どこまで後退しますか?」

「須弥山まで戻る。」

「それでは、第5基幹駅、下手すれば4まで敵の手に落ちると思いますが」

「仕方ない、GOW2機も失ってしまったのだ。やりようがない」

「まったくの大敗北ですね。」

「そんなこともないさ、結果、連合の新兵器の力量を知ることができた。」

「はあ、そうとも言えますな」

「だからこれから対策もうてる。それを知らずに須弥山での攻防戦を迎えていたとしたらどうだ。」

「なるほど、ある意味大戦果ですな」

そういいつつも、なんて言い訳のうまいやつなんだとゲニムは感服した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで、皆さんは、「ジムボタン」って作品知ってますか?

知らないですよね。。。

「ジム」の名前はこっちからです。

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