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Ein Band der Rache -another story-  作者: 雨音ナギ
Episode 2 アレンの過去
9/15

Episode 2-3

それからアレンは毎日と言って良いほど、射撃場へと通い始めた。

最初は人と接するのが怖かったのか、叔父のフュリーとの同伴で通っていたアレンだが、今では一人で通えるまでになった。

また銃の技術の面でも、的の近くに当てるのが精一杯だったが、日々の積み重ねで練習していくにつれ、確実に撃ち落とせるまでに成長していった。

そして通い始めて一ヶ月、いつものようにアレンは練習をする為にフュリーから買ってもらった自分の愛銃の手入れをしていた時、顔なじみの職員の女性に話かけられた。


「あら、アレン、今日もやるのかい?」


彼に話しかけたこのブロンドの女性は二十代後半に見えるほどとても綺麗な人なのだが、実際の年齢はもうすぐ四十間近なるらしく、アレンは最初出会った頃、驚きを隠せなかった。

今日も女性の美しさに少し目を奪われながらもアレンは銃の手入れを続ける。


「ええ。これが僕の生きがいみたいな物ですから」


「そう……じゃあそんなあなたに朗報かもしれないわね」


アレンは作業していた手を止めて、どういう事かと女性に視線を向けると彼女の手には一枚のチラシが掲げられていた。


「毎年この地区で行われている射撃大会が明後日あるの。まあ、年に一回此処が騒がしくなる行事なんだけどね。ほら、アレンの銃の才能には目を見張るものがあるから此処で腕試ししてみるのもいいんじゃないのかな?と思ってこのチラシ持ってきたの。

参加費無料だし、年齢制限も一応あるけど、十歳以上からだからアレンは大丈夫でしょ?ただ、この大会は当日参加でエントリーじゃなくてこの周りにある各射撃場からエントリー行わないといけないんだけど……。どう?やってみない?」


突如、大会の参加を求められ少し困ったような表情を浮かべた。

確かに今のは完璧に趣味でやっている。

大会に出るほどの実力はあるのだろうか?

自分よりもっと凄い人たちが集まっていると思うとアレンは一言返事がなかなか出来ない。

その時、ちょうど一緒に来ていたフュリーがアレンの元へと近づいてきた。


「どうしたんだ?」


「ああ、フュリーさん。実は今度大会があるからアレンに出たら?って聞いてみたんだけど……」


「例の射撃大会か。アレンの実力を試す機会だし、やってみたらどうだ?別に一番じゃなくてもいいんだ。一度、頑張って成果を残してみるのが大事だと思うぞ」


迷っていたアレンだが、最後の一言で何かが吹っ切れた気がした。

アレンはまだ戸惑いつつも職員の女性にやる、と一言いい、受付でエントリーをし始めた。



そして、時は過ぎ、今日。

年に一回、街が賑わう射撃大会が開催された。

朝から花火が数発打ちあがり、祭りのスタートの合図が響き渡る。

その音を聞いて目を覚ましたアレンは、まだ眠そうにしながらも目を覚ました。

パジャマから出かける服へと着替えて、下で待っているフュリー夫妻の元へと降りていく。

下へ降りると、妻のキャリーがキッチンに立って準備をしていた。

よほど張り切っているのか、これでもかというぐらい挟んだミックスサンドと昨日、隣に住んでいるニコライがおすそ分けで持ってきたトウモロコシを使ったコーンポタージュなどが所狭しと並んでいる。

降りてきたアレンに気づいたフュリーは新聞越しに挨拶をかけた。


「おはよう、アレン。いよいよ今日だな。どうだ、調子は?」


「あんまり寝れなかったかな……。それより、キャリーさん凄く張り切ってるね」


「そりゃそうだ。うちに来て初めてのアレンの晴れ舞台だからな。キャリーは朝からこれでもかというぐらい料理を作って準備してる。ほら、そこにお弁当箱あるだろう?全く、いくら育ち盛りのアレンでも此処までの量は食べれないだろうって言ったのだが聞く耳を持たなくてね……」


フュリーの言葉にアレンは嬉しかったのか笑みが零れた。

自分の事のように喜んでくれる二人の姿を見るのが少しだけ嬉しいのだが、恥ずかしくてそんな事をストレートに言えるはずも無い。

支度が終わったのかキャリーはこちらに近づいて一緒に席についた。


「だって、ここまでして嬉しそうなアレンを見るのは久々なんですもの。さあ、料理が冷めないうちに食べましょう」


三人で仲良く食卓を囲んだ後、フュリーとアレンは自分の銃のケースを持ち出して出かける準備をした。

そして、キャリーがお弁当箱を持ったのを見届けた後、彼らは大会が行われるヴラーダ射撃場と向かった。

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