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Ein Band der Rache -another story-  作者: 雨音ナギ
Episode 2 アレンの過去
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Episode 2-1

Episode 2

――もっと世界を見てみたいと思わないかい?

今から十年前。アレンが十三歳だった時の話。



「アレン……」


とある日からぷっつりと糸が切れてしまったかのように少年は表情を出さなくなってしまった。

その少年の名はアレン・ハロルド。

今から三年前に唯一の肉親である姉を失くした直後から彼の人生は変わってしまった。

学校にも行かず、一日の大半はこうしてただひたすら虚空を眺めている。

現在は父親の弟に当たるフュリー・ハロルドが彼の面倒を見ていた。


「どうしたらいいものか……」


毎日、フュリーは頭を悩ませていた。

近くのカウンセラーや医師に見てもらっても彼は一向に拒絶をしたままだ。

フュリーの妻のキャリーも困った様子で椅子に腰を掛けている。


「貴方、アレンはどうなってしまったの?このままじゃ彼は……」


「分かっている。このままだと一生アレンはあのままだ。だが、医者に見てもらってもカウンセラーに来てもらっても一向に良くならない。

手の打ちようが無いじゃないか」


「ああ、どうしたらいいの……」


いつもこんな会話ばかりで話は進まない。

せめて何か……何か方法は無いのだろうか。



ある日の晩、フュリー達三人が夕食を取っているときに家のベルが鳴った。

キャリーがドアを開けるとそこに居たのは隣に住むニコライが笑顔を浮かべドアの前に立っていた。

持っている籠の中にはたくさんの野菜が入っている。


「いやぁ、今年は豊作でね。とてもいい野菜が出来たんだ。いつもお世話になってるフュリーさん家におすそ分けしようと思って……」


「まあ、こんなに……。本当にいいのですか?ありがとうございます」


キャリーが籠を受け取ると意外とずっしりくるのか少し重たそうに持ち抱える。

その様子をみたフュリーは妻の下へと近づき、籠を代わりに持った。

そして、ふと思い出したようにニコライはフュリーに顔を向けてこう言う。


「あっ、明日ライフル射撃一緒に行かないか?実は友人と一緒に行く予定だったんだが、急遽予定が入ってしまったらしくてね。

一人で行くのもなんだし、フュリーさんにも射撃のご指導を願いたいと思ってね」


フュリーはもちろんいいですよ、と言ってニコライと軽く会話を済ませた後、持っていた籠をキッチンに置く。

彼の趣味はライフル射撃だ。

しかも腕前も中々のものでちょっとした大会でも優勝した経験がある。

アレンを引き取って以降、行かなくなっていたが気晴らしに行って見たいと思いさっきのことを了承したのだ。

すると玄関でのさっきの会話を聞いていたのかアレンはいきなり「ねぇ」と言って話しかける。


「どうしたんだ、アレン?」


普段は虚空を見上げているのに自分から話しかけるのは珍しい。

どうしたものかと、妻のキャリーも食器を拭きながらこちらを向いている。


「おじさん、ライフル射撃って何?」


「ああ、ライフル射撃というのは離れている的をライフル銃で撃ち落す競技だよ。

最近はやってないけど……。どうかしたのか?」


「僕もライフル射撃やってみたい」


まさかそんな事を言うとは思わなかったのか、彼の話を聞いていた二人は驚いた顔を浮かべている。

だが同時にこのチャンスは無いと思い、フュリーはよし、明日連れて行ってやろう、と言って彼の分の銃も用意し始めた。


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