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Ein Band der Rache -another story-  作者: 雨音ナギ
Episode 1 ウィルとアレンの出会い
6/15

Episode 1-6

「僕の負け……だよ」


アレンは剣を下に置き、手を上げて降参のポーズをとった。

それを見たウィルは首元に突きつけていた模擬剣を離して地面に置いた。


「まさかあんな速度で来るとは思わなかったよ。お前、デスクワーク派じゃないだろう?」


アレンは模擬戦専用の剣を片付けながらそう言った。

だが、ウィルはいいえ違いますよ、と首を横に振る。


「ただ単に昔、親戚の叔父から護身の為にと、剣術を仕込まれただけです。

正直、私は戦闘はあんまり好きじゃないので……」


「だからだな。お前が本部(こっち)に呼ばれてきたのは。

そういえば、お前……訓練学校の時に、やたらと強かったよな……?」


剣を片付けていたウィルはそんな事をいきなり言われると思わなかったのか驚いた表情を浮かべる。


「へっ?何時の話ですか?というかなんで私のこと知ってるんですか?」


「何でって……お前が知らなかっただけかもしれないが、

僕達同期の奴らはウィルのことを知らないやつはいないぞ?

まあ、僕は実際にこうやって会った事なかったからあの時までウィルの顔は知らなかったんだけど……。てっきり本部に勤めてるのかと思いきや、田舎に居たとはな」


「ええまあ……。私はどうも剣術とデスクワーク以外は苦手なので。

そういえば、此処の訓練テストも受けたんですが、銃の使い方が分からなくて落とされちゃいました」


少し苦笑いを浮かべながら剣を片付け、乱れた地面をブラシでウィルはかけなおしながらそういった。

アレンは直ぐに作業をしていた手を止めていきなり彼の方を向いて驚いた表情を浮かべた。


「ちょっと待て。銃の扱い方が分からなかっただと?銃の扱い方は訓練学校で習わなかったのか?」


ええ、そうなんですよ、とウィルは何事も無かったかのようにさらっと流す。


「おい、ここにいて銃が使えないなんてそんなことはあってはならないだろうが。ちょっと来い」


「え?いや、此処の地面にブラシかけないとまずいんじゃ……」


「お前が銃が使えないほうがよっぽどまずい!地面の整えは後輩にやらせる」


再びアレンはウィルを引きずりながら隣にある射撃場へと向かわせた。

丁度、射撃場では練習が行われていた。

だが、皆がアレンの姿を見つけると五月蝿かった銃声音がぴたりと止んだ。

まるで何故此処にいるのかと驚いている様子だ。

そんな周りの様子を気にすることなくアレンは一番奥の大きい的が設置してある場所へと足を進めて止まった。

そして横においてあったライフルとウィルに手渡す。


「小手調べだ。撃ってみろ。」


「えっ?」


使い方が分からないと言っているのに撃てというのか。

内心困惑しながらも、銃を構える。

そして引き金を引くが――。


「あっ、あれ?」


引き金を引いても弾が出てこない。

おかしいな、と思いつつライフルの銃口を覗こうとした瞬間、アレンはウィルを突き飛ばした。


「うわっ!?」


突如の出来事に受身が取れず、ウィルは壁に叩きつけれた。

背中をさすりながら、何をするんだとアレンの方を睨み付けようとした途端、彼から怒号が飛んだ。


「お前は馬鹿か!銃を撃ちながら覗くアホが何処にいる!下手したら暴発して死ぬ場合があるんだぞ!いいか、銃は引き金を引いただけじゃ出てこない仕組みになってるんだ。

ほら、此処に安全装置のでっぱりがあるだろう?ここを解除してやらないと弾は出ないようになってるんだ。

こうやってな。」


アレンはスッとライフルを即座に構えて、的のあるほうに撃つ。

乾いた銃声音が鳴り響く中、アレンの弾は小さな赤い的を貫通していた。


――凄い。

ものの数秒であんなに小さな赤い的を当ててしまうとは。

ウィルは内心、アレンに舌を巻いた。

同時に今、自分のしでかした事に気がつき、彼を睨みつけようとした自分を恥じた。


「ほら、もう一度やってみろ。安全装置を外して的を見る。まずはそれからだ」


言われた通りにウィルは安全装置を外し、構えて、スコープから的を見る。

一呼吸置いて引き金を引いた。

また乾いた銃声音が鳴ると同時にウィルが撃った弾は赤い的の近くを貫通していた。


「そうだ、その調子だ。銃は反動が来るからな。落ち着いて撃つんだ」


銃を撃った後、弾を変えようとしたが、変え方が分からなかったがアレンは丁寧に教えて、二人が一通り撃ち終わった後は既に外は日が暮れ始めていた。


その後、訓練場の閉館時間と共に二人は銃の練習をやめて外にある繁華街へと向かった。

勿論、約束通りアレンは近場の居酒屋へとウィルを連れて行く。


「本当にいいんですか?此処は私が割り勘しますから……」


「五月蝿い!男に二言は無いんだ!女みたいなこと抜かすなよ!」


言われたとおり好きなメニューを頼んでいたウィルだが、あまりの気前の良さに若干落ち着きを隠せない。

一方のアレンは頼んだお酒でアルコールでそうとう回っているのか、気分がかなり高揚しているようだ。

ウィルはコップに口を付ける程度でそれ以上酒を飲もうとしなかったが、見かねたアレンがどんどんとお酒を追加していってしまい、無理やりコップにつぎ込まれてしまうからには飲まないわけにはいかず結局は飲ませられる羽目になってしまった。

そして、二人が酔いつぶれるまでの酒盛りが終わったのは深夜になってからだった。

動けななくなり困った店主が上司のアドルフへと連絡し迎えに来て、二人を家に送った後の翌日、アドルフの雷と説教を喰らったのは言うまでも無い。

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