Episode 1-5
先輩の命令に従えないのかとアレンに半ば脅された状態でウィルは訓練場に着くまで引っ張られ続けた。
どうやらウィルは半ば諦めたらしくそれ以上抵抗はしなかった。
訓練場に着くとすぐさまアレンは誰かが片付けずにそのまま放置してあった模擬試合用の剣をウィルに渡す。
小さな闘技大会でも開けそうなほどそれほどまでに大きな訓練場を前に今、二人は向かい合って立っていた。
「とりあえず、どちらかが負けるまで続けるぞ。そうだな……。何か賭けがあったほうがいいよな。今回の試合で負けた奴は、勝った奴の今日の夕飯を奢る……っていうのはどうだろう」
「本当にやるんですか……。いいですよ。その条件ならこちらも呑みましょう。
ただし、公平な試合をするためにインチキは絶対にしない……って言う条件ですが」
「そうだな。いいだろう。じゃあ行くぞ?」
アレンがそう言った瞬間、試合開始の合図の音が訓練場のフィールドに響き渡った。
最初に先攻を切ったのはアレンだった。
ウィルに向かって走りだし、首元に向かって模擬剣を振り下ろした。
彼は右に避けその攻撃を剣で弾き攻撃を流す。
アレンはどんどん詰め寄ってウィルの隙のある部分を探し出し剣を振り下ろしていく。
対するウィルは攻撃を流しつつ防御でアレンの隙が出来る瞬間を見据えていた。
木製で出来た剣の音が交互に響き渡る。
だが、攻撃しても攻撃しても互いに一向に当たる気配が無い。
このままでは難しいと思ったのかアレンは一旦身を引き構えを取り直す。
ウィルもそれに倣い剣を構え直した。
「ほう……。中々やるじゃないか。僕の剣流についてこられるとはね。
結構な腕あるんじゃないか?」
「そんな事無いですよ。私はデスクワーク派ですから……。今度はこっちからですね」
ウィルは一回深呼吸をした後、アレンに向かって駆け出す。
(っ――!)
アレンはウィルの動きに驚きを隠せなかった。
彼の剣の振りはアレンとは違い、大降りの動作が少ない動作をしており動きも速く隙も少ない。
さらにウィルはアレンの一瞬の隙でも狙おうと次々に攻撃を仕掛けてくる。
正直、アレンにはウィルの攻撃を防ぐことが精一杯だ。
今までにない激しい音が二人の耳元に響く。
「これで……どうでしょうかね?」
(な……!)
あれだけ攻めていたウィルの姿が一瞬にして消えた。
勿論、アレンは剣を構え焦って周りを見る。
その瞬間、上から背中に寒気が走った。
だがアレンが見上げて振り返った時には既に彼の首元に剣が突きつけられていた。