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Ein Band der Rache -another story-  作者: 雨音ナギ
Episode 1 ウィルとアレンの出会い
4/15

Episode 1-4

本部へ入るとどうやら皆、仕事へ行っているらしい。

ただ一人、真ん中のデスクでココア色を撫でつけ黒縁眼鏡をかけた男性がデスクに座り、

忙しそうにパソコンに書類を打ち込んでいるだけだ。

そんな男性に気を使うこともなく、黒髪の青年は正面から歩いていき、彼に近づく。


「おー。アドルフさん。連れて来ましたよ」


その瞬間、アドルフと言われた男性は操作をしていた手を止め目の前にいる黒髪の青年に視線を向けた。


「連れて来ただと?今日は客人なんか呼んだ覚えは無いが?」


「いや、例の転勤してきた奴ですよ。ええっと名前は……」


黒髪の青年はチラリとウィルを横目で見やった。

そういえば青年に自己紹介をしていなかった、とウィルはハッと気が付き、


「セルジュ支部から転勤してきました、ウィル・アーヴィンと申します」


と二人に軽く頭を下げる。


「ウィル・アーヴィン……か。俺は此処の管理長のアドルフ・クライドだ。

それとお前の隣にいる黒髪の奴はアレン・ハロルドだ」


そうアドルフが言うと、ウィルの隣に居た黒髪の青年――アレンはよろしくといって彼に軽く微笑んだ。

正直ウィルにとっては苦手なタイプであったが、彼も、よろしくと言ってもう一度軽くだが頭を下げる。


「ええっと、管理長、私はどうしたら……?」


「アドルフでいいぞ。此処の奴らは皆、ファーストネームで呼び合ってるからな。

とりあえず、今日は荷物の整理をしたり、本部の詳しい仕事内容についてそこのアレンから詳しく聞いておけ。情報なしでは仕事は出来んからな。と言うわけだからな。アレン。後は頼んだぞ」


「ん、了解」


本当に此処はエリート達の集まる本部なのだろうか、とウィルは彼らの口調に妙な違和感を感じつつも隣にいるアレンに色々と案内してもらうことになった。



仕事場を出ると直ぐに廊下に繋がっており、組織の中央広場に当たるエントランスへと向かっていく。エントランスに行くと広間のサイズにあった噴水が流れている。

そしてその近くにはベンチやテーブルがあり昼休みなどで使えるように設置されていた。


その広い大広間を抜けると数十室にも及ぶ、会議室が並んでおりウィルを驚かせた。

また、食堂や売店も都市部とあってか品揃えも豊富で毎日どれを昼休みに食べようか迷うぐらいだ。流石、本部だけのこともあって設備は整えてある。


「んで此処が寮へと繋がる道だ。アドルフが怒ったら怖いからな。遅刻は絶対厳禁だぞ?」


一通り本部内を歩き回り、これから住む寮へ向かう近道のルートを教えてもらった帰り、

ウィルはある場所にふと目が止まった。

組織内のガラス張りの窓から見える建物内の景色はグラウンドらしきものが広がっている。


「アレンさん、これは一体何をする場所なんですか?」


「ウィル、僕のことはアレンでいいよ。

……そこは訓練場だ。ま、普段は此処の奴らが暇なときに訓練してるんだ。

命に関わる職業についている以上何が起こるかわからないからな」


「あっ、すみません。へぇ、そうなんですか……」


そう言ってウィルは暫く窓の外を眺めた後、直ぐに通り過ぎようとしたとき

いきなりアレンが立ち止まった。


「……どうしたんですか?アレン?」


「なぁ、ウィル、今日は何日だ?」


突如、そんな事を聞かれてウィルは一瞬戸惑ったが持っていた手帳で今日の日付を確認し


「今日ですか?今日は12日だったと思いますけれど……?」


と彼に伝えた。


彼は近くにあるボードに近寄り何かを確認している。

ウィルは訝しげに思い、覗き込んでみると訓練場<今月の予定表>という紙が一枚貼ってあった。

彼の頭の中に一瞬嫌な予感がよぎる。


「まさか、アレン……」


「そうだ。そのまさかだよ。小手調べと行こうじゃないか。ウィル」


「冗談じゃないですよ!」


私は本当はデスクワーク派なんですから、と彼は首を横に振り嫌そうな顔をした。

だが、当のアレンは全く聞く耳を持たない。


「いいじゃないか、相手の能力の事も知るのも僕の仕事だ」


となんとも理不尽な言い訳で嫌がる彼を訓練場まで無理やり連れて行ったのだった。


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