Episode 2-6
地区大会が終わり、家に帰った後、アレンは事の成り行きをフュリー達に話した。
当然、一般の仕事よりも危険が増すため、フュリー達はあまりいい顔をせずに反対していた。
だが、今日出会ったミラン・クライドの話や自分の思いを始めると渋々ながらも訓練学校へ進学することを認めてくれた。
そして二日後、町の時計台の前で待ち合わせをしていたミランと落ち合って町の中にある訓練場へと足を運んだ。
そこには簡易ながらもテントが並んでおり、組織の幹部と思われる人々が椅子に座りアレンを見やっていた。
「ミラン、君が余りにも優秀な人材を見つけたというからこうやって学術試験を開いたわけだが……。どういうつもりだ?」
あまりの威圧感に彼はたじろくがそんなこともお構いなしにミランは話を始めた。
「その通りの話ですよ。彼は非常に優秀だ。私達の手で育てたら組織の要として十分に働いてくれると思います。まずは彼の実力を見てみたらどうですか?」
あまり面白くなさそうに呼び寄せられた試験官達はアレンに一本のライフル銃を渡した。
「これであの的を撃ってみろ。ただし全部撃ち落せ。ひとつでも外したらお前は不合格だ」
アレンは威圧感に手が震えつつも銃を構える。
そして短時間でスッと息を吸うと引き金に指を引いた。
甲高い音を発して弾丸が発射される。
そしてその弾丸は見事に赤い的を撃ち落していた。
弾を入れ替え、息を整えた後もう一度撃つ。
今度も見事青い的に当たった。
ほう……と試験官の中からため息のようなものが漏れる。
「確かにお前が言うとおり銃の扱いは上手い。構えてわずか一秒ほどで的を正確に撃ち当てるのはいくら撃ちなれていても出来る芸当じゃないだろう。
だが、これはどうかね?」
アレンの背後から寒気が走った。
右に飛ぶと後ろから飛んできた投げナイフが訓練場の壁に突き刺さる。
思わずアレンの頭に血が上ったのか手元にあったナイフを抜きさして、試験官の背後に回り突きつける。
「何をするんだ!」
息を切らしながらアレンはそう言ってナイフを首に突きつける。
その様子をみた試験官は……わずかに笑いを浮かべた。
「……合格だ」
「は……?」
突然そんなことを言われ気が抜けたのか手からナイフがすり落ちて地面に突き刺さる。
「分からんのか。お前を試したんだよ。ふん、ミランの肩を持つつもりはないが確かにこれは天性の才能がある。普通は避けても自分の身を守るのに精一杯でなかなか出来ない。
そしてお前は手元にある武器を持ってきて私にナイフを突きつけた。此処までの瞬発力と判断は訓練も受けてないのによく出来たものだ。一週間後、国立アルマヴィオラ訓練学校でまた会おう。今日はもう帰っていいぞ」
一方的な終了宣言を出され、アレンはわけが分からず呆然と立ち尽くしていたが、時間が経つにつれ自分が難関試験に合格したのだと気がついた。
特に嬉しいという感情は無い。
これで一歩真実に踏み出せたんだ、とそう思っただけだった。