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半年って意外と早い

 電子音のアラームがけたたましく鳴り響き、朝を知らせてくれる。

 そういえば今日は早いんだった。

 布団から起き上がり、スマホの置かれた机を見つめる。


 「くふふっ。ついに手に入れた最新式のスマホ。なんかにやけるなぁ」


 アラームを止めて、充電器からスマホを外し、改めて隅々まで撫でまわす。

 ふぅー、なんか落ち着くわー。

 朝ちょっとひんやりしてるのがいいんだよね。


 昨日ついに念願だったスマホを手に入れる事に成功したのだ。

 とても大変な戦いだったよ。

 まず、ママをだま――説得してそれからサトーさんから無理やりオフを勝ち取る。

 ここ2週間ほとんど休みなく、スケジュールをパンパンに、詰め込んでくれる仕事の鬼に、半日だけでいいからと、ほとんど泣き脅しに近い手法を使ってなんとか、時間を絞り出したのだ。

 ママも最近は、オフがないし昨日を逃すと一ヶ月は予定が合わなところだったから、本当に演技をやってて良かったよ。

 いや、そもそも演技を始めたから、こうなったんだし、良くはないか。

 

 「それにしても置くだけで充電出来るとは技術の進歩は早いな」

 

 100パーセントになっているバッテリーマークを見ながらしみじみと呟く。

 確か、私の記憶にある限り、ワイヤレス充電なんて技術は確立されていなかった。

 社畜していて時間に余裕がなかったから、情報を集めていたわけじゃないから確実とは言えないけど、少なくとも、周りではそんなスマホの話はでていなかった。

 

 「何、おじいちゃんみたいなこと言ってるのよ紗那ちゃん。まだママより20歳以上も若いのに」


 「うぇ。ママ。いつからそこに?」


 いつの間にか部屋扉を開けて後ろに立っていたママの方にゆっくり振り返る。

 驚いたせいで変な声が出てしまったけど気にしない。


 「紗那ちゃんがアラームを止めた辺りからよ。昨日までママが起こしていたから、急にスマホアラームになってうっかり寝過ごしたりするじゃないかと心配で様子の見に来たの。ほら、紗那ちゃんママに似てうっかりさんだから。聞いたわよ、入るスタジオ間違えてスタッフさんを驚かせたって」


 最初から見られていたってことは、あの笑いからだよね。

 それに何でサトーさんとバラエティー番組のスタッフさんしか知らない話を?

 二つの意味で、死ぬほど恥ずかしい。


 「違うのママ。ちょっと急いでて、2と3を見間違えただけなの。忙しくて疲れが出ただけ」


 色々言い訳をするために慌てて早口で捲し立てる。

 そうあれは二週間続けて仕事をしたせいであって、私がどじとかアホとかそんなことは、ないはずだ。

 前にも似たようなミスをした気もするけど、あれも初めてで、緊張していたからだし、だから全然うっかりとかじゃないし。


 「紗那ちゃんをからかってる場合じゃなかったわ。急がないとサトーさん迎えに来ちゃう。今日ドラマの撮影2本入ってるでしょ? それにママの今日は早いのよ」

 

 「うん。そうだね」

 

 この話題が早く終わったのは助かった。ありがとうお仕事。

 

 ココ最近の花京院家の朝はいつも慌ただしい。



 初めてのオーディションからそろそろ5ヶ月が経つ。

 4歳から5歳になったせいか、それまで、週2~3ほどだったお仕事がここに来て爆発的増えてきた。

 具体的には、休みが月に6回あるかないかの忙しさだ。

 なんとも嬉しい話をではあるが、このまま行くと、小学生までに辞めるとは言い出せなくなりそうだな。


 この前夜中にトイレに起きたら、ママが、薄暗い部屋で私が出たドラマのシーンを延々ループ再生していてぞっとした。

 親バカもあそこまで行くと危ない人にしか見えない。


 それと、一緒になった現場のスタッフさんから感想を、貰ったりもする。

 ほとんど1話だけの出演とか、ワンシーンだけとかのチョイ役が多いはずなのに、反響はすごい。

 テレビってなんだかんだで偉大だな。

 まぁママが喜んでいるならそれでいいかと思っている自分もいるんだけどさ。

 親孝行大事。


 まだ主役はつとめられていないが、周りに比べれば成功している方と言えるらしい。

 同じ養成所でレッスンしている子達と滅多に同じ現場で会わないことからも察せれるだろう。

 あとスタッフさんの対応がとっても丁寧だし。


 最近イケメン子役候補が出てきたらしいし、あんまりうかうかしてると仕事を持って行かれるかもしれないから、早めに主演とかやりたいものだな。

 悔しい話、のあちゃんは主演の映画が、決まったそうだし、やっぱり、リアル天才子役に負けてられない。

 こっちは6倍ぐらい人生経験してるわけだから、負けたままだと、他にいるか分からないけど他の転生者の方々に申し訳ない。

 もも? あぁ、あれは最近レッスン漬けだ。

 何でも本人が1からレッスン受け直したいと言い出したらしい。

 謙虚になってくれて師匠としても嬉しい。

 


 朝食終えて、いつものように寝癖をママに直され、出られる準備が整ったタイミングで、サトーさんから電話がかかってくる。

 さぁ、お仕事の始まりだな。


 「本日のスケジュールですがスタジオでのドラマのワンシーンゲスト出演2本とお伝えしていましたが、スケジュール変更がありまして、3日後入っていたCM撮影が今日にずれ込んで3本に増えました」


 いつものように移動しながら、今日のスケジュールを確認しておく。

 今のように、当日にいきなり修正されることは少なからずある。

 人間だけじゃなくて、天気や交通状態なんかでいくらでも状況が変わる世界だから、仕方ないことだけど、朝からテンション上がるなぁー。

 CMはとてもいいものだ。知名度アップとか、撮影時間が他に比べて短いとか、色々嬉しい点がある。

 

 「じゃあ3日後はオフになるんですか?」


 それはさておき、CMの撮影が今日にズレるならその時間はオフになる可能性が高い。

 これもテンションが上がる要員だ。


 「いえ、そこには別の仕事が入るように調整しておきます。昨日無理やりオフを作らせたんですから構いませんよね?」


 「は、はい」

 

 苦笑いをしながら一応返事だけはしておく。

 サトーさんは昨日の無理やりスケジュールを開けさせた事を根に持っているらしい。

 しばらく過密スケジュールが続くことになるなこりゃ。

 

 この業界に、そこそこ長くいるサトーさんはその真面目さと、これまで色々な現場で得たパイプから仕事をどんどん持ってくるので、本気になれば半年先まで休みなの無いように、スケジュールを埋めるぐらい、余裕らしい。


 それに、無駄にデカイ胸も武器としてあるし、40過ぎのおっさん監督とかには効果的らしい。

 世の中には枕営業なるのもがあるらしいし、それより色仕掛けの方がマシだけど、打ち上げの度に、おじさんの変態みたいな、顔を見せられるのは勘弁願いたいものだ。

 サトーさんは、それもマネージャーの仕事だなんて言ってるけど絶対違うと思う。



 それとは別の聞いた話だが、そのマネジメント力を買われて出来たばかりのアイドル事務所から引き抜かれそうになったんだとか。

 そんな話を私に聞かせてどうしたかったのかは謎だけど、サトーさんはそれだけ優秀だ。

 ロリコンでなければ完璧だったのに。

 最近、血走った目で、やたらとキッズ水着のモデルの仕事をやらそうとしてくるし。

 まだ夏に早いのにね。

 断ると、またスケジュール休みが遠のくので、最近1回だけなら、受けてしまおうかと思いはじめているけど、それをしたら負けた気がするから、やっぱりまた断る事にしよう。絶対それサトーさんの趣味が入ってるもの。

 あと、ママがその雑誌を大量買いして家の中に溢れる未来が目に浮かぶし。

 いくら社蓄でも家で恥ずかしい思いをするような仕事は受けないぞ。

 



 特に、トラブルなくも最後の撮影が終了する。


 「お疲れ様でしたぁー」


 「さなちゃんいい演技だったよ。またよろしくね」


 思い描いたイメージ通りのCM撮ることが出来たからか、怖いで評判の監督もすごく笑顔だ。

 

 「はい、よろしくお願いします」


 次に繋げるためにも、愛想よく返しておく。

 サトーさん曰く男なんて笑顔を見せておけばころっと仕事をくれるらしい。

 半信半疑ではあるけど、この監督とは、今回で4回目の仕事だから間違ってないのかもしれないな。

 


 自宅に到着し、エレベーターに乗り込むと、明日のスケジュールの確認をはじめる。

 

 「さてと、それじゃあ明日の予定ですが、少し遠い現場なのでに8時に入りなので、6時半には迎えに行きます」


 そういえば、明日は準レギュラーキャラとして出演しているドラマの地方での撮影の日か。


 「はい、子供探偵物語の撮影日ですもんね」


 「ええ、既に渡してります第2部の台本、暗記しておいてください。スケジュールの都合であまり失敗出来そうにないらしいので」


 本当なら先週撮影するはずの予定が大雨のせいで、できなかったので、かなり遅れているのだ。

 撮影日が雨ってことはよくあるし、もしかたら私、雨女なのかもしれない。

 照る照る坊主とか効き目あるかな? 


 「はい、それではお疲れ様でした」


 今日も私の1日は仕事で消える。まぁ、20時には家に帰れてるし、これぐらいならブラックなんて言えない。

 日付を超えても帰れないぐらいからブラックなのだ。


 さぁー、明日も早いしお風呂入ろうかな。

 家に帰って来て最初にやることは着替えと汗を流すことだ。

 身だしなみはしっかりしておくべきだし汚れはやめに落とすにかぎる。


 「1人でお風呂に入ろうとしちゃダメでしょ。溺れたどうするの?」


 脱衣場に入ると、すごい足音と共にママが入ってきた。


 「もう5歳だし、流石に1人で入れると思うけど」


 1人でお風呂入れる5歳児がいるかは分からないが、これからどんどん、生活のリズムが合わなくなることは予想されるし、できれば帰ってきてすぐに汗を流せる環境を整えておきたい。


 「紗那ちゃん、ママねすごくお仕事を頑張ってるの」


 「それはしってるよ」


 「頑張り続けるには癒しって必要よね?」


 「うーんよく分からない」


 ママは一体何を言いたいのだろうか? なんとなくその気持ちは分からないでもないけど、真意は謎だ。


 「わかりやすく言うとね、ママの帰宅後唯一の楽しみを奪わないで!!」


 5歳になってもまだ1人でお風呂は早いそうです。

 1人っ子って大変ですね。

 あー、妹か弟が欲しい。

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