Turn05 ジゼル/5
【あ、管制から連絡】
「ミクモ様、ご依頼通り、急造で質量火砲をエルハサルに装備させましたが……」
「じゃあ、ラグナさんには上がってもらって、上空から索敵。敵骨格艦の潜伏場所を発見したら、そのまま砲撃を加えてもらって下さい。それで敵を炙り出せるはずです」
そうこうしていると、ゆっくりとジルヴァラを乗せた搬送用エレベーターがせり上がり始めた。
斜めに競りあがるエレベーターの先には、底抜けに蒼い空が見えた。
こちら側へ来るまで、空をのんびりと眺めたことなど無かったかもしれない。遠野の街はどんな空だっただろう。
「了解。ラグナ艦、上空にて索敵後、対地砲撃を行ってください」
完全に地上に出たジルヴァラと入れ替わりで、本来外宇宙船艦載砲である質量火砲を装備したエルハサルが飛翔した。目立たぬよう跳躍ではなく、偏向重力推進でゆっくりとである。
「ただ上空に上がるだけで敵艦、見つかるんですか」
やや不服そうにエルハサルのラグナが言った。急にやってきた子供が、偉そうにしているのだから仕方ない。
カノエは心が折れないように、精一杯大人ぶって指示を続ける。
「渓谷へ潜伏するのは、拠点の光学センサーが地表面に遮られるからなんで、こっそり上空へ上がって索敵は良くやる手なんです。少々危険な手ではありますが……」
同じ理屈で、アーチボルトに成層圏から観測されているラーン守備側の配置は、相手に看破されている。
危険な方法ではあるが、こちら側も早急に相手の戦力を確かめる必要があった。
「危険は承知の上です。やっては見ますが……」
「見つけたら撃って、反撃される前に戻ってください。向こうからは丸見えですから。他の方は飛び出してきた敵艦をすぐに攻撃してください。砲撃で動揺している時が一番倒しやすいです」
ヘヴンズハースのセオリー通りなら、これで有利に事が進められるはずだ。
「まあ、レイオン様のお墨付きだ。当てにさせて貰いますよ、ミクモ殿」
軽く顔合わせをした程度の仲なので、僚艦としての信用はないが、レイオンのお陰か、指示に嫌悪感が出るほどではないようだった。
最初の指示が通ったので、カノエは一先ず息を吐いた。ヘヴンズハースの時でも、人に指示など出したことは無かったのだ。
あの頃、そう言うことは大体セラやその友だちがやっていて、カノエは指示通り動くだけでよかった。
「巧く行けばいいけど……」
【ま、何とかなるんじゃないの?】
アトマはこのお気楽さである。
カノエはと言えば、ゲームではないと考えれば考えるほど、負けられない緊張で手がじんわりと汗ばんでいた。




