Turn04 ユードラ/17
「ミクモ殿ォッ!」
獣はレイオンであった。
周囲の風景と長い金髪にまったく馴染まない、着流しに刀を帯びた姿である。
駆け寄るその手は、既に鯉口を切っていた。
「ちッ! コイツがレイオン=マグナスか」
舌打ちをしつつも、至って冷静にカノエを銃で突き飛ばすと、走り込みながら一挙動で抜刀斬撃するレイオンの刀を、ジゼルは辛うじて、手にした銃の銃身で受け止めた。
白昼の路上に響く剣戟音に、誰かが悲鳴を上げる。
場は一瞬にして騒然となった。
「貴様、クヴァルの間者か?」
銃を撃たせぬよう、刃を押し込みながらレイオンは問う。
「レイオンさん、その人は……」
「間者? 違うね。私はナインハーケンズ船長、赤眼のジゼルだ!」
ギロリと、ジゼルの竜眼が赤く怪しく輝く。
「くっ……ミクモ殿を追うクヴァルの頭目か!」
竜眼に当てられ、一瞬怯んだレイオンの隙を逃がさず刀を弾くと、ジゼルは空いた左手を空へ伸ばす。その袖口からフックの様なものが飛び出し、ワイヤーを牽いて左後方のビルの屋上へ飛んだ。
「船長ッ!」
「やれッ!」
屋上から数名の人影が顔を出し、銃を放つ。
銃からは銃弾ではなく光線が走り、撃たれた木製のテーブルに火が付いた。混乱に乗じて、屋上の手下がワイヤーを巻き上げたのだろう、ジゼルの体が宙を舞う。
「ははは! 交渉は失敗。時間切れだ。またな少年! 次は戦場で逢おう!」
赤い蓬髪をたなびかせて豪快に笑うジゼルは、瞬く間にビルの屋上へ飛び去った。
「ぷはぁ……はあ……はあ……この世界の人たちの交渉の概念、ちょっとどうかしてるでしょ……ホント」
カノエはげんなりとして、ジゼルの去ったビルを見つめていた。




