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Turn04 ユードラ/2

 大気圏再突入。

 偏向重力推進ベクタードスラストで加速を重ね、音速の数十倍の速度で宇宙を飛翔していたジルヴァラの空力過熱は、船体周囲にプラズマが発生するほどだが、モニターが赤く染まるほどの熱量も、エーテルシュラウドによって超構造体ちょうこうぞうたい化した骨格フレームと外装甲板ブルワークはものともしない。


「大気圏突入の知識なんてゲームのフレーバーぐらいしかないけど、モノともしないねホント……」


【六千年の間、宇宙船技術の頂点に居続けた骨格艦フラガラッハだからね。このくらい、余裕余裕って感じ】


「ゲームだったら“そんな設定”で済むけど、実際、そんなのありえるの?」


【それは君たち“人類”や、あたしたちストラコアも同じでしょ……銀河を旅するのに適した肉体の代替として生み出された骨格艦フラガラッハは、人類とストラコアの共同の拡張身体としては、理想的な構造物ってわけ】


「それじゃ骨格艦フラガラッハを作ったのは、神様か何か、とか?」


 実はヘヴンズハースでは、骨格艦の“最初の設計者(アーキテクト)”が何者なのか、明言されていなかった。もしかすれば、今後のバージョンアップで語られた可能性もあるが、その真相は闇の中だ。


【んー……そゆことにしとく?】


 アトマは偶に、本当に戦闘システムなのか疑わしい返事の仕方をする。


「……この現実が、急に疑わしくなってくるからやめてくれ。ほんと」


 神様が創った世界最強のロボット。そんなSFやゲームをいくらか思い出しながら言った。


【あ、成層圏を抜けて、対流圏に入るよ】


「着陸の準備をしないとか」


 操縦桿を握りなおし、モニターに改めて目をやると、そこには真っ青な海が広がっていた。


 何か、懐かしさすら感じる青い海。それだけ宇宙での体験が衝撃的だったということだろう。

 上も下も、どこまでも続く青に、カノエは安心感を感じていた。


「――どこか、陸は?」


【赤道上で光学湾曲が観測できたから、超級ストラリアクターがあるね。この惑星の首都がそこかな】


「いきなり首都の領空に入るの? 攻撃されたりは?」


 骨格艦フラガラッハ骨格艦フラガラッハでしか倒せない。

 他の方法では迎撃も防衛もできず、骨格艦フラガラッハで相対するしかない。それはつまり、核兵器などと同クラスの戦略級兵器だということだ。


 それは、カノエに取っては世界観を彩るキャッチコピーに過ぎなかったが、現実となれば話は別だ。

 そんな戦略級の機動兵器が、無許可で領空をフラフラ飛んで、何もないなんてことはありえない。


 しかし――


【領空? 惑星レンドラ勢力圏……って意味だと、ツァーリ恒星系全体がそうだし、今更だとおもうよ?】


 アトマの返事はにべもなかった。


 カノエの感覚は、ある程度発達した技術を用いて、大地の上だけで生活していた時代のものだ。

 ペルセウスアームまで広がった人類の生活圏において、自己の勢力圏の完全に哨戒することは難しく、多少のことであれば目を瞑られる。

 それが骨格艦フラガラッハとなれば尚更の事、警戒心も強くなり、安易な対応も取られない。


【――さっきサンバルシオンの外壁上で、クヴァルの骨格艦フラガラッハと戦闘していたのは観測されているだろうから、いきなり襲われることはないと思うけど】


「……大丈夫なの、そんなんで」


【レンドラ侯はシンザ同盟の人だから、たぶん?】


「そんな雑な……」


【前もって連絡艇を飛ばす暇も無かったしねぇ……まあ、あたしたちがクヴァルのナインハーケンズに追われてるのは、向こうもわかってるだろうし】


「とりあえず、味方と思って行ってみない事には仕様がないか……」


 海上で様子を見ると言う選択肢もあるが、先ほどのアーチボルト達に追いつかれては元も子もない。カノエは仕方なく地図が示す通り、惑星レンドラ首都ラーンの郊外にある宇宙港へ進路を取った。


「こちらから呼びかけたりしなくていいの?」


【その心配はないみたい。光学観測に反応、常態解析で捕捉。骨格艦フラガラッハだよ】


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