Turn03 アトマ/13
【でも攻撃されてるのに、背中も向けないでどうやってそこに】
「相手の攻撃の慣性を使って。踏ん張らないで、受けた分吹っ飛ばされればどうにかならないかな。宇宙なんでしょ、ここ」
想像でテキトウな事を言う。
【まぢで……難しい注文しないでよ】
今一つ緊張感に欠けるアトマだが、カノエもあまり余裕はない。
「いい加減にしろよテメェッ! まともにッ! 戦いやがれッ!」
延々、ただ受け下がり続けるだけの相手を切り崩せず、ついにアーチボルトと呼ばれたクロムナインのヘルムヘッダーが痺れを切らしだした。
「戦うも何も、そんな誘いに乗るかって。アンタさっきから、ずっとカウンター仕込んでるでしょ。見え見えだよ!」
とりあえず、時間稼ぎに言い返してみる。
ゲームではどちらかというと小心者で、煽り文句の一つも言ったことのないカノエだったが、宇宙を見て気でも大きくなったのか、そんな台詞が口を突いて出た。
【そうなの?】
「当てずっぽ」
ただの素人でないのなら、防御される連環斬撃を仕掛け続けるのは、それがよくある狙いだ。連環斬撃が入ればそれで良し、闇雲に反撃してくれば美味しく交差法と言う算段。
「な……ん、読んでやがったッ! お前ッ! 何者だッ!」
それが図星だったのか、アーチボルトが大げさなほどに驚愕の声を上げた。
「当ってたわ」
【このおにーさん、案外素直な人なんじゃ……】
「ガラはすごい悪いけどね」
「このクソガキがッ!」
実のところ、かなり丁寧に緩急を付けて連環斬撃を繰り出していたアーチボルトだったが、狙いを読まれていたことに動揺したのか、ここに来て大振りの斬撃を放った。
「いまだ! 吹っ飛ばされろアトマ!」
【はいなー】
気の抜けるアトマの返事だったが、仕事は的確だった。横薙ぎの斬撃を受けたジルヴァラは、鍔競った重力刃を軸にクルリとスイングバイ。
その回転の中、カノエは廃棄された外宇宙船が背後に来るタイミングで蹴りを放つ。
クロムナインを足場にした格好で、擬似的な跳躍突撃。
そのまま衝撃や回転の遠心力なども、アトマが偏向重力と動体慣性を巧みに操作し、すべて推力に変換しつつ、弾丸のような勢いでジルヴァラは宇宙を飛翔した。
「逃がすかヨ!」
すぐさまアーチボルトも追って加速。だが疑似的にせよクロムナインを足場に、跳躍推進を得たジルヴァラの速力には到底追い付けていない。
「おい、アーチボルト! 待てって!」
「どうする?」
残された二隻のクロムナインが顔を合わせる。
「どうもこうもな……あー、オレがアーチボルトのカバーに行くわ。お前ナインハーケンズに戻って、船長に状況を報告してくれ」
「おーけー。無茶すんなよ?」
「アーチボルトに言ってくれ。まったく……」
後ろからカノエとアーチボルトの剣戟戦を追っていた二隻のクロムナインは、そんな話を交わした後、一方はアーチボルト艦を追い、一方は宇宙の闇の中へと飛び去った。




