Turn02 セラエノ/23
「ジゼルさんって、船長と同性ですよね……?」
「そうだよ?」
「許嫁って……」
「クヴァルは同性婚も認めてる。遺伝子操作と増殖細胞で女同士でも子供作れるし」
「……ひ、ひええぇ」
頬を赤らめて頬を押さえるジュディを横目に間合いを窺っていると、モニターの向こうでゆっくりとシュタルメラーラが歩を詰めるのが見えた。
半刃半柄鉈槍を掴むと、エーテルシュラウドの供給を絶たれた、外装甲板の接続アームが砂糖菓子のように折れて、それを右腕に下げてだらりと構える。
鉈槍の切っ先が、足場になっているフィラディルフィアの表層外壁をガリガリと擦り、重力刃がエーテルシュラウドと対消滅して紫電がはじけた。
「――と、お仕事お仕事。シュタルメラーラが半刃半柄鉈槍に重力刃を展開しました。使えるんですかね?」
気を取り直したジュディが、怪訝な顔でシュタルメラーラを分析する。
骨格艦の、特に戦闘用の骨格挙動は、ストラコアに前もって組み込まれている。
半刃半柄鉈槍は長柄の上に特殊な形状の為、重力刃を発生させられたとしても、中型剣の艦上曲刀が主武装のクロムナイン系では、調整なしには満足に扱えないはずだ。
「どうかな。ハッタリを使うようなタイプじゃないし……ジゼルはどっちかと言うと、ハッタリでそのまま相手の頭をカチ割る、脳みそ筋肉なタイプなんだけど」
「聞こえてるよ」
「すみません」
セラエノの挑発には以前から辛酸を舐めさせられている。くだらないやり取りからですら、自分のペースに持ち込むのだ。
「そろそろ、アタシのモノになれ!」
震脚。
踏み込んだシュタルメラーラの右脚先端の前シ足とヒールのような踵のランディングフレームが、フィラディルフィアの表層外壁を踏み抉り、星間物質が火花を散らす。
最大斬撃の予備動作。しかし間合いはやや遠い。そして次の瞬間、半刃半柄鉈槍が“投げ”放たれた。
「お断り、しま――」