Turn02 セラエノ/20
居た。こちらに気付いてはいるはずだけど、略奪優先か……いかにも宇宙海賊らしい動き。助かるけど」
「エルアドレ全艦、いつでもいけます」
黒い骨格と藍緑色の外装甲板で統一された骨格艦エルアドレの他に、白と藍緑色、朱色を刺し色に描いた外装甲板を纏うセラエノの骨格艦アストライアの姿があった。
対する敵艦は、ジルヴァラの格納されているコンテナ艦直上。
ロープに繋がれた円錐台に端子を付けた様な物体――アンカーユニットの周囲に立つシュタルメラーラとクロムナインの四隻の骨格艦。
――骨格艦。
その肩部や碗部、剣戟の際に重力刃が斬り込まれる要所には、小型アームで接続された可動アーム保持式の外装甲板が装備されており、防御の際にはこれらが、盾や鎧のように損傷を受け持ち、船体の中枢区画と脊椎フレーム及び、|N字関節型四肢骨格構造《N・ボーンド・フレーム》を保護する。
船であった名残は胸部居住区に見られ、二段式稼働構造をした肩部に挟まれた宇宙艦の船体のような形状はスリムで、斬撃の際、肩と腕部フレームの可動域を確保する為だ。
そのため、百mの全長に対して、居住スペースはクルーザー程度と、大型宇宙艦艇としてはかなり狭い。
船であるならば本来、その船形の後部にあるはずの動力炉ストラリアクターは、その下に腰椎フレームで接続された骨盤に当る位置にある。
後ろに長い臀部動力区画からは脚部の他、翼のように接続されている可動式格納庫が付属し、大腿部の大型外装甲板と合わせて、膨らませたスカートや長い腰帯のようにも見える。
そして胸部居住区の上方、頭に当る部分にはセンサー類が表情を織り成す鉄面竜の“貌”、頭部艦橋。
骨格艦シュタルメラーラのそれが、モニター越しに、アストライアを誘うように睨んだ。
「全艦接地! 舐めてかかってくれたお陰で数は互角。ストラコアの優先攻撃対象確認。自分の相手は間違えない! 用意!」
「エルアドレ全艦、構え!」
「跳躍突撃!」
アストライアの全体を蒼いエーテルの電光が走り、エーテルシュラウドの偏向重力が、無重力合金鋼の骨格でできた脚に膂力を与え、直接推進よりも、遙かに強力な跳躍推進力を得て、骨格艦は宇宙を飛翔した。
被膜されたエーテルシュラウドが活性化する小さな紫電を纏いながら、四隻の骨格艦がアンカーユニットに陣取るナインハーケンズに迫る。
――激突。
三隻のエルアドレが半刃半柄鉈槍を騎乗槍の様に構えて突撃する中、セラエノのアストライアは表層外壁から上方向、敵ではなく星空の側に半捻りで跳躍していた。