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Turn02 セラエノ/12

「観測光の湾曲を確認! 超級ストラリアクターの偏向重力へんこうじゅうりょくを観測しました! 六時方向マイナス三度! 真後ろです!」


 ライゼンの通信からやや遅れて、レーダー分析官が緊迫した声で叫んだ。


外宇宙船スターシップ!?」


 超級ストラリアクターは、VOIDヴォイドにある転移航路ヴォイドレーンを安定航行するために必要な、物質の超構造体化ちょうこうぞうたいかと大質量推進に特化した存在。

それが支えるのは、全長三十kmの外宇宙船スターシップ


「来ちゃったか……」


 茫洋とした表情にやれやれと言った声を織り交ぜて、セラエノは吐息を吐いた。ほとんど溜め息である。


「真後ろ……同一離脱座標ですね。どこの船か確認を」


 ユーリが形式通りレーダー分析官に問うと、すぐに返事は帰ってきた。


「不明船のエーテルフラッグ、船籍旗エンサインはクヴァル超帝国……海賊旗ジョリーロジャーを確認。私掠船プライバティアです」


 外宇宙船スターシップフィラディルフィアが属するシンザ同盟と、セラエノの故郷であるクヴァル超帝国は、ペルセウスアーム既知星系の利権を巡り、緩やかな敵対関係にある。


 掲げられた海賊旗ジョリーロジャーが意味するところは、クヴァル超帝国の“認可”の元、こちらへの略奪行為の宣言であった。

 フィラディルフィアも海賊旗ジョリーロジャーは掲げていないものの、シンザ同盟の私掠許可は保有しているので、史書に記されるのであれば、状況は“星の数ほどある偶発的な遭遇戦の一つ”と言うことになる。


 超国家組織の認可の元に掲げられた海賊旗への返事は降伏の白旗か、交戦の赤旗か、二つに一つ。


「クヴァルの私掠船ドレイク……」


 ユーリが視線を送ると、セラエノは先ほどとは打って変わった真剣な表情で、戦術卓を凝視していた。


白旗しろはたは無いよユーリ。交戦旗あかはた送って。大体、戦闘艦のウチに離脱座標にまで被せて仕掛けてくるってことは……」


 レーダー分析官の報告は続いていた。


識別旗エスカッシャン、放射状に配された九本の鉤爪――赤眼の(カーディナル)ジゼル!」


「照合! 外宇宙船スターシップナインハーケンズ!」


 クヴァル超帝国最強の十天船団テンナンバーズの九。ジゼルのナインハーケンズはシンザ同盟側にもその勇名が轟いている。


 ざわつくオペレータ達の一方で、戦術卓を囲む三人――或いは二人と一基は、いたって冷静だった。


「せめて、惑星レンドラを巻き込める位置だと助かったんだけどね……」


「ユードラ様を巻き込むつもりだったんですか!?」


「ユーリってそういえば、レンドラ出身だっけ」


【あのクヴァルの海賊さん、ずっと、あたしのこと追っかけてたのかな?】


「回収した遺跡船レリックシップディエスマルティスのストラコアからアトマの情報を引き出したか……六千年モノの“ヒューレイ入り骨格艦(ボトルシップ)”なんて、好きそうなお宝だよね」


「クヴァル超帝国の最高戦力がなんて暇なことを……」


 真面目なユーリも、げんなりとした顔で言った。

 相手はクヴァル超帝国の中でも指折りの船団諸侯マグレヴ。その戦力差は、正直なところセラエノも余り考えたくないものだった。

 何せ相手は“星団公デューク並の財宝を溜め込んでいる”と言われる、外宇宙船スターシップナインハーケンズなのだから。


 そして、その船長、赤眼の(カーディナル)ジゼルは、セラエノには因縁浅からぬ相手であった。


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