Turn02 セラエノ/11
【そんなにのんびりしてたら、ディエスマルティスを襲撃したクヴァルの私掠船の人に追いつかれちゃうかもだねぇ】
「そ。ジルヴァラを探してるのは間違いないだろうし、とっととオリオンアームへ渡ってしまいたいんだけど……」
頬杖のままセラエノは厳しい顔をした。
「このあたりはクヴァル領も近いですから、警戒は厳にしていますけど、今のところは平和なものです」
「……ライゼン、そっちは?」
ユーリの報告を聞きながら手元のコンソールを操作し、資源採掘作業中のライゼンを呼び出すが、
「平和なもんですね。採掘作業飽きてきました。宇宙怪獣一つ居やしない」
とのことだった。
ちなみに、人類が外宇宙開拓に進出して六千年余、宇宙怪獣と呼ばれる類の生物との遭遇はまだない。
ライゼンの軽口が指揮所に流れ、笑声に場が和んだその時、指揮所に再び緊張をもたらしたのは、同じライゼンの声だった。
「――まじかよ……セラエノッ! 後ろだ!」
「え、なに? 宇宙怪獣?」
「違うッ!」
骨格艦は光学情報をストラコアが処理することで、超広域の索敵装置として機能する光学観測探信儀を搭載されている。
単純に言えばレーダー波などを使わず、光学情報をストラコアが画像解析と分析を行うことによって、各種対象を捕捉する光学レーダー――つまり、“眼”で見るのだ。
その光学観測探信儀が、偶々、等方性通信波の発信に合わせて母艦を照準した際、フィラディルフィアの背後に現れつつある、別の外宇宙船の姿を捉えたのだった。