Turn02 セラエノ/10
「まあ、無事に太陽系まで行って、アトマの用事が済んだら、その後はうちの船員として使えば良いんじゃないかな。宇宙に放り出すとか、奴隷商人や、研究施設に売るのも、さすがに寝覚めが悪いし」
「案外優しいんですね、船長」
ユーリが嬉しそうに言う。
「私をなんだと思ってんだ君は」
【セラエノは冷たそうな雰囲気があるしねー。あたしも用が済んだら廃棄しろって言われるかと思ってたし】
「クヴァル超帝国の元貴族様ですしねぇ……」
「シンザの人間は、クヴァルを鬼の住処か何かと思ってんの?」
「遺跡船ディエスマルティスで遭遇したクヴァルの船にジルヴァラが接収されていたら、“彼”、殺害されていた可能性が高いと思いますし……シンザ同盟内に不老種は少ないですから、やっぱりそういう誤解はありますよ」
「誤解のわりには、ナチュラルにひどい言い草なんだけど」
「種族は関係なしに、セラエノ船長は割と冷たい人だと思っていました」
そう言ってユーリは笑った。
「余計ひどいわ」
とりあえずで、セラエノは不貞腐れて見せた。
「まあ、ジルヴァラに眠る“彼”の処遇は、まだ先の話ですかね……先ずはオリオンアームに渡らないと。ユードラ様が大転移航路の情報をお持ちなんですか?」
「ユードラと言うか、ユードラが街で使ってるサンバルシオンって外宇宙船のリアクターにね」
「そういえば首都のラーンで使っているサンバルシオンは確か三千年ほど前の……シンザの開拓期の、結構古参の型ですね」
「三千年前ごろのシンザの船なら、ペルセウスアーム進出で頻繁に大転移航路を行き来してただろうし、大転移航路図の一つや二つ……どっちにしても、シンザの中央星団まで行って大転移航路図を申請してたら、何年かかるかわかったもんじゃないし……」
セラエノは溜め息を吐きながら言った。