Turn01 カノエ/3
そう言うわけで、新規追加された〈アトマ〉と言うインターフェースユニットも、闇商人スレインが販売する有料インテリアの一つだ。
陣笠を被り、デジタルゴーグルで顔を半分覆ったスレインが案内する広告ページをスクロールすると、商品説明が現れる。
索敵や戦闘ダメージなどのインフォメーションメッセージを、従来の機械音声の変わりに、この〈アトマ〉が喋ると言うインテリアらしい。
「ああ、女の子って言っても、ボブルヘッド人形よりちょっと大きいサイズか。左前方の計器類オブジェクトとの差し替えパーツ……」
庚は本来、対戦内容と結果を至上の楽しみとする“スパイクプレイヤー”ではなく、遠い未来の宇宙で、巨大ロボットのパイロット気分を存分に楽しみたい“フレーバーユーザー”だ。
ヘヴンズハースを提供しているスレインズウォーカー社の方針では、ゲームに対して真摯なスパイクプレイヤーと、クラウンシェル筐体が与える体験を愛するフレーバーユーザーの二種類のユーザーを想定しており、そのどちらのユーザーにも快適なサービスを提供するとしている。
その為か、ゲームに影響する骨格艦の強化パーツや武装の追加と、この〈アトマ〉のような内装や、骨格感の外装が交互に販売される。
〈アトマ〉の種族欄には“ヒューレイ”という聞きなれない種族名が記載されていた。
ヘヴンズハースの世界には、人類は自然種、不老種など、幾つかの種族が存在するが、これらは基本的に太陽系人類から派生したものだ。
異様に小さな体に、骨格艦の骨格フレーム内で、油圧や伝達物質代わりに利用される流動金属を、素材としたボディスーツを纏っていることや、戦闘ナビ用のアクセサリであることから考えても、骨格艦の制御システム・ストラコア由来のキャラクターのようだ。
「――追加エピソード“ヒューレイ紀行”も同梱。これはストーリーミッションかな」
ストラリアクターの中枢システムにして、高次精神生命体ブラフマンの眷属であるストラコアは、ヘヴンズハースの世界観にも深く関る要素だ。
追加エピソードの注釈にも、六千年前、骨格艦や外宇宙船が誕生した切っ掛けである高次精神生命体ブラフマンの、背景ストーリーを垣間見ることが出来る、とある。