Turn02 セラエノ/5
「ペルセウスアーム=シンザ同盟リューベック星団ツァーリ恒星系外縁天体、準惑星α極天座標に浮上しました」
それらを、フィラディルフィアの航海士であるユーリが告げた。
「二百五十宙海里内に、要求を満たす採掘可能天体を三点検出。対象をAからCに設定」
オペレータにより、戦術卓の地図上にピックアップされた小天体にA、B、Cのタグが振られる。
【セラエノ、どれを掘る?】
ゲームでカードを切るような気安さで、アトマが言った。
「装備の消耗は少ないし、鉱物資源にはまだ余裕があるから、水素系を優先して」
【じゃあ、Aで】
アトマが当たり前のようにオペレーションに口を出しているが、本来はフィラディルフィアのストラコアへ、専用言語を介して行うやり取りである。
「対象資源小惑星Aを目標に設定。機材砲班、掘削用アンカーユニット、発射用意お願いします」
「よし。始めちゃって」
船長のセラエノが作戦の開始を告げた。
セラエノは少女のようにも見える外見だが、歳はすでに百と少し。しかし不老種の基準であれば、それでもまだまだ若年だ。
外宇宙適応化以前の太陽系人類の末裔となるシンザ同盟の自然種は、通常医療による延命に成功しているが、肉体の老化を完全に克服するには到らず、通常、二百から三百年ほどで老衰による死に至る。
一方、不老種は遺伝的老化因子の除去に成功し、世代間でもその遺伝特性を獲得した、数少ない遺伝子操作種の成功例の一つ。
長い耳は老化因子抹消に起因すると思われる異常成長であったが、それは不老種という新しい種の証としてそのまま残された。
そういう種である為、セラエノは指揮所の中では年長者の側。
他にもセラエノに付き従って亡命した数名の不老種が居たが、その誰もが若々しく、そして耳が長かった。