Turn01 カノエ/13
頭部艦橋、胸部居住区、臀部動力区画、それらを繋ぐ脊椎フレームに、N字間接を持つ四肢。
船体各所を盾や鎧のように守る可動式の外装甲板、そして腰に翼のように生える可動式格納庫。
それらを各々骨格フレームで接続し、組み上げた異形の人型船、それが骨格艦だ。
“人の形を機械に置き換えたデザイン”ではなく、“機械がヒトのように動くデザイン”と言うのがコンセプトとのことで“鎧を纏った骸骨騎士といった風貌に対し、N字型をした四肢構造や長い首が、直立した獣や竜を髣髴とさせ、大地を走る動作などは人型というより肉食獣や恐竜のようと言われる。
必要可動域の大きい肩や股、膝や肘などの関節各所は、N字型をした関節構造で接続されており、N字関節の中央軸が柔軟に可動、捻り回転などを行うことで、間接機能とサスペンション機能を両立している。
通常、全高百m、全装備重量千五百t超の骨格艦を、細い骨格の可動関節部や細いシ足の足先で支える事は、既知の材料工学では不可能だが、ソレを可能にするのがエーテルシュラウド。
エーテルシュラウドによって超構造体化した骨格フレームは百m級、自重約千五百t程度の質量であれば難なく吸収し、支えてしまう。
超重力空間の超重圧にも耐えうる骨格艦ならではの構造だ。
N字関節を可動させて一歩を踏み出すと、関節がサスペンションのように少し沈み、自重による応力や慣性を吸収し、百mの巨体が無理なくスムーズに歩行する。
「さて……と――“索敵”」
骨格艦そのものの操縦はシートに付属する操縦桿とスイッチ、スロットル類で行うが、一部インターフェースは音声入力にも対応している。
【広域観測を開始します。光学情報解析開始。敵艦影を捕捉。北東十五km】
先ほど設置したばかりの〈アトマ〉が、機械音声で応じた。
レーダーマップに光点が数秒表れ、そして消える。
骨格艦を覆うエーテルシュラウドは、通常のレーダー波などに対して、隠蔽能力を有している。その為、外宇宙船や骨格艦は、光学センサーを用いて集めた映像をストラコアが解析し、索敵する方式を採っていた。
しかし、ストラコアの出力が光学画像の解析処理に取られる性質上、戦闘時や、長距離での連続した解析捕捉はできないなどの欠点がある為、ゲーム中では能動的にプレイヤーが索敵を指示する必要があった。
その光学観測探信儀が指し示した地形は――
「……やっぱり渓谷か」