Turn01 カノエ/11
「初めはアクセサリでも贈ろうと思って、買い物行ったんだけど、小物のセンスって君の方が良いしさ……」
「だからゲームのアクセサリって、駄洒落?」
「そこで笑わないと笑うとこ無いよ?」
「……本音をどうぞ」
「プレゼント考えるのが、だんだん面倒に……」
言いながら、世良は露骨に目をそらす。
「正直でよろしい。もうちょっと女子力とか、そういうの、捻り出そう?」
少しは可愛いところもあるのではと思ったが、
「女子力でゲームに勝てるなら、幾らでも捻り出せそうなんだけど」
やっぱり世良はただのスパイクプレイヤーだった。
「うーんこの、どこまでもスパイク脳……とにかく、でも――ありがとう。見送るつもりだったから結構嬉しい。さっそく取り付けてみるよ」
世良と雑談をしているのも楽しいが、今は筐体の中、しかも待機モード中なのでサクサクと作業を進める。
この辺りは店の筐体を共有してプレイするが故の、アーケードゲーマーの規範だ。
インテリアウィンドウを開き、先ほどプレゼントボックスから出てきた〈アトマ〉のアイコンを、コックピットのインテリアスロットにドラッグする。
――ガション――と言うSEと共に計器類の映像が、電磁パルスが走ったようなデジタル演出と共に切り替わり、そこに小さな菫色の髪と碧眼をした妖精と、彼女用の座席が現れた。
「やっぱり私に似て、可愛いね」
「その妙な自信はどこからでてくるんだ」
そう言ったものの、よく見れば、やはり世良に似ているように感じる。
【御用でしょうかヘルムヘッダー】
視線を認識したのか、〈アトマ〉が世良に良く似た声質の機械音声を発した。
「声まで似てんの」
「似てる? あーあー、“御用でしょうかヘルムヘッダー”」
言うと、世良が大仰に物まねをした。
「あー、はいはい。ソウデスネ――折角だから戦闘ナビのコールも〈アトマ〉に変更してと……準備いいよ」
遊んでいる世良を尻目に、必要な設定を終わらせる。
「つれないなぁ――まあそんじゃ、行きますか」
庚の準備が済んだのを確認すると、世良は目を閉じて、指と首を軽くストレッチ。
その綺麗な目を開いた時には、再びスパイクプレイヤーの顔になった。