Turn01 カノエ/10
ゲームはまず、この骨格艦の胸部居住区から始まる。
全高百mの骨格艦だが、胸部居住区は前後で全長二十m弱。縦幅も十m強で、その内部に作られた居住空間と言うと、海洋クルーザーの室内程度の広さ。
もちろんプレイヤーは実際に座席から降りて歩き回れるはずも無く、部屋は画面上に映し出される映像でしかないが、ここでセッティングや招待、メッセージのやり取り、アイテムのトレードなどが行われる。
庚の胸部居住区には、本棚やテレビ、ソファ、寝具に到るまで。課金で買ったものから、イベント報酬から、様々な家具がキチンとレイアウトされて並んでいた。
クラウンシェル筐体の脇に設置されている専用端末や個人用タブレットで、胸部居住区内を弄ることが出来るのだが、以前、その操作を後ろから見ていた世良は、神妙な顔をして、
「乙女か、君は」
と評した。
一方、その世良の胸部居住区が、手に入れたイベント報酬やトロフィーを乱雑に並べているだけと言う有様だったのを思い出して、クスリと笑いが漏れた。
「何を笑ってるんだ君は」
タイミングが良いのか悪いのか、世良が通信を繋いだらしい。
画面右にウィンドウが開いて、眉をひそめた世良の顔が映し出された。
「ああ、ごめん。思い出し笑い」
「何を思い出したんだか。あ、トレードいい?」
つられてか、顔が綻んだのを少し気にして、横へ視線を流しながら世良は言った。
「トレード?」
返事をするまもなく、プレゼントボックスマークのアイコンが――ピコン――と可愛らしい音を立てて飛び出た。
「今日、君、誕生日じゃないかい?」
――そう、だっただろうか。
考える間もなく、反射的にプレゼントボックスに指でタッチする。
この時間は、さっき朱音さんに最大で取って貰ったとは言え、五分しかない。
だから見知らぬ他人でもない限り、知り合いからのプレゼントボックスは直ぐに開くのが慣習だ。
ボックスを開くと【インテリア/〈アトマ〉を入手しました】のシステムメッセージ。
「あれ、これ……」