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〜666と0〜

横になって身体を休めると言うのは…退屈で嫌いだ。俺は、静寂に包まれると不

安や悩みが浮かんでくる体質だし、あの禍々しい声を脳内でリピートしてしまう

から。…かと言って、無駄な体力の消耗は避けたいよな。


「陽、寝れない?」


「さっき、爆睡してたからな…。」


「呻いてたのに…怖いの悪夢を見るのが?」

怖いと言えば簡単、さっきの俺なら一言で事足りたかもしれない…今は恐怖心だ

けが俺を蹂躙ことはない…その分、何かに縛られている複雑な気持ちだ。


「瞼を閉じると…兄貴が映るんだ。」


「陽のお兄さん?」



ウザいくらい驚嘆してテントに突撃してくるアキナンに制止をかけた。


「ちょ…チョイ待てぇ!お前は、知ってんだろう?俺の個人情報無断使用したん

だから。」


「…知りませんが、何か?」


「兄貴もう死んでるんだ…。」


「そうですか、すみませんでしたね。」


「ごめん陽私そんなこと知らなくて。」


「なんだよ、暗いぞ。兄貴一人の事くらいで。」


明結奈は、未だに「でもっ…」とうなだれていた。アキナンは。


「さすがですね、帝王になられる方です。聡明でお心が広い。」


「テメェは、いっぺん萎びろ!」


またそれから二時間が経過し、俺の知る街は日が傾いている頃だと思考を巡らせ

つつベッドに身体を俯せにしいると。


「避難しろぉぉ!!退去だー!」


突如、拡声器でボリュームアップした男の声が建物内を反響する。

「陽さん、逃げましょう。」


「何がどうなってんだ?」


「非常事態なんですよ。アレが…とにかく一刻も早く離れましょう!」


アキナンの取り乱しているのは、短期間しか触れ合ってはいないが早々あるよう

に思えなかったし、疑う気も無い。ならば!


「逃げるぞ。」


「はい。」


「明結奈は?」



「先駆けさせておきました、誰よりも早く。」


「そっかThank you。」


信じた…でも、俺は何か違和感を感じた。逃げ出すには、時間がかかるだろう…

明結奈の性格上俺を待って行くはずだ、それにどうやって察知したんだ?どんな

証拠がある?


「アキナンお前本当はどうなんだ…明結奈はどこだ!??」


「やだなぁ最初に逃げたって僕が申し上げたじゃありませんか。生からね!」


目の前のアキナンは、殺気に卑劣さが混ざり半狂乱の詐欺師に酷似した化け物に

見えた。

「貴様…どこにやった!明結奈をどこに…。」


「彼女は…邪魔なんですよ正直。」


言葉を失った、アキナンは今、殺気と卑劣が混ざり半狂乱の詐欺師の皮を被った

化け物に見えた。


「お前ぜってー赦さねぇ!」


「そうですか、赦すも赦さないも勝手ですが、彼女には迫っているいるんですよ

死へのカウントダウンが。」


怒りで飽和状態の脳細胞たちも、明結奈の命が危険に曝されているのを再確認し

て冷めた。


「クソッ…!」


待ってろ、絶対助けてやるからな。


しかし、現実は氷のように冷たい…明結奈に迫っているのは変態宗教者でも隻眼

の殺人鬼でもなかった。黒く生気を感じられない姿…黒光りするマントに覆われ

身長を明らかに越した大鎌を四肢の如く操り振るう…。


「死神!?」


「どうかなぁー。」


「喋った…。」


「死神が口を利かないとでも?そもそも、死神ではないしな。」


死神モドキは、フードを軽く後ろにずらした。そこに仄かに明るい中で見えた顔

は…。


「…兄貴?」


「御名答、でもハズレ。ほいッ!」


「オわッち?!」


兄貴が、投げて寄越したのは多少大きい着色料多量(特に赤が…『火』の地だから

?)のド派手飴だった。


「戦利品だ。」


「明結奈は?」



「そうソレだよー…兄ちゃんにはなんでも隠さず報告しろって―。」


「明結奈はどこだって訊いてんだよ!」


「………やれやれその怒鳴り方からして、まぁだ騙されたままなんだ。フェイク

だよ。」

兄貴は、片手の鎌を岩影に佇む人型の…。


「明結奈!!」


グシュッ…………


背筋に戦慄が走った。スローに鎌が動き刺さる瞬間まで…何度も何度も何度も…

…色も既に白黒で…。


「アアァァァア…アレ…?」


しかし、そこには満足そうな笑みを浮べる兄貴が胸の辺りから綿の飛び出した不

出来な人形をブラブラさせていた。



「言ったろフェイクだって……鍛えろよ『力』も精神も!」


「じゃ、逃げたのか…アキナンの奴。」


「感動的な再会にしたかったからな。」


「って、大スケールのドッキリだな。」


「悪いけど嘘も此所までだよ。こっからは、本当だ…俺が傍観者としてヘルプし

てやる存分にな!」


ヘッ?どこらへんからどのへんまでがドッキリ?


グルァァァアァアア…

「相手は神獣…獣化リミットから解き放たれた状態だ、引き締めて行け。」


「聞いてねぇー!!!!」

咆哮はあっさり方向を変えてこの空間内を咆哮した…ギャグみたいになっちまっ

た。


神獣とか獣化リミットとか言われたところで、解らない。この世界では、俺の知

る理論やら原理がことごとく粉砕されちゃうんだろうな。素人で…地位で例える

なら勇者の卵。


「陽、邪念は命とりだぞ。戦いでは、目の前の敵だけに集中しろ!」


「観覧者は、静粛に。」


嘲るように鼻で笑い飛ばす兄貴独特の癖が、温かい。


「言うようになったな泣き虫がクックッ。」


「兄貴こそ変わってないよな、その笑い癖やめれば。」


ギギィィィィィィィィ―ガゴッ!


「一名様ご案内だ。」


その声に合わせるように三十メートルはある魔界?への扉が開いた。


「あれが神獣…。」


「『666』だな。」


『666』?スロットだったらあぁあれは777か…邪念は捨てろだよな。


「名前あんの?」


「『666』ってのは、あくまで暫定だ…あいつに特定の名前何かない悪魔さ。」


「宗教的な奴?」


「関係ない、外観や特性が似ていたりするだけで名前は架空だ。神や天使そりゃ

悪魔まで様々いるがお目にかかった事ないだろ?俺たちの先祖の誕生する以前か

ら神族はいるんだ決めるのも人間じゃなくて神族なんだよ。」



いわゆる、根も葉もって事か!


「トークに熱籠ってるけど…襲撃してこないのか?」


「詳しくは、後だ。あらすじで述べると、獣化リミットってのは神獣に内蔵され

た力に器が耐えられなくなり神獣が殻から脱皮する儀式みたいなもんだ。その反

動で暴走してしまう、何度かそれで世界は絶滅したとか。」


勝算無しだろ!無駄に時間を費やしてる気がするんだけど…逃避するのには十分

な時間あったよな。


霧も扉から湧いてきて俺の足元を湿らせる。

「闘う手段は、武器は?」


「さぁ、千差万別人の数だけさ。武器はココだ。」



ココロか、ハァ根性論かよ気合いだけで人類の絶滅が停止したりしたら世界市民

も祈れば神も敵じゃないだろうよ。


「天性だよ、力を宿した者の。」


「天性?才能に近いものか?」


「魂にインプットされた運命だな、力をつかうことは。丁度いいなぁー…デビュ

ー戦だ。」


「抜け道なしの試練か。」


何だかんだ言いつつも覚悟が決まれば、精一杯やる。大切な人や学校を守るため

にも…主が誰か判らせてやるんだ!


決心したが…倒すプランなど考えていない。


「陽、アイツは通常じゃ強靭な殻に覆われているが…奴は脱皮中だ…どういう意

味か分かるか?」


「中身は、弱体化してるってことか?」


「おしいなぁ、殻だよ殻。自分を護衛する殻は確かに堅いが…不安定でな。」


蝉の抜け殻ってどんくらいの硬度だろ。


「お前の妄想が通用する世界じゃないんだよ、真面目にヤらないと死ぬぞ。」


「だぁー、答えに誘ってるつもりか?俺の想像が無価値なら、教えてくれよ。」


「悪いが、叩き込む時間は残されてないみたいなんだよな!」



「なっ…に!?」


足下から鳥肌が這い上がって来る、この身体(うつわ)に永訣しそうだ。


〈汝が…英傑……ガイヤの核の均衡を保ちし者か…〉


「いや…それはない…。」


〈否…我々を祠に封印した…神族が……封印を解きし者が…秩序と均衡の頂きに

君臨すると予言した…〉


そんなの…とばっちりだ。人間の先祖が二足歩行する前からいる奴等が定めた小

言を忠実に聞いて枠に嵌まってるなんて、神獣も官僚的だよな。


〈導きたまえ…我々の理想郷へ……『イメージ・カテドラル』を……〉



…泣きたいよ。変なこと言い出しちゃったな、神獣だか聖獣だか北でも南でもど

っち向いててもいいが、拍子抜けした。


「つまり…仲間になれって?」


〈我々を汝の傘下に…汝に跪くのです…〉


「よく分かんないよ、難しくて俺古典とかに弱いんだよねぇ。」


〈我々は、貴方の同志になりたい。〉


エンゲージリング渡されたら、ゲイ…いや死んでもない展開だ!


〈忠誠を誓う証『ドラゴニックアイ・リング』。〉


「婚約の証…今のは聞かなかったことにしてくれ!忠誠の証か…じゃあ、契約成

立っと。」


〈貴方に仕えし化身はあと七体…………。〉



って、エェェ闘いは?交渉成立したのか?まさか、あれが神族の流儀とか?今更

プランBとかフォーメーションVとか唱えても…遅いよな。なんか勿体なかったい

ない…何より実感が湧かないのだが。


「兄貴ゲットしたぜ…って兄貴?」


兄貴の影も足跡さえない、虚空が広がる寂れたキャンプ施設…。

ゴシゴシ目を擦って目を温めても兄貴の姿は形跡すらない。


「幻想…記憶の夢?」


「陽さぁ〜ん、無事ですか?」


「おっ前、俺を罠にかけやがって!」


「そ…それは!?」


「そ…それは!?って話を変更しようとしても無駄だかんな!」


「…それは…零紋章。では…やはり。」


いきなり駆付けるなり失礼な野郎だ…貰った印を見ても褒めないし、青春してる

男の上半身を眺めるなんて。


「あんだよッ!!」



「タトゥーが、森羅万象の力を宿す『ヴェーネス』が…。陽さん、終始一貫話し

てください。」


「場所移してからでいいか?息が詰まるからな。」


「うーん、いいですけど。」


やっとのことで、試練の間から足を遠ざけた。


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