表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

〜約束〜

「あぁ…初恋が散ったな。淡いけど…やっぱ切ないってか空しい様な痛さ。」


「軽弾みなこと言ってしまい、上っ面な状況だけ与えてしまい。本当に申し訳あ

りませんでした。」


アキナンは、髪が乱れる勢いで頭を垂れた。

「いいんだ、俺が悪いのさ全部な。露骨に質問重ねてプライバシーを侵して機嫌

を損なわしてしまったのは俺自身の性格と癖が巻き起こした。だから、謝るなっ

て。」


それからまたカレンダーの罰点が増え、今年のカレンダーに世代交代の日が来た


「大晦日かぁ、楽しみだな!」


「オオミソカ?」


「そっか始めてだよな、年越し。」


「あぁ年越し…デヴィラシスのことですか。」


「デヴィラシス?」


「はい、今年お世話になった神像を魔法で葬る儀式です。」


「お世話になったのに仇で返すか!恐ろしいな、神社で大仏破壊してみ、奈良の

大仏とかボォンってさ。」


「……………。」


「って嘘だぞ。本気で破壊に目覚めるな。」

なんとか牽制しつつ、時計を見た。


「もう、十二時過ぎてるし何か食べるか。」

「ええ、ママさんが作り置きしてくださった料理を食べましょう。」


「ハァ…あの親たちはどこで何やってんだかね。」


「年越し兼クラス会でしょう?」


母さんも親父も同年で高校時代の付き合いから結婚した御陰で、クラス会の時に

なると両方留守にしてしまう。一度だけ、俺が高熱を出した日はさすがにどちら

もキャンセルしたが。


「そういう意味じゃなくてさ。まぁいっか食おう。」


「日本には、素晴らしい食べ物がたくさんありますね。」


「そうか?グルメな外国人みたいなこと吐かして。」


雑煮自体白菜と人参と蕪を煮て醤油と塩とダシで味付けして中に餅を投入した単

純質素な料理だ。ってなんで明日食べるものが今…。

「手抜きしたなあのババァ!」


でも、白菜に張り付いている餅を眺めて胸中がざわめいてザワザワした。


「俺ちょっと出かける。お前は先に貪りついとけ…。」


コートをハンガーから乱暴にもぎ取りながら玄関のノブを捻り家を出てアスファ

ルトを靴底で蹴った。


バン―ドンバサッ


「きゃ!」


「す、すみません!では、失礼します。」


また、走り始めた記憶の地図を頼りにして豪邸を目指した。


ピンポーン


『…………………。』

沈黙しか続かない。柵状の門もうんともすんとも言わない。


「思い過ごしか…あぁしょーもなっ。帰ろっと。」


帰ってきて玄関の扉を開けると、見覚えがあって信じがたい靴が礼儀正しくは作

法通りに揃えて置いてある。


「えっ…まさか!クソアキナンの奴騙そうとしてるな。」


「おかえりなさい。」

でも、そこに居たのは紛れもない純度一○○パーセントの小高明結奈がいた。


「ヘッ?なんで明結奈がいるんだ?」


「まだ臍曲げてるのぉ?それにぶつかっておきながら『なんでいるんだ』はない

でしょう。」


しかめっ面で叱りながら器用に口元が笑っている。


「勝手に入ったのか?」


「いや、陽のお父さんが『どうぞ』って。」

ますます変だ今父母共に外出中で、深夜を過ぎなければ帰ってこないのに。親父

が?


「ちょっと俺二階に言って片付けて来るから。チョイ待ちな。」


今…餅つきの騒動のこと謝ってる不思議さじゃかなかった。


「おい、アキナン明結奈入れたんだろ?」


「ええまぁ。」


曖昧な返事に束ねて聞いた。


「父親のフリして明結奈を家宅に入れたんだろ?」


「はい仲直りにと思いまして。」


奇々怪々にも変装魔法があるとは少々驚きと感動を表すが。心の準備が整ってい

ない。


ガチャ


「ねぇ、入るよ。」


今度はお嬢様が礼儀マナーのノックをせずに部屋に進入してきた。

「どやっ、ビクッた。」


「うわっ凄いね。ギュウギュウだー!」


「そんな天然記念空間見る目で見んなよ。」

「ごめんね、あぁこれ綺麗な砂…どこの砂?」


「さぁ、子供時のだからな。って危ない。」

明結奈の指からすり抜けた小瓶は回転しながら床に叩きつけられ割れた。と思っ

た。


「あれッ?時間が止まってる?空間離脱か?」


「また、屈託のない空間ねぇ。夢?」


「あぁ多分また寝てれば、アキナン頼んだ。」


なんの変化もない…なんで。


「今回は、やめておきますよ。」


もうなんでも必要なくなった。魔神空間は一つではなかったという事態に気がつ

いたからだ。


「嵐の予感。」


「ふぇぇ夢じゃない。」


ほっぺたを抓りながら現実前に目を白黒させる明結奈の表情に懐かしいに似たか

わいいが蘇ってきた。


「魔法使えるんだろ?超能力みたいな代物がさ。」


「知ってたんだね。おみとうしだったんだょね?」


「一応は…俺も詳しくないけど『力』のある者だけが許された空間だとか。」


「じゃ、陽も!?」


「みたいな。」


「にしてもなんで俺の部屋が魔穴と化したのだ?」


アキナンは俺の耳元で、説明を開始した。


「蒸し返しますと、片付けの際あなたが指揮した位置に置いたものを紙上に並べ

ると。」

「星形だな。」


「そうです逆星です!実際は十一のものをずらしましただからこそ星形としては意味を成

していませんでしたが彼女の持った小瓶を真ん中に落とした瞬間魔法陣として機

能しました。」


「聞いてないぞ。魔法陣なんてな。大体どんな機能なんだよ。」


「これは魔神空間を集める、皆が嫌がる法陣です。」


「ふぅーん…でっ?」

「今から魔神空間が増加するのを防ぐために何かを移動すのが先決でしょう。」


聞いてすぐに実行した。がしかし、残った魔神空間は嫌にリアルに五つと数えらる。


「あれは一挙にお披露目されちゃうのか?」

「言い回しはよくわかりませんが、複数の魔神空間には具現化速度に差がありますので。一気に攻めてくることはないでしょう。」


「そうか、なら一番近いあれから潰しますか。」


「えっアエッ?」


明結奈は眉を八の字にしていたが。俺は、空間に近付くと空間は膨張して混ざりきらない色の中に混沌していった。


「さっさと終わらせるぞ。ブルーインパクト!!」


拳からの爆発系のレーザーを照射して一体目の霞と怪物の間の幻を粉砕した。


「っと!」


「早かったですね。では次はこちらです。」

「あぁだいぶ『力』の扱いに慣れてきたよ。」


駆け出そうとすると、

「あっ、待って下さい。空間が歪んでいますよ。」


「何か肥大化してないか?」


「えぇ、突然接続したため色々な妄想や想像もつなぎとして混同してしまった模

様です。」


「つなぎって?」


明結奈はあたふたしながらも詰まらず説明した。


「ほら、肉団子とかに纏めるために入れる片栗粉みたいなのをつなぎって言いま

す。」


「つか、それは家庭科で習いました。なぁその伸縮自在の棒どこから出した?たまに先生が使ってるよな。」


「冗句はやめて下さい。これは深刻ですよ。空間が歪み混ざると言うことは想像

者の手から離れるていうことですよ。」


「離れるって?」


「まだ分かりませんか、今まで押さえられていた闘争心が宿主から別れ…暴走する。」


「ぼぼぼぼ…暴走だとぉ!」


自分でも情けない声が出てしまった。


「制御されなくなり、複雑な形態に限界がきたのです。だから、奴等は安定する術を求めて合体します。」


空間は収縮したり膨張するを繰り返しながら結合して大きさを増す。


「キマイラッ!?」


パーツごとは違うが、鷲や竜、蛇、獅子、牛などが一つの生命体として活動し始めた。


「ブルーイン―ッ!」

蛇が牙から明らかに毒を出しながら、高速でムチのように降かかってきた。


「ジッとしてなさい。照射する前に殺られたら意味ないぜ。とにかく速い。」


クソ野郎全部が自己操作で独立した行動するせいで、動作が読めない。


「しかし、奴の核は一ヵ所に。」


「でも見えねぇ!って危ないッ!」


ビチャァァァ


肩から鮮血が花火の様に噴き出した。明結奈に襲いかかった蛇の毒牙に貫かれ意

識が一瞬揺らいだ。


「っでもよぉ。テメェらの動きを封じられたぜ。」


「陽?血が、血が止まらない。」


「陽、見えてますか!無理です。そんな身体で、撃てば…命が危険に曝されます

。ここは僕が―。」


「俺が自分で決めたこと、守るってな。大切なものを自分で守れるくらい強くなって帝王になってやるってな。」


「ソレイユパニッシュメント」


黄金の線光が偽キマイラを葬り去った。


パリーン―ドタッ


「陽さん陽さんしっかりしてください。暴走していた分、毒の力が弱まっている。#$#%%&$\&#$…。」


微妙にアキナンの神髄を垣間見た気がしたが目は徐々に視力を失って暗闇に墜ちた。


明くる日、俺は目覚めたのだが、高熱にうなされていた。母さんも帰宅してい

て何やら一階でゴタゴタと忙しく動いている。視力を失ったと言うのはドッキリ

みたいなもので意識を失うを比喩化したものだ。


「眩しい。」


「陽さんやるぅ。御目覚めになられたら急がねばなりませんね。」

「アキナンお前が毒を中和してくれたんだろ?ありがとう…で何を慌てふためいてるんだよ。」


あっけらかんとアキナンは考えを言葉に変換した。


「儀式ですよ。あなたは言いましたよね、守るために帝王それも、『力』の頂点を極めると。」


「俺そこまで言ってないぞ、さらにそれは毒の効力でだろ!大体口約束なんて…。」


「魔法法度第四十八条にも、口約束は血判と同じ価値を示す、と。」


「お前らの法律なんて知らねぇょ。」


「しかし、約束は約束ですので。王位継承の儀式に。」


「誰が許可すんだよそんなの。」


「魔鎖維委員会ですよ。最高責任者ですから。」


「まさい?原住民かよ!」


熱も忘れてアキナンに向き直った。


「でもっ、帝王になっても何するんだ。」


「学園の敷地や…世界全体の安全の調和や均衡を保つのです。環境から人間関係までを。」


「ハェ、俺は神じゃないんですよ。環境や人間関係までだとぉ!術が理解出来ねぇ!」


「そのために元帝王候補アキナン=ヘルデーナ=ホルスタインがいるのではないのですか。」


「元帝王候補!?つか長い名前だな。お前立候補したなら最後までやれよ。」


「…それについては触れないでください。タブーでアンタッチャブルなんです。」


「そうか…ァァァアア俺としたことが。」


「何度も言われても、撤回しませんよ。」


「寝てる間に、カウントダウン逃した。」


「嗚呼、大丈夫ですよ。僕と彼女で祝福しましたから。」


「二人でってかなに人が寝込んでる時に楽しく三、二、一って数えてやがる。」


「冗談ですよ。彼女陽さんのことで頭がいっぱいみたいでしたから。」


カチャ


「陽起きた?うん熱も少し下がったみたいね。お腹空いたら、何か食べなさい。お粥作って置いたから。」


「サンキュー。」


「あと良い子でママ助かった。おまけに可愛いじゃない。同級生なんてママとパパを意識してるのかしら。」


「なんのことだ…。」

「はいはい。」


ガチャ


「ったく、相槌だけうちやがって。」


母さんの置いていった梅干し入り茶を飲み、口に梅干しを放り込んで。


「うまい、病み上がりには酸味と塩分が一番だ。」


「こちらも飲み物みたいですが…?」


「飲んでみろよな。」

「宜しいのですか、では!」


「どうだ!」


「カハッこれは毒ですか。」


「ハッハッハ、騙したみたいで悪いな。これはさ、一年間の健康を祈って清酒だ

か日本酒だかに薬草を漬け込んで置いためでたい酒なんだ。」


「そうなのですか?失礼しました。」


「いや別にだって俺も好きじゃないし。」


「エッ?」


ガチャ


「母ぁさんまだなんか用ありか?」


「お粥届けに。」


「どうぞ…え゛。」


「ほら、お粥作ったから食べて欲しいなって。受け付けないならいいけど。」


「いいや食べる、うん食べるぞ―ゴハッ…イテェ。」


なんと粥を作ったのが明結奈…じゃなくてなぜにうちに?


「陽何してるの?」


首を左右に力の限り振っていたら、壁に食いついてしまった。


「アキナンさんも、どうぞ。」


アキナンにも!?耳を疑ったよ鼓膜を尋問にかけたいくらい。


「バレちゃいましたよ。陽さんを助けるのに必死で身を隠すの。」

「迷惑かけたな。」


「謝らないでください。それによって色々とバリエーションが増えましたから人間関係が…。」


「目的はそっちか。前言撤回だー!」


「アーン。」


「あぁーん。」


明結奈の初アーンに従わない理由はないし、何より笑顔には敵わない。


「近くだけど、初詣で行こうよ。今日まだ行けてないから。」


「陽、病み上がりなんだから。寝てなきゃ…きゃッ!」


明結奈はベッドの角に躓き俺の体の上に大の字に倒れた。至近距離過ぎる触れ合いに互いに硬直状態が続く。


「明結奈案外軽いんだな!」


「ならもう少しだけ、安心させて。」


「…うん。」


明結奈の髪を優しく撫でた、自分と明結奈の存在と親密さを確かめるために。


「じゃ、一回家に戻って仕度して来るね。」

「あぁ、また後で。」

数分後俺は厚着のベストに黒のジーパン姿で家前で待っていた。


「ごめん、また待たせちゃった。」


「あんまり待ってないし、寒いから早くホットココアでも飲んで温まろう。」


「そうだね。一番近い神社は歩通神社【←架空】だからあっちね。」


「行くかな。」


まだ微かに残り氷に変わりかけた雪を踏み締めながら神社に到達した。


「よし五円あった。」

「私も、五千円札あった。」


えぇだな、前回よりビックリのオンパレードだよ。5W1Hで五千円札を使う場面を展開してみ、まさかよく賽銭箱から福沢諭吉とか与謝野晶子が出没するのはこの子の恩恵なのではないかと思う。


チャリン―カラン


今年もお守りください。『力』の面でもお守りくださいませ。


「よしっ!」


でもさ、帝王候補が神頼みってちと矛盾してない?神のような圧倒的な『力』つ

かえるようになる予定だかんな。ッ絶対無理だけどなハハハハハァ。


「傷は治ったの?」


「なんだ見てないのか?ないよ…魔術的なダメージだったから傷跡も残らないん

だとさ。」


「いやぁ男の子の裸を見るのはちょっと…。」


まぁ、まだ俺も思い出せば傷跡の有無は確認してなかったな。


「明結奈上半身見るぐらい大丈夫だろ、じゃないとプールなんて泳ぐどころじゃ

ないし。」


「プライベートプールだったから。」


「あぁ…中学とかは?」


「小中は珍しくて授業そのものが実施されてないから。」


確かに珍しいな。つか俺だって女子の上半身見るのには勇気いるからな。ってなんの話題からこんな話になってんだよ。


「お守り買うか?」


「もちろんっ、破魔の矢とかもついでに。」


俺は財布のチャックを固く締め、交通安全と健康祈願の札をとって巫女さんに渡

した。


「帰る前に…って買い過ぎだろ明結奈!」


「持てない、あぁ前見えない。」


「おい嘘だろぉ!よしっ、これで楽になるか?」


「ふぁーありがとう♪」


いや世界中の厄除けをする気なのか地球規模の募金をするなの気やら。予想では、あれだけ無ければあの豪邸を魔から守るのは無理だと判断したんだろう。もう魔法使いが入ったけどね…。


カッシュ


ホットココアの飲み口(ステイ-オン-タブって言う部分…雑学だよ。知ってた?)

を開けて、ベンチに腰掛けた。


「また、守ってくれる?」


明結奈の質問には、単に護衛してと言っているだけじゃないと囁いていた。


「あぁ、世界を守ってやるさ。」


そう迷ってられない、有言実行して臨機応変にいこう。世界のため地球のために…。いつの間にやら、また恋人の距離と照れ方だな。また、映画でも行くかなーでも次はカラオケとかがいいかなぁ…贅沢な悩みだな。明日は、儀式か…後戻りはしないための通過点だと思えばいんだ。


「よしっ、明結奈の家に行こうかな。前中に入らなかったから。」

「ホント?やった。」

「普通はいやがるだろ。」


「そうなの?じゃせーの…駄目ッ。」


せーのって…。


「明結奈はいいって言ったろ、それが明結奈の普通っしょ。基準はないだろう?」


「いいことゆーなぁ!感心しちゃう。」


「心のままに生きようって決めてるんだ。」

「陽忘れてた、すっかり。」


「何を?」


「絵馬。」


「ァア!」


俺は明結奈のペースに合せて立上がり、鳥居をまくぐり戻った。


「陽さん王は神より大変かもしれませんよ。でも、あなたならきっと。」


アキナンは、神社の屋根に馬乗りにながら二人走る姿目で追いかける。顔は真面

目そのもので、それが大胆に露出し動き始めた危殆を告知していた。


このとき、ただの権力者だとしか考えていなかった王への道は陽にとって、残酷で険しい未来として全貌を現すことなど知らない。アキナンさえも…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ