表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

〜1231〜

この日は、冬休みに入ってしまった俺には最も手強い行事がある。

「なぁこれ面倒くせぇ!」


「でも、風習でしょう?それにここでは、まともな生活送れませんよ。」


「五月蠅いな、普通はリビングに大半いるんだから生活に支障は来さないし。大

掃除なんてだるいもの誰が制定したんだ?」


そう大掃除は、片付けの苦手な俺には邪魔そのものでいつも頭を抱えている。


「僕の住んでいた世界では、魔術を競って整頓していましたよ。」

「あっ、さすがアキナン!ナイスアイデアだな、実践してみるぜ。」


少し『力』が、身体に籠った時点にもう使わなくなった玩具の木箱に出力ベクト

ルを合せて発散した。


ボォン


「陽なんの音なの?爆竹でも暴発した?」


「違うッて、ビックリ袋を爆発させて遊んでただけぇ。」


「遊んでないで、早く始末しなさい。」


毎回遊んでいるのが効いてるのか疑われることすらない、それはそれで空しい。


「…ビックリ箱ならぬビックリ人間ショーだょ。」


「そうですね、今考え直すとまだ陽さんは壊すや破く『破壊』と記される魔術し

か発動していませんでしたね。陽さんの場合は基礎となる移動や修復の魔術をせ

ずに難関魔術を先に習得したので基礎を覚え直すことは大変かもしれません。」


「厄介なことなのは判るが、今は『破壊』の魔術で木っ端微塵にしてしまった木

箱と玩具を掃き出そう。」


俺は、粉砕してどこからどこまでが木で玩具か区別つかない物体を部屋に充電完

了になって置かれているコードレス掃除機で吸い取った。


「アキナンお前さ、同居人だよな。手伝ってくれるよな。」


悪に満ちた顔で悪戯に笑う俺を見ていたアキナンは、鼻をフゥーと鳴らしてしか

たがないという意思表示をしたので。半分賭で頼んでみる。


「大変な基礎を学ぶためにも、何か移動させてみてくれよ。」


「わかりました、住まわせてもらう身ですし僕にも責任がありますから。」


アキナンは窓拭きしていた雑巾をバケツに浸してから指先をクルッと一回転させ

て問い掛けてきた。


「どれをどこに移動させれば?」


「あの実物石大図鑑千種をあっちで、ルーン文字を刻んだアクセサリーは向こう

で、惑星のモデルはここで、貯金箱はそこで、香水をこっちで、鏡をあっちらへ

んで、観葉植物はそっちに置いて。親父がなぜか誕生日に寄付してくれた万能ナ

イフをあの机の中に、昔海外旅行で買った綺麗な砂(国は覚えてないが、俺がせが

んで買ったものとか。)をあの台の上に、ガラス細工をケース棚に、写真をテレビ

の前に頼む。」


アキナンの顔は白く固まっていた。


「今の項目を移動ですか。」


「おう!頼むよ。」


「いい加減にしてください。#$&%$%#&」


「またかぁ、雷。」


アキナンの雷が落ちたところで、掃除を再開した。先程の項目は五分五分にこな

していった。


「クゥー、仕事の後のコーラは格別だぁ!」

「運動で消費した糖分を補うこのレモンティーはとても美味しいです。」


どこからレモンティー!?ってのは相手にしないで(だって魔法自体なんでもありだ

から)餅つきについての話に変えた、変えた理由は浅はかだが。


「お前餅食えんのか?風習の前に世界感の違いだからな。」


「もち?何なのですか、食べ物ですか?」


「食べ物だよ、神様に供えるものでさ。…明日ぐらいに餅つきするんだ。」


「興味ありますね。僕らの世界にはどこにも神に何かものを捧げるというような

箇所は文献にも載っていないですので。」


ピロリロリーンと携帯の受信音が鳴った。


「えぇっと…前はありがとぉV(^-^)V今度私の家で餅つきするんだけど来ませんか

?」


明結奈からの久しぶりのメールに俺の心臓は小鳥のように欣喜雀躍していた。さ

らに、豪邸に招待ときた…両親は?


「両親には許可取ってる?邪魔になったら困るからさぁ。送信っと。」


と口に出しながら打ち込み送信した。


「アキナン来るのか?」


「もちろんです。」


腕を組んで、強気に言っているアキナンを見ていると。


ピロリロリーン


「問題はないでし。両親は海外に出張中でいません。なぁ、かぁさん明日友達が

餅つきしに来ないかって誘ってるから行くな!」


トイレの掃除をしていた母に予定変更を知らせると。


「あら、彼女?」


「ちっ…ちっ…ちげぇよ。」


母の業とらしい口車に乗せられて、携帯を落としかけた。


「あらヤダこの子は私に隠しゴトなんて…ママはママは…泣けてきちゃう。」


嘘泣きを見ながら、休暇中の親父に母に言ったことと同じことを報告すると。


「ああ、そうした方がいいぞ。今回は、手短にどっかのスーパーで買ってくるか

ら。」


「意外な事実発生だよー!じゃ、明日行くから。」


「陽、いつまで休憩してるの?箪笥持ち上げるから手伝って。」


こうして、面倒な一日が過ぎ一日千秋の思いで待ってる次の日に日付は変更した


「いってきまぁーす。」


学校に行くわけじゃないためステップは軽い。


「でも…彼女の家の場所は?」


………………………。

「…しらないな俺。」

馬鹿だ。知らない家にどうやって行こうと言うのだ。


「すみません、彼女の何か持ち物ありますか?」


「持ってないなぁ。」

アキナンは、許可無く俺の唇に指を翳して一度光らせた。


「なっ…。」


「以前に彼女に接吻されたと言っていましたので利用しました。彼女の唇紋を応

用した魔術。」


アキナンはローブから赤や黄色に染められた鮮やかな長方形の紙が覗かせた。


「これは探索追跡人探しに用いるための紙で普通の羊皮紙に魔法を溶かした染色

液を染み込ませて…これに。」

アキナンは紙の右端にある四角のマークに唇紋のついた指を擦りつけた。十秒程

たって紙は燃えた。萌えたんじゃないのか明結奈の間接キスに。


「燃えてるぞ、おいっ…。」


「灰になった紙が、魔術成功の合図です。」

粉の様な灰は、風に流されるように舞い矢印の形に成形し、また流されるように

道を進み出した。


「ついていきましょう。彼女の家に案内しています。」


「結構ユーモアのある魔術だな。犬の仕草をマネてるぞ。」


この矢印は、徐々に速さを増していき。俺は自信のない体力を使って全速力で追

跡した。

「…ハァ…ハァ…ハァ。」


急停止した矢印は、風によって散らばった。それを見てから表札に目を上げると

。確かに【小高】とある。


ピンポーン


インターフォンの音までベルで豪華だ。


『ハーイ。』


「えぇ、日向です。」

『はい、今門開けるから。』


ゆっくりと門は開いて、中から明結奈が今日もかわいい服装で招いていた。


「ごめーん、道教えてなかった。」


「まぁ、来れたからよしでしょう。」


「よく来れたね。」


「いや近所の人に聞いたんだ。ハハ…ハハハァ。」


苦笑いしながら、敷地に入った。


「うっは〜!俺ん家の五倍か?」


「うーん広いだけで何もないの、今度は陽の家に招待してね。」


「任せろ!で、餅つきは?」


「おっと、そだね。」

「彼女魔術既に使えるのではないですか?」

明結奈が、準備をするために奥に戻ったのを見計らってアキナンが早口で言って

きた。


「なんだょ、証拠あんのか?」


「彼女この屋敷に一人で住んでいるのでしょう?掃除や料理を一人でやりますか

?」


確かに、お手伝いやメイド、執事がいてもなんら不思議ではないスケールの屋敷

を掃除し庭の手入れや料理までを一人それも明結奈一人でなんて怪しい。


「ねぇ、重いから手伝ってぇ!」


「任せろ!」


手伝う時に少しずつ質問してみた。


「ウンショッ、でもさぁこんなに誰が買って収納してんだ?」


「あっえぇ、それは父親が趣味で…。」


明結奈の視線は大理石の仏像に釘付けで、話を路線変更しようとしている。


「米一人で洗ったのか?二〇キロも。」


「うん…一人で暇だから。」


「よしここに設置してとっ!暇じゃないっしょ、掃除とか剪定とかあるから忙し

いだろうしな。」


明結奈は、玄関門の柱に手をピシャッと触れて、爪を立て、振返る時には涙が宙

を舞った。


「なんでそんなこと聞くの。あたしにだって踏み込んで欲しくないことがあるの

に!」


自分がいかに常識の欠けた人間か思い出した!以前にも、悩みを相談されたがお

せっかいを焼いたせいで、喧嘩になってしまった前歴があることを。


「もう、今日は帰るよ。雰囲気壊して悪かった!」


俺は、準備していた道具を片付けることも忘れて開いたままの門から駆け出した


「すみません、言う必要のないことを口走ってしまい―。」


「家に帰るまでは話かけるな。」


家に帰り次第俺は自分の部屋のある二階に駆け上がった。母さんたちに質問責め

にされるのがウザいと感じたからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ