番外編〜結果報告〜
守ると誓ったが、まもなくして冬休みになった。小休止に一安心さ、小高との初
デートがどうなったか気になる?
「はい、興味がありますね。それがいかにして『力』に影響を及ぼすのか。」
「太一みたいな奴だな、悪趣味だな。」
「あなたの家に住み、部屋を共有する者同士当然ですよ。」
抑揚もつけずに平然と言い放ちやがったし。
「でも、お前も話さないとまた電撃で拷問ってしそうだからな。」
「ワクワクします。」
今から一週間前に逆上る、約束の期日に予告したように土曜日の朝に最寄り駅
に待ち合わせていたところから話そう。
「ハァハァ、待たしちゃった?」
「メジャーに言うセリフだけど、全然待ってないってか俺も焦って来た。」
いつもは起床の手伝いの母が、土曜日という罠に嵌まり起こし忘れていたからだ
。自分で起きるのが苦手なので勘弁してくれょ…ずうずうしくも主催者は爆睡し
ていた、デートだからって心臓が張り裂けそうになりはしなかったのは不思議だ
が。
「最初の冒頭いらないよぉ。」
今日は、薄く化粧していて唇が艶やかでグッドで下を絞った檸檬色スカートのオ
ーバーオール型。しかし、外と中の服は別途商品のようで純白のフリル付長袖を
ベースに着ていた。赤茶色のブーツがベストな具合に着こなされていた。って人
のことばかりだと変態みたいだから。
「かわいいなぁ、クリスマス前にクリスマスプレゼント貰っちゃった気分だ。」
「今日さ、特別な日だからオシャレしちゃった。」
「特別な日って?」
「日向君と初めてデートする日だから…。」
そのまま小高は、前髪をいじりながら頬を淡く紅く染めた。寒いも相俟って一層
紅い。そして愛らしい。
「記念日大切にするんだそういうの俺好きだな、幻想的なもの。」
「だよねぇ、日向君も好きで良かった。」
「もう、陽でいいよ小高。」
「日向君…陽も小高じゃなくて明結奈って呼んで。」
「じゃ、明結奈行こうか。」
このあとの電車内の物語が気になったら個人的に聞いてください。二十分過ぎて
、目的駅に降りた。
「うぅ寒ッ!電車内は暑いし、外気は寒いし体の温度感知センサー壊れそう。」
「だね、早く行って温かいの飲も。」
素晴らしい提案思い付きましたでせうョ。平然としていれば何ともないが逆に何
か予期しない出来ごとには。
「キャッ!」
短く悲鳴をあげ、顔を俯いた明結奈を見て成功だと思った。
「手つないだら温かいと思ってさ。」
恥ずかしさで身体中の血液は活発に流れ温もった。
「ビックリしたぁ、いきなりだもん。」
「寒いよりいいっしょ。初めてつなぐみたいだな。」
「そだね。」
会話は映画になった。
「この『思い出せばいつも君がそばに』ってどんなストーリー?」
「あらすじには、喧嘩していた二人がある日を境に離されてしまって、振返る記
憶に共に笑った日々を思い出す。って感じらしいよ♪切ないラブストーリーが好
きなの、なんかね私一人じゃ退けてたけど、陽となら見られるだろうなって。」
「ならって?」
「ほら、そこじゃなくてしたぁ。」
あぁ、そうゆうことか。下記には、『あなたの大切な恋人と一緒に』とあ
る。本当に、大切に思ってくれてるんだなぁ。
「陽、泣いてるの!?」
「泣いてないよ…ぁあそれよりもうすぐ―。」
「ほら隠さない。」
「嬉し泣きしちゃった。って何泣いてんの?」
「貰い泣きかな、共感してくれた人は陽が始めてだから。」
充分暖まったよ…明結奈。 やっと、近年建ったオールマイティショッピングモー
ルないにご来店してやった。
「俺が予約番号知ってるからチケット買ってくるな。」
「ありがとうでも。」
「ワッ…ビックリしたッス!」
明結奈は俺の腕に明結奈の腕を絡ませていた。
「お返しよ。」
こんなお返しならいくらでも欲しい。
「大人二枚下さい。」
なんとここに発見、他人の恋路を妬むおばちゃんが。眉毛の端が痙攣しているの
が見て伺える。
「何かのも。」
「おいっ走るなつまづいて転ぶぞ。ブーツなんだから。」
学校では毅然とした態度でいるが目の前ではしゃいでショーウインドウに目を輝
かせている姿は子供みたいだ。だから…ジュース購入を先に済まし、明結奈をジ
ュースに引きつけているうちに俺は近くにいたショーウインドウ店員に小声で呼
び掛けた。
「すみません、これプレゼント風に包装してもらえませんかぁ?」
「かしこまりました。この商品ですか?」
軽く頷くと、若い女性の店員さんは神業を習得した手付きであっと言う間に包装
してしまわれた。
「見に行こ!」
さらに俺の服の袖を無邪気に引っ張る明結奈の背中を追いかけながらシアターに
入った。
「B8…B8あった、明結奈は隣りだから。」
驚く節はないが、スペシャルな雰囲気だ。彼女を連れてってのが始めてだから。
「…っ……つ。」
背筋に雷以上の電圧と電流が駆けた。肘掛けに置いていた手に手を重ねて指を絡
まされていた。
「ホラー映画じゃないから大丈夫だ…。」
大丈夫じゃないよな、俺以上に繊細なやつだから安心したいよな。
「アッ!」
明結奈は、一瞬俺が握り返したのを呆然として顔を見つめ、世界最強の笑顔をく
れた。
ブウゥ―カチャカチャ
上映開始の音と共に視界も暗闇におちる。上映の反射で俺はずっと明結奈の横顔
を見ていた。
中盤の下ぐらいで、感動のクライマックスに入っていた。
『…やっぱり俺…お前がいないと…。』
『いないと?』
映画のシーンでも寒空の下だった。空港の滑走路という場面はベタな気がしたが
なぜか涙が流れてしまう。
『いないと…なんだか何か心に隙間が空いてて。つまりは…愛してる。』
ロインは降りた飛行機から走って男に抱きついて涙を流して。
『私も…愛してる。』
エンディングテーマが響きエンドロールが始まった。隣りで鼻を啜る音と手にま
た少しキツく握られた。
「あぁ…会えて…よか…良かった。…ハァ…。」
もう黙ってハンカチを渡してあげた、柄もシンプルなハンカチ、俺自身はジャケ
ットで拭いた。号泣やメッチャ号泣した、でもって使命は果たさねばならぬ。
「腹減ったな〜。」
「泣いて悪いもの出したらお腹空いたね。」
しかし、自問自答を繰り返す俺の多細胞達。なんせ高嶺の華と呼ばれた小高がフ
ァーストフードでよいのか明結奈はファーストクラスフードじゃなくてならない
のでは?つってもな、いつもデートで豪華に振る舞うのは不可能なのが結論とし
て挙がる。もう当たって砕けろやぁ!
「ここで…いいか?」
高級料理店『イタリアーナ』の自動ドアが二度目往復して聞くと、明結奈は俺の
鼻にハンカチを押しつけて。
「無理にあたしに合わせようとしてるんでしょうけど、もっと常人な生活してま
すよ。」
安堵が広がった。機転を聞かせてくれたのだろうか?でも、一体何が好物ですか
。
「嫌いなものある?」
「うーん…行方不明ね。嫌いなものないから。」
「それじゃ定番のたこ焼きでいい?」
「マジぃ〜大好物なのぉ!」
裏表ない笑顔に俺は心を委ねた。
「たこ焼き二つ…マヨだくで。」
「マヨだく?」
「つゆだくとかと同じでさ、マヨネーズたっぷりって意味。」
「ほえぇー。私もマヨだく!」
「ニッヒッヒ。」
「なあにぃ?文句でもある?」
「いや、ぶっちゃけかわいい…何をしても。」
「テヘヘッ、照れるな、陽だってカッコいい。」
ヤバい、面と言われると耳が熱くなる。
「陽をもっと知りたいな。」
「他愛のない生活さ。今は、もう違うんですけどね。」
「他愛のない生活って興味あるな!」
そっか平凡な生活の情報は本とか友達に頼るしかないのか。
「私さ、両親が共働きで家空けてるほうが多いから話すことも無くて。」
「意思の疎通が出来ないのか、寂しいな。」
「馴れちゃったから心細くないよ。」
「じゃ、今度うちに遊びに来れば?」
って馬鹿だ。一度目に男の自宅に招待なんてマヌケにも値する。
「行くぅー楽しいだろうなぁ不思議な生物とか飼ってそう。」
「不思議な生物は飼ってないよ…。」
いや、いるぞ。年齢不詳の魔法使いが。
「はい、これっ!」
「これって映画館の…。」
「欲しかったろ?俺からの少し早いクリスマスプレゼント。」
「ええっ!欲しいもの見てたの?私何も渡せない。」
「いいんだ、俺からの恩返しだから。」
たこ焼きを食べてから、また寒い外気に触れながら駅まで歩いて戻り電車に乗り
帰ってきた。またねの時に明結奈は俺の唇にき…き…き…ス…キスした。エスパ
ー○藤もびつくりな行動にしばし口を開けて雪の降る中を髪を揺らして帰って行
く明結奈を見ていた。こうしてファーストキスをした初デートだった。