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〜初・発動〜

あれから担任教師に叱られ三度連続の遅刻の俺は反省文なる刑罰を受けた。


「地獄だ…十分だけでだぞ。」


溜め息混じりの俺に大して小高は薄く笑みを浮かべていた。


「フフ、手伝うよ。こんなのじゃ恩返しにもならないけどね。」


小高が笑っているのを初めて見た気がした。でも、本当に笑いたいのは担任の凧

目(たこめ 通称:蛸飯)が優等生で無遅刻無欠席のお嬢様が遅刻したことに驚いて

いた顔だろうな。


「充分だし、当り前のことしただけ…かな。でもさ、まだ信じられないよなぁ。


「うん、彼氏が命の恩人だなんて素敵だと思わない?」


やぶからぼうになんだ小高のやつ。ちょっと、俺の前に出て一瞬もじもじと指先

で遊んだあと向き直って、


「…日向君は彼女とかいないの。っているよね、隣りのクラスの飛香(あすか)

ゃんと付き合ってるんだっけ。」


俺は思い出していた。あの噂、二年に昇格してからすぐの話だが俺が三組の…あ

っちなみに俺は2組ね、で三組の(やなぎ) 飛香(あすか)と付き合っていると根も

葉もないデタラメが蔓延(まんえん)したのだ。学園内じゃ少しカッコいいと言わ

れたこともあってか特に長所がないのに告白され続けた連鎖経験を持つ俺は最近

では逆に告られることから遠のいていたことを。


「あぁ、それは妬みの嫌がらせね。俺は、彼女なんて一回も!」


気持ちが晴れたのか小高は硬かった表情が軟らかくなった。


「ホントに!?…じゃ付き合ってくれない?」

これも『力』の恩恵か?いや今は返事だー…駄目って理由がないよな。


「俺みたいなのでよければヨロシク。」


怖いくらい上手く進んだが、カップル誕生だぞ。いや、こっちも確信ねぇ。


それからは、体育で男子はグランドと女子は体育館と言う風に別れて授業するの

で下駄箱で離れた。


「鼻歌混じりで言いことありましたか?」


「どわっ、どっから出てきた。」


大袈裟に身を反らして驚いた。アキナンの野郎音もなく現れやがったし。


「ってなんで浮いてるんだ。さらに隠れろ学園にはお前みたいな魔法使う奴はい

ないんだよ。」


「それはどうでしょう僕は、姿を既に眩ましてますし学園にはまだ『力』の波動

を感知しましたが。」


「なぁにぃ!?」


「あなたは自分の心配をしなさい。」


「してるよ。未来が心配だよ。」


「いえ現実的にはあなたは霊能者でも悪魔祓いでもない平凡な人が無に話かけて

いるのは滑稽なことでは?」


遅いです。笑ってますよ半分、あと半分は俺を避けてるよ。

「おっ珍しく避けられてんのは太陽じゃないか。」


太陽ってのは俺の通称みたいなモンでさ。そして、見るからにクラスのムードメ

ーカー男子生徒の鳴瀬(なるせ) 太一(たいち)だった。

「まさか…下ネタ大絶叫したとかマドンナに告られたとか女性教師との不倫発覚

なんて。」


「そんなことはない、たぶんな。」


小高のことがあるため微妙な返事をしてしまった。太一は、ムードメーカーであ

る性分か俺の曖昧な言葉に耳を鋭く傾けていた。


「ふぅーん隠しゴトはいかんぜよ。内情吐露してみぃ。」


こいち…いや太一とコイツ被ったし、コイツを相手に秘密にしても得ないし、裏

では情報屋って言われる程内密なメモを持っている。その分、人には明かすこと

を嫌う。


「ひゃー♪正統後継者産まれそうじゃん。」

「馬鹿か!まだ付き合うしか決まってないし、デートもまぁだ。」

「ヤッポー、手配は俺がするにぜよ。ただしデータは採らせてな。」


「ただしもかかしもあるか!実験体か俺たちは。」


偶然でもアキナンの姿や存在を見られることはよくない全く良くない健全な高校

生にはな、人間にはサイエンスフィクションにしか見えないだろう『魔法』だか

ら。


「はぁいまたその話は伺ってさしあげまちゅから整列しましょ。」

この冬って季節に外でバレーとは…手が紅く痛い。教師は馬鹿にももっと限度が

あるだろと言いたい。だってよ、半袖短パン素足に草履ときたこれは健康を表し

てるって馬鹿は言うけど生徒の間ではあまりの酷さにマフラーをプレゼントする

有様だった。つかこんな感じで三〜四時間が終わり。俺と太一は弁当のために、

汗と雪で濡れた体操服とジャージを脱ぎ捨てシャツとブレザーに同時に腕を通す

という器用さを見せつつ頭の中は弁当の献立だ。


「オシャー俺一番だし、お先にぃ。」


「太陽早過ぎやし、まぁお先にどうぞ閣下。」


お先はいいのだが机内にしまっていた弁当陛下が見当たらない。


「ない…まさかっていや朝は持参していたよな。で学園の校門抜けて…!!!」


確認すると、校門を潜った瞬間小高が自殺しそうで頭真っ白で、あぁあ投げたわ

俺ポーンってポーンって弁当陛下を。


「陛下ァァァァァ!」

「日向君どうかしたのぉ?」


俺は手を震わせてて言った。弁当ごときと、けなす奴がいるがあれだけ貴重な娯

楽はそう無いと確信を持って豪語していい。


「俺の、お弁当箱が日替わりランチボックスがポーンてポーンって…。」


小高は気付いたのかハッと口を手で覆った。

「あの時のまま?」


「みたいー!」


ガックリしながら学食に向う足は重いと感じたが。


「私も学食なの一緒に行かない。」


「おうッ行くかな。」

太一とはアイサインで連絡をとり!小高とは愛サインでってギャグに目覚めたの

かな俺。まさか…このあとに平凡な高校生にさよならすることになろうとは小麦

粉の一粒も考えていなかった。


「おばちゃん、Aセット一つ。」


「私は、オムライス一つください。」


空腹な胃は警報を俺の脳に発令していたのかなんでも食べられる気分だった。な

んとか話題は、切り出したがな。


「小高前から学食だっけ、ってか意外性ありだな。」


「どうして?美味しいじゃん学食。」


「だけどさ御重弁当かと想像してたから。」

「へぇそんな想像してたんだね。面白いねぇ日向君、普通一人では御重弁当食べ

られないょお。」


「だってあの頃は、お嬢様=御重弁当と方程式できてたか…。ごめん。」


嫌だったかなこんな話は…。でもニコニコした小高は俺の腹に軽く手の甲で叩い

て。


「基準は弁当かよッ!テヘヘッ。」


小高がまた自分に負荷をかけているのが俺には痛いくらい伝心してきた。


「なぁ無理するな嫌なら嫌って言えよな。心配になるから…。」


なんだか照れくさくなり学食のメニューに目を逸らす。


「ありがとう♪」


そんな風景を妬ましく見学していたおばちゃんが大袈裟にAセットとオムライス

を台に勢いよく置いた。分かりやすい性格だなぁ。


「Aセットとオムライス出来ましたよ。」


「はぁーい!よし食うか。」


「うん、フフ。」


黙々と食し、十分後二人が食べ終わって、冬休みの話題に移った。

「あと一週間で、冬休みになるじゃんか。そこで提案、映画でも観賞しに行かな

いか。」

「映画ぁ!?ククッそれこそ意外性高いよ。」

「そうかぁ?俺運動関連苦手だからゆっくり温かいのんびり過ごしたいじゃん。


「初耳もっといっぱい日向君のこと知りたいなぁーんて。」


「…マジで!?」


「だって、心が温かくなるもん。」


「言ってて恥ずかしくない?」


「きゃ失礼しちゃう立派なレディに対して。日向君だって『心配になるから…。

』とか『小高の補強として支えになるよ。』とかの方がハズいょ。」


俺は飲んでいた水にむせた。


「ゴホッゴッホの絵は力強い抽象画…じゃなくて覚えてたんかい。」


「また聞かせてねその台詞。」


いや無理だあくまで口を突いてでた単語を並べただけのものだからな。


「んじゃ、教室に戻るか。では、姫君お手を拝借。」


これは特許料いらないからお試しあれ、互いに恥かしがらずに軽く手繋げるから

。って知らないけどね。


「ありがとう優しいジェントルマン。」


ガタガタガタガタガタガタガタッ―ボンッ


「なんだぁー地震か?」


「うきゃぁ!」


俺は目を疑った、先ほどいたおばちゃんは居らず建物外は微動だにしない。


「どうなってるんだ!?」

この時既に俺は高校生日向 陽に終止符を打ち別れを告げていた気もするんだ。

あれから何分経過したのだろう?不思議と苦痛な感じや窮屈な息苦しさは全然

だ。


「あぁ、携帯見れば…あれッ?」


携帯のサブディスプレイは、モザイクがかった画面になり時間どころか俺の好き

な淡いブルーグラデーションの画像は無惨にも残っていなかった。


「あちゃー、メインも死んでるな。」


「私のも、でも不可解過ぎない?」


「ああ、強くは揺れたものの崩れたり、変形した部分もない。なのに外に出られ

ない。」

「でも、不快感や強いストレスを発生させないのも、気になるかもかも!」


さっきも、言ったが妙に焦燥感がないぶん考えは冷静だ。


「奇妙に遭遇するの何回目?」


「私は、はじめましてって所かな。」


だよね普通は、つか俺は二回目か…アキナンのことがある。


「僕のことですか?」

「どあっ、出たな!」

音なく現われるなよ、心臓が壊れそうになるから…。


「って…お前姿見られて無問題なのか?」


「ご心配なく、ほら。」


奴が指し示す先には小高が壁に凭れかかって意識を失っていた。


「お前何した!?」


「催眠魔法ですよ。」

なんでもありだな『魔法』つーのは。不思議な奴だなこの空間ぐらい…。


「お前どうやって食堂に入ってきた。」


「容易にです。外からの干渉は受け付るので。」


「何か知ってそうな口振りだな。この空間も、ややこしい『魔法』関連なのか?


「ご名答です陽さんこの空間は魔神空間【ノア】。」


「魔神空間って…仕組み解らねぇ〜。」


仕組み以前の話がもう意味わからんよ。


「【ノア】は、不規則魔法陣による影響です、難しいですか?」


「ごめん、噛み砕いて頼む。」


成績は、あんまり良くないから。大して変わらないか、非現実な分野だし。


「ふむ、ランダムに発生した隕石がこの空間に墜ちて歪んでしまった…分離して

しまったと言うのが解りやすいかと。」


「あぁってぁあ!何それ手違いで切り離されちまったのか?」


「隕石を魔法陣にすり替えると成立します、何を言っても不安定な代物で複雑で

すが。」

「要するに、元に戻せと?」


「はい!でも、驚きましたよ。」


「そりゃ俺だって初めてで驚愕だよ。」


「いいえ、彼女にです。普通の人つまり『人間』と呼ばれる種族は空間の変動て

追い出されるはず…だからこそあなたや僕は存在し悩んでいる訳ですけど、彼女

も『力』を発しているとは予想を裏切られました。」


それってもしかして。

「小高も俺と同じ『力』を持つ一人?」


「えぇ断定してハズレではないでしょう。」

この空間が元凶を引き寄せているのではないかとさえ思った。脳の処理が追いつ

かないくらいの衝撃が渦を巻いている。


「でも、脱出の仕方あるのか?なぞなぞとか未知の方程式とかのキートラップの

使用するみたいな。」


「複雑なことありませんよ。あなた【2人のセイ】読んだって言ってましたよね。


「まぁな、聞いてたのか油断も隙もないなぁ。」


「日本はアニメーションや漫画の技術が盛んです。なぜだか分かりますか?」


「さぁ描きたいやついっぱいいるからだろう。」


「と言うことは?」


「えぇ、そんだけ種類があるんだろ。」


「そう常に個性が変わり、種類は増え形を変え進化する。日本人は、物語やファ

ンタジーまたSF作品が得意ですが、現実に起こるとは思わない。それは、どこか

満たされない。でも、片隅で望んでいるものです。」


「もしかして、望みの強いやつを具現化してるそれがこの空間。」

まるで、いくつもの星が一つの線で結ばれるように謎は明確に姿を現す。


「大体正解ですよ。正しくはこの学園の敷地が巨大な具現化装置として無意識に

ランダムに創造している。いつしか魔神空間として発動してしまう。」


「待てよだったら脱出方法は…。」


「得意ですよね♪怪物系を倒すの。」


なわけは絶対ない、しゃーねぇ戦うか…どうせ指示くれるだろうし怪物って言っ

ても霧みたいなモヤモワ生命体でしょうな!


「あとは頼みました、概要は説明しましたから。健闘を祈っておりますので。」


消えた…いや逃げた。にゃろーハメられたって言ってもどっちみちアイツも空間

から出られないだろうからなぁ!


「これがあなたに課せられた使命ですよ。」

「おい、あと何個くらい空間あるんだ?」


「望む者と叶える物が存在する限り…。」


回りくどく無限って言ったな。しかたがない、怪物だろうが何だろがかかって来

なさい。

シュゥゥゥ―グオォォ何かが核となって集積している。形も影の様な薄い半透明

から不透明な未知なる形に変貌した。


「嘘だろー!マジでボスキャラみたいなのに形成してますやんけ。倒そうにも、

武器ないし、封印するランプとかは見当たらないんでさぁ。」


むしろ戦意喪失したっぽいよ俺。


「諦めたら彼女も終焉ですよ。楽しみの映画にももう行けなくなりますよ、いい

のですか!」


本気で叱ってくれている気になった、教師よりずっと響くフレーズだった。


「補強になるって決めたんだ小高に選ばれ『力』に選ばれし者として勝つ!!」


スッと一呼吸置いて、ボクシングポーズを構えた。この怪物の外見からして甲殻

類の様な鈍い光放つ鎧を纏ったアンデットタイプの小型ドラゴンが当てはまる。

誰の創造物かね、直接殴りに行きたい。

「…………………。」長い沈黙が降りた後、先に仕掛けるのは怪物【ノア】だっ

た。


「この幻想かき消してやるよどこかの誰かさん。」


朝にも感じた溢れる『力』。でも、まだマスターしてないため、拳を固く握った


「ァァァァアアア!」

握った拳には、もう恐怖も後悔も無い微塵も。


再び輝く胸に勇気だけを奮って、今だけは学生ではなく『力』を宿した者として

。戦う!

「食らえ!」


閃光が一気に拳から何本も速射して怪物のコアを貫通して幻を再度霧に返した。


「…うぅ、疲れた。」

「ご苦労様です。二度目の『力』を一日に開放するなんて強靱ですよ。」


強靱か…初めて言われたよ。もう、疲れた。

「ほら、御陰で空間は同調し始めました。って聞いてませんよね。おっと、彼女

を覚まさなければ。」


「うーん、眠い…あれ日向君?ねぇ日向君どうしたの、凄い汗…。」


「人寄せ魔法"#%$*"」

その後は、大勢の教師に保健室に運ばれただの過労ということで放課後までベッ

ドで横たわっていたそうだ。


「小高大丈夫?」


なんだか、あべこべの質問に小高は。


「心配抱えないで、隠しごとなんてしないで二人で悩もう。」


笑顔にしたくて頑張ったのに心配かけて泣かせてしまって…辛くなった。


「あれは夢だったんだ。誰かの夢、それが見えただけ…そう幻。」

こんなに顔をクシャクシャにして泣いてくれる優しいやつに、『力』のことは言

えない。

「でも良かった。本当に良かった!」


「なぁ、明日は土曜日だから遊びに行かないか。軽く食事でもってやつさ。」


「うん。」


なんかまだ把握出来てないけど、とにかく俺は小高や学校全体を守る。


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