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3 昔の仲間に会ったで侍。

出てくる登場人物はお分かりの通り戦国武将の名前です。その人にちょっと寄せながら書いていこうと思います。

晴信の屋敷に入った勘助はその内装にもまた驚くことになった。

屋敷門のような扉を抜けた先には異世界が広がっている。金の刺繍が施されている絨毯、細かい彫りの入った高そうな家具類、並んだ女中と男中?執事と言うらしい、それがとても広い玄関口の広間にうまく調和をしており真ん中に鎮座している階段へと我々を誘うように配置されていた。


「お…おぅ……」


一歩どころか立ち去りたい気持ちになる勘助を逃がすまいとサキの左手が逃がさない。


「ほらっ勘助さま、遠慮なさらずに!」


「アキ、こいつは慣れない場所で騰がっているのだ!」


笑う晴信を睨む勘助だったがそれでも手を引かれ続けた。


「…「おかえりなさいませ、旦那さま」…」


二十人はいるお手伝いが一糸乱れぬ礼を見せると晴信は簡単に手を上げて答えた。


「みんな!お客さまよ!応接室にお連れするからお茶をもう一つお願いね」


「…「はい、お嬢様!」…」


またも一糸乱れぬ二十人に勘助はまた立ち去りたい気持ちになった。


三人は階段を上がり長い長い通路を歩いていく。ふと外を見ると先ほどまで晴れていた空に雲がかかっていた。


「あら、雨が降るのかしら?よかったですね、早く帰ってこれて!」


アキは何気無く言ったようだが男二人の表情は暗い。雨が彼女の記憶を滲ませるのではないか……、天気の悪い日はいつも思うことだ。


「さぁ勘助さま、こちらです!」


一つの扉の前に立つと彼女が勘助の手を離し、持ち手を握り開けた。応接室ということもあってしっかりとした造りの部屋には大きな机とその周りを囲むように一人掛けの椅子が八つあったのだがその下座に懐かしい顔二人が腰かけていた。


「ん?どうしたんだいアキちゃん。おぉっ!勘助ぇ!!」


一人の若者が立ち上がってこちらに歩いてくる。部屋の奥に居たためあまり体の大きさは気にならなかったが近くにくるとその熊のような体に驚く。


「おぅおぅ勘助!久しぶりじゃの!」


「痛っ!痛いわ慶次!まったく……相変わらずの馬鹿力じゃな!!」


この大男の名は金剛院慶次こんごういん けいじ。勘助よりも頭一つ出た大男だ。目鼻立ちははっきりしており笑えば男でも惚れる。髷を乱暴に束ね、束ね損ねた後ろ髪は垂らしている。服装も和装に洋物の羽織を纏い、足には靴なる革の履き物を履いていた。時代に合わぬ風貌、傾奇物かぶきものである。


「そうか、オジキは勘助まで呼んだか!また楽しくなるの左近!」


慶次が振り向いてもう一人の男に言うがその男は椅子から動こうとはしない。


「なんじゃなんじゃ左近!連れぬやつじゃの!それとも腹でも下したか!?」


大笑いする慶次を他所に部屋に入った一同は各々椅子に座った。


「久しぶりだな勘助」


やっと口を開いたもう一人の男、名は白雨左近しらさめ さこん。一見厳しそうな顔つきであるが本人曰く昔かららしい。体躯は勘助より少し小さく細い印象を受ける。しかし女性から見ればこの男、絶大な人気だ。


「久しぶりじゃな左近、まだ女子おなごは苦手か?」


「うるさい……」


「聞いてくれ勘助!俺がこの街に来たとき女子の大軍がおったんじゃ!なんじゃ?!と思って近づけば左近がおってな、その時の左近の顔、ぶははは!見せてやりたかったわ!」


皆の笑い声が部屋に響く。左近は小さい頃から女性に言い寄られることが多く、終には度がすぎたそれは彼を女性恐怖症へとしてしまったのであった。


「でも私は大丈夫なのよね左近さんは!」


左近を見てアキが頬を膨らませて言う。


「い、いや!アキ殿は昔から知っておったし……」


「どうせ私は男っぽいですよーだっ!」


「いや、誤解だアキ殿!」


また笑い声が響くと、鼻を鳴らした彼女がすぐに笑顔になり洋食器に淹れたお茶を飲んだ。


「ふふふ…楽しいっ!またこうやって話ができるなんて」


外はとうとう雨が降ってきたが、この部屋だけは温度を下げることなく暖かいままだった。そんな彼女を見て四人の男は笑う。また集まれた、それがこの為だけだったならと思う。しかしそうもいかぬと晴信は一つ咳払いをした。


「すまないが本題に入る。アキ、少し席を外してくれないか?」


男達の目付きが変わった。


「私もっ!」 「駄目だ」


娘を突き放したのは仕事の件以上に父として聞いて欲しくなかったからだ。


アキは はい… と短く返事をすると部屋を後にした。晴信はやっとという感じで息をはくと仕事をする顔つきになった。


「さて……まずは集まってくれたことに礼を言う」


三人の若者は頭を下げる。


「未だ全員は揃っていないが敵の動きが早い、一先ず三人で始動していこうと思う」


「後は誰を呼んだんですか、直家からは文が来まして知っておるのですが」


左近の言葉にあからさまに嫌な顔をしたのは勘助だった。


「オジキぃ……あいつまで呼んでおるのか?戦力にはなるが……誰が治めるんじゃ?」


ある日の仲間の事件を思いだしため息をつく。


「あいつも悪気があるわけではないぞ勘助!もしもの時は皆で止める、それでよかろう!あれはあれで楽しいぞ!」


腕っぷしなら一番の慶次が笑うと晴信も安心している。


「後は出雲の幸盛、信濃の昌幸、遠州の直虎、紀伊の重秀を呼んである」


どれも昔の仲間達だ。子供のころは一つ屋根の下で暮らしたこともあったが今は皆離散している。


「で、まずはどこに?」


「最近起きている事件について以前から目星をつけている村にいこうと思う」


「あの皮切り死体のやつですか……」


そう左近が言うと晴信は最近起きている事件について話始めた。


最初の事件はこの春に起こった。女性が殺されたという。現場にいくと辺り一面腐臭が漂い烏や鼠が死肉を食むような無惨な死体が転がっていた。その死体の特徴を簡単に言うと「皮がなかった」んだそうだ。皮膚という皮膚が剥がされ身と筋肉が露になったその死体。抵抗した後もなく死体は綺麗に瞼を閉じていたという。体から女という事だけがわかり、身元も不明だった。


その手口からある男の仕業ではないかと調べたがその男は五年前に既に死んでいる。しかし死体の特徴、手口、そしてその手際の良さから亡霊ではないかという意見も出始め、恐れるものもいた。


そしてその事件を任されたのが晴信であり、その全容を解明すべくこうして皆を集めたのだ。


「私に頼れるのは黒堂塾・・・のお前たちだけだった。先生が亡くなった今、もしあいつがまた現れたとしたら止められるのは私たちだけだと思う。だからどうか力を貸してほしい。」


そう言って目の前に座る三人に深く頭を下げた。警察という立場ではなく同じ釜の飯を食った家族としてだ。


三人は同じように頭を下げ思いを共にすると誓った。

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