ライバル。6
「……そっか。そうだったんだね……。最近全然見かけないと思ったら……」
俯き、一言ぽつりと呟いた。
「ど、どういう事なんや? や、やめぇや。ワシが泣かしたみたいやろ」
「ごめんなさい、突然。……優ちゃんの友達に、おそらく海原友美という人がいたはずです。ご存知ですか?」
「……な、なんやて? もしかしてウチによう遊び来よったトモちゃんか? あの全国霊能バトル……えぇと、あの競技の名前あんま覚えとらんけど、三年連続インターミドルの決勝まで勝ち進んで……あーっ! そん時の相手が、キミやったんか! たった今、あの時の面影思い出したわ!」
「はい。通称、VSです。インターミドルの三年間、個人戦決勝は、私と友美の独壇場でした」
「久しぶりやな、千秋。元気しとった?」
言葉で思いっきり喧嘩を売ってくる割には、天使のように優しい眼差しで千秋を見つめる。
「うん。どうしたの? 誰にやられたの?」
「AAA級百匹や。討伐ミス。さすがに百匹同時に相手するんはキツいもんがあんねん。ちょうど半分残してもうた」
「応援は? 呼ばなかったの?」
「ウチはどこかの誰かさんみたいに、一人で戦うのが好きやねん。それに、友達一人助けるために、私情で霊保は動かせん。一匹一匹討伐依頼の書類作っとる間に取り殺されるわ。せやったら、ウチ一人だけでも動いて何とか食い止めたかったしな。そうせな、優を護れんかった」
瞳を落とし、顔を左右に振って友美が言った。百匹なんてとてもじゃないが想像出来ない。普通の人間なら、即アウトだろう。コンマ一秒を真剣に戦わない限り千秋でも難しい。
「水臭いよ。呼んでくれたらすぐ行ったのに」
「会長からもろたピッチ、電波届かんかった。安心して背中任せられるんは、千秋くらいのものやったんやけどな……。ウチは、時の運に負けたんや」
二人の会話を見ていて、男性がようやく気付いたようだ。友美が、優を動かしている事に。
「ほんま、おおきに。そして堪忍な。ワシは勘違いしとったみたいや。ずっとずっと、優を見守ってくれとったんやな」
「ええで。ウチは好きで優を護っとったんや。もう、千秋たちが残り五十匹のEsを浄化してくれた。これで、全部終わったんや。なっ」
ニッと微笑んだ顔が崩れていく。
「せやからな、千秋。もうお別れや。……泣かんでええ。ほんま自分、黄志千秋か? ウチの知っとる黄志千秋は、誰よりも強うて、誰よりも明るい金色の騎士やったで」