表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は霊を信じない  作者: なつきまる。
プロローグ
3/9

解禁、白銀の槍。2


「この槍には、別の顔があるのよね……?」


『――! なぜお前がそれを知っている。やめておけ。いくら私でも責任は取れないぞ』


「一回やってみたかったのよね。大霊術も使わず、究極大霊術も使わず、それでいながら最大限の力を発揮してみたいんだ」


『……SS級Esがその槍には封印されている。お前のような特一級が二十人集まって倒せるかどうかの相手だ。もし力を開放するのなら、責任を取って一人で再封印、または従える事を前提とする。期間は三ヵ月。絶対にしくじるな。万一失敗した場合、その時は……最悪の事態を想定していろ』


「上等。……マスター・チェンジ。我は汝、汝は我に十三秒の力を授ける。目覚めよ、真の力よ」


 その言葉がキーになっていたのか、白銀の槍は姿を変えていく。気体なのか液体なのかも分からない。霊体とも違う。ただ、とてつもなく強大な力なのは確かなようだ。


 白銀の槍は仮の姿だったとでもいうのだろうか。今まで封印していたからこそ、本当の力はそのSS級のEsに集中していたのであって、解放された今は本来の力を取り戻しているらしい。


 周囲の悪魔たちの様子が変わっていく。野生の本能がもし悪魔にもあるのだとしたら、それで予感がしたのだろう。眼前に突然現れたこいつだけは、絶対に敵に回してはいけない、と。


 一瞬で鼓膜が破れそうな獣の咆哮が、大気を震わせて上空からビリビリ響く。その雄叫びの強烈な波動にて雲は一瞬にして蒸発してしまった。


 自然の光によって写されたのは、真黒な毛並みの狼だった。ただ、明らかにサイズが違いすぎる。山いくつ分あるだろうか。助走をつければ富士山は超えられそうな巨体だ。周囲にいた悪魔たちの反応も消えている。今の咆哮で消滅してしまったらしい。



「……ちょッ……こんなの、聞いてない」


『いや言ったから。私ちゃんと言ったから。ほらあと七秒どうするんだ? 私、しーらない』



 この巨体で七秒もあれば、東京の半数は壊滅させられるだろう。ちなみに、今の彼女の戦力ではどうにもならない。いくら本当の力を開放した槍だったとしても、使い方を誤れば本来の力を発揮できず持て余すだけ。世界一速い車を手に入れたとしてもドライバーがポンコツだったら、公道で軽自動車のプロドライバーに煽られるようなものだ。


 彼女は、折れているであろう脇腹を押えたまま、フラリと立ち上がり、据わった目でジッと巨大な狼の目を見続けた。ただ、ひたすらに。時間が流れるままに。


 彼女には、満月がやけに小さく見えていた。喉が渇いていく。


 彼女がごくりと固唾を飲む。


 (ろく)番隊により桧原村を囲む結界が強化された、その直後。その巨大な狼は視線を合わせたまま、煙のようにフッと消えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ