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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
最終章 〜悠久の愚者編(上)〜

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429 予言の謎

 ウォレンの発言に、俺は一瞬固まってしまった。

 十二士改め、十二支……とは、おそらくこのトウエッドに伝わる干支(えと)の事。


「おそらく、ここにいる皆さんは予言の碑(ひ)の全貌をご存知のはずです」


 え、何ソレ? いつ解読されたの?

 俺とポチが首を傾げていると、アイリーンが何だか難しそうな顔をした後、頭を掻いた。


「ウォレン、アズリーに説明してあげて」

「おや、話していませんでしたか。これは申し訳ありません」


 ほんのちょっとウォレンと一緒にいればわかる事なのだが、これは完全わざとである。

 この段階で俺に説明しなかったって事は、説明しないだけの理由があるって事か。

 俺が渋面で口を結んでいると、ウォレンは予言の碑の全貌を諳(そら)んじてみせた。


 ~~~~~~~~~~~~


 明日を進む者たちよ、来(きた)る魔王に備えよ……


 十二の士、其の者ら世界を照らす光とならん


 十二の士よ、宵闇照らす光となりて民を導け


 十二の士よ、十二の支(し)と共に立ち上がれ


 十二支(、、、)よ、十二の士と共に彼(か)の者を助けよ


 昨日を尊(たっと)ぶ者たちよ、魔王復活の時は近い


 神を愛し、神に従え


 さすれば道は、一片(いっぺん)の光に辿り着くだろう


 やがて現(あらわ)る彼の者が、全ての道に光を灯すだろう


 十二の士、彼の者に続き、世界を照らす光とならん


 十二の士よ、彼の者に続き、宵闇照らす光となりて民を導け


 やがて現る彼の者に、愛と力と笑い持て、魔王の野望を打ち砕け


 彼の者の名は――――聖戦士ポーア


 ~~~~~~~~~~~~


 ………………なるほど、ウォレンが俺に言わなかった理由がなんとなくわかったぞ。

 俺はウォレンを見ると、ウォレンは無邪気そうな顔で笑った。腹は邪気で一杯。それはわかっている。

 しかし、つまりこれは……この前段階で俺がこの予言を知ってたとしたら、もしかするとこの魔法は、完成していなかったかもしれないって事だ。


「後半に出てくる十二支。これは魔法士が従える使い魔を指しています。即ち、十二支を従える者が予言の中の真の十二士(、、、、、)という訳です」


 十二士会とは別の十二士。それが十二支を従える者って事か。


「因みに、この予言を書かれたのは潤子様だそうです」


 確かに、潤子の魔眼ならばこの予言は理解出来る。

 しかし、何故だ? どこか引っかかるな?


「十二支とは子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)の十二の獣の事」


 ウォレンの説明の区切り。そのタイミングで、バルンが周囲を見渡す。


「そういう事か。確かにいるね。十二の獣」


 バルンの指摘にウォレンが頷く。


「えぇ、子(ね)は鼠(ねずみ)。これはコノハさんの事。それを従えるはバラードさん。丑(うし)は牛。これはウェルダンさんの事。それを従えるはリーリア様。寅(とら)は虎。これはマイガーさんの事。それを従えるはオルネルさん。卯(う)は兎(うさぎ)。これはラットの事。それを従えるはウォレン(私)、辰(たつ)は竜(りゅう)。これはバラードさんの事。それを従えるはリナさん。巳(み)は蛇。これはツァルさんの事。それを従えるはララさん。午(うま)は馬。これはプラチナさんの事。それを従えるはフユさん。未(ひつじ)は羊。これはシャイニーさんの事。それを従えるはナツさん。申(さる)は猿。これはリッキーさんの事。それを従えるはバルン様。酉(とり)は鳥。これはホークさんの事。それを従えるはアイリーン様。戌(いぬ)は犬。これはタラヲさんの事。それを従えるはティファさん。亥(い)は猪(いのしし)。これはブルさんの事。それを従えるはトゥース様…………」

「……だから、だからウォレンさんは俺に予言の碑の事を黙っていたんですね?」

「その通りです。それを話してしまえば、この魔法は完成しなかったかもしれません。予言を違える事。それは敗北に繋がる可能性があるという事です」


 確かに、俺が予言の事を知っていたら、そちらに気が行って魔法は完成しなかったかもしれない。流石黒帝。解放軍(レジスタンス)の頭脳……というか操られてる気しかしない。俺がウォレンの才能に呆れていると、リナが辛そうにしているのが見えた。そのリナを見たオルネルがウォレンに言う。


「お、おかしいですよっ!」

「えぇ、それはわかっています」


 ウォレンはその疑問さえも事前に理解していた。


「十二の士と十二の支……本来であれば二十四の存在が必要になるはず。しかしこの場……いえ、この世には(、、、、、)二十三の存在(、、、、、、)しかいない(、、、、、)」

「……ガストンの事ね」


 誰も言えなかった名前をアイリーンが口にする。

 いや、ガストンとは古い付き合いのアイリーンだからこそ口に出来たんだ。


「この予言は魔王軍も知っていた事です。ですからビリーはガストン様を狙いました」

「予言の碑にある存在が一人でもいなくなれば、予言は成立しなくなる」


 フユは拳を強く握りながら言った。


「そうか。だからビリーはガストン様を執拗に狙ってたのか……!」


 オルネルの怒り、リナの怒り、フユの怒り、そしてアイリーンの怒り。皆の静かな怒りが肉眼で見えるようだ。

 話題を変えるようにウォレンが眼鏡をくいと上げて説明を続けた。


「ですが、予言には二十四人とは書いていません。十二の士、十二の支としか書いていないのです。バラードさんが士であり支であってはいけないとは、どこにも書いていない。だからこそ私のご先祖様方は……バラードさんにコノハさんの使い魔契約を更新させたのではないか? 私はそう捉えます」


 紫死鳥(ししちょう)の伝言からブライトたちの存在を知った俺は、コノハの契約更新の謎を皆で共有している。ウォレンがこの判断に行き着くのも納得だ。


「事実、二十四の存在がいなくとも、アズリーさんの魔法は完成しました。これが何よりの証拠です。まぁ、これほど上手くハマるとは思っていませんでした。まさか、全て聖戦士ポーアとの繋がりが濃い者とは」


 ウォレンが微笑みながら俺を見る。

 なるほど、確かにこれは俺の足跡(、、)だ。神が言った言葉は、こういう意味でもあったのか。


「アズリーさんの魔法、癖が強いからね」


 ティファがボソりと言い、


「テンガロンさんなんて顔真っ赤にして帰ったよね? あはははは」


 バルンが無邪気に笑い、


「難しかったけど、アイリーンちゃんに習った魔法に似てたっ」


 ナツがふんすと鼻息を荒くしながら言った。


「ちょっとナツ! 静かにしなさい」


 そういえば、ナツはトレースに魔法を教わっていたはず? いや、ナツの性格だ。アイリーンにも、当然リナにも教わっていただろう。


「えー? 何で?」

「いいから黙るのっ!」

「むー、変なのー!」


 それに、アイリーンは俺の魔法をちょくちょく盗み取ろうとしてた。それがナツにも活きたって事か。しかし、俺の魔法ってそんなに癖が強いのだろうか?

 俺が頭を捻りながら悩んでいると、目の端にもう一人悩んでいるヤツがいた。

 それは、俺とよく似た境遇の……ポチだった。


「むーん……むーん……!」


 そんなポチに気付いたのか、リーリアが話しかける。


「どうしたの、ポチ?」

「おかしいです!」

「何が?」

「犬か鳥は私じゃないんですか!? ぷんぷんです! 私だけ仲間外れです!」


 そう、俺が引っかかったポイントは、正にそこなのだ。

 予言の碑の全貌は明らかになり、埋まるべき内容も埋まってはきた。

 しかし、まだ全てのピースが埋まったとは言えない。思えないのだ。

 それは、この場にいる誰もが理解している事だろう。

 もしかしたら、この予言の謎を解き明かす事が、魔王攻略の最大のポイントなのかもしれない。

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よろしくお願い致します!!




次回:「430 不透明な展望」をお楽しみに!



【メモ】


子:バラード

丑:リーリア

寅:オルネル

卯:ウォレン

辰:リナ

巳:ララ

午:フユ

未:ナツ

申:バルン

酉:アイリーン

戌:ティファ

亥:トゥース

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