429 予言の謎
ウォレンの発言に、俺は一瞬固まってしまった。
十二士改め、十二支……とは、おそらくこのトウエッドに伝わる干支の事。
「おそらく、ここにいる皆さんは予言の碑の全貌をご存知のはずです」
え、何ソレ? いつ解読されたの?
俺とポチが首を傾げていると、アイリーンが何だか難しそうな顔をした後、頭を掻いた。
「ウォレン、アズリーに説明してあげて」
「おや、話していませんでしたか。これは申し訳ありません」
ほんのちょっとウォレンと一緒にいればわかる事なのだが、これは完全わざとである。
この段階で俺に説明しなかったって事は、説明しないだけの理由があるって事か。
俺が渋面で口を結んでいると、ウォレンは予言の碑の全貌を諳んじてみせた。
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明日を進む者たちよ、来る魔王に備えよ……
十二の士、其の者ら世界を照らす光とならん
十二の士よ、宵闇照らす光となりて民を導け
十二の士よ、十二の支と共に立ち上がれ
十二支よ、十二の士と共に彼の者を助けよ
昨日を尊ぶ者たちよ、魔王復活の時は近い
神を愛し、神に従え
さすれば道は、一片の光に辿り着くだろう
やがて現る彼の者が、全ての道に光を灯すだろう
十二の士、彼の者に続き、世界を照らす光とならん
十二の士よ、彼の者に続き、宵闇照らす光となりて民を導け
やがて現る彼の者に、愛と力と笑い持て、魔王の野望を打ち砕け
彼の者の名は――――聖戦士ポーア
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………………なるほど、ウォレンが俺に言わなかった理由がなんとなくわかったぞ。
俺はウォレンを見ると、ウォレンは無邪気そうな顔で笑った。腹は邪気で一杯。それはわかっている。
しかし、つまりこれは……この前段階で俺がこの予言を知ってたとしたら、もしかするとこの魔法は、完成していなかったかもしれないって事だ。
「後半に出てくる十二支。これは魔法士が従える使い魔を指しています。即ち、十二支を従える者が予言の中の真の十二士という訳です」
十二士会とは別の十二士。それが十二支を従える者って事か。
「因みに、この予言を書かれたのは潤子様だそうです」
確かに、潤子の魔眼ならばこの予言は理解出来る。
しかし、何故だ? どこか引っかかるな?
「十二支とは子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥の十二の獣の事」
ウォレンの説明の区切り。そのタイミングで、バルンが周囲を見渡す。
「そういう事か。確かにいるね。十二の獣」
バルンの指摘にウォレンが頷く。
「えぇ、子は鼠。これはコノハさんの事。それを従えるはバラードさん。丑は牛。これはウェルダンさんの事。それを従えるはリーリア様。寅は虎。これはマイガーさんの事。それを従えるはオルネルさん。卯は兎。これはラットの事。それを従えるはウォレン、辰は竜。これはバラードさんの事。それを従えるはリナさん。巳は蛇。これはツァルさんの事。それを従えるはララさん。午は馬。これはプラチナさんの事。それを従えるはフユさん。未は羊。これはシャイニーさんの事。それを従えるはナツさん。申は猿。これはリッキーさんの事。それを従えるはバルン様。酉は鳥。これはホークさんの事。それを従えるはアイリーン様。戌は犬。これはタラヲさんの事。それを従えるはティファさん。亥は猪。これはブルさんの事。それを従えるはトゥース様…………」
「……だから、だからウォレンさんは俺に予言の碑の事を黙っていたんですね?」
「その通りです。それを話してしまえば、この魔法は完成しなかったかもしれません。予言を違える事。それは敗北に繋がる可能性があるという事です」
確かに、俺が予言の事を知っていたら、そちらに気が行って魔法は完成しなかったかもしれない。流石黒帝。解放軍の頭脳……というか操られてる気しかしない。俺がウォレンの才能に呆れていると、リナが辛そうにしているのが見えた。そのリナを見たオルネルがウォレンに言う。
「お、おかしいですよっ!」
「えぇ、それはわかっています」
ウォレンはその疑問さえも事前に理解していた。
「十二の士と十二の支……本来であれば二十四の存在が必要になるはず。しかしこの場……いえ、この世には二十三の存在しかいない」
「……ガストンの事ね」
誰も言えなかった名前をアイリーンが口にする。
いや、ガストンとは古い付き合いのアイリーンだからこそ口に出来たんだ。
「この予言は魔王軍も知っていた事です。ですからビリーはガストン様を狙いました」
「予言の碑にある存在が一人でもいなくなれば、予言は成立しなくなる」
フユは拳を強く握りながら言った。
「そうか。だからビリーはガストン様を執拗に狙ってたのか……!」
オルネルの怒り、リナの怒り、フユの怒り、そしてアイリーンの怒り。皆の静かな怒りが肉眼で見えるようだ。
話題を変えるようにウォレンが眼鏡をくいと上げて説明を続けた。
「ですが、予言には二十四人とは書いていません。十二の士、十二の支としか書いていないのです。バラードさんが士であり支であってはいけないとは、どこにも書いていない。だからこそ私のご先祖様方は……バラードさんにコノハさんの使い魔契約を更新させたのではないか? 私はそう捉えます」
紫死鳥の伝言からブライトたちの存在を知った俺は、コノハの契約更新の謎を皆で共有している。ウォレンがこの判断に行き着くのも納得だ。
「事実、二十四の存在がいなくとも、アズリーさんの魔法は完成しました。これが何よりの証拠です。まぁ、これほど上手くハマるとは思っていませんでした。まさか、全て聖戦士ポーアとの繋がりが濃い者とは」
ウォレンが微笑みながら俺を見る。
なるほど、確かにこれは俺の足跡だ。神が言った言葉は、こういう意味でもあったのか。
「アズリーさんの魔法、癖が強いからね」
ティファがボソりと言い、
「テンガロンさんなんて顔真っ赤にして帰ったよね? あはははは」
バルンが無邪気に笑い、
「難しかったけど、アイリーンちゃんに習った魔法に似てたっ」
ナツがふんすと鼻息を荒くしながら言った。
「ちょっとナツ! 静かにしなさい」
そういえば、ナツはトレースに魔法を教わっていたはず? いや、ナツの性格だ。アイリーンにも、当然リナにも教わっていただろう。
「えー? 何で?」
「いいから黙るのっ!」
「むー、変なのー!」
それに、アイリーンは俺の魔法をちょくちょく盗み取ろうとしてた。それがナツにも活きたって事か。しかし、俺の魔法ってそんなに癖が強いのだろうか?
俺が頭を捻りながら悩んでいると、目の端にもう一人悩んでいるヤツがいた。
それは、俺とよく似た境遇の……ポチだった。
「むーん……むーん……!」
そんなポチに気付いたのか、リーリアが話しかける。
「どうしたの、ポチ?」
「おかしいです!」
「何が?」
「犬か鳥は私じゃないんですか!? ぷんぷんです! 私だけ仲間外れです!」
そう、俺が引っかかったポイントは、正にそこなのだ。
予言の碑の全貌は明らかになり、埋まるべき内容も埋まってはきた。
しかし、まだ全てのピースが埋まったとは言えない。思えないのだ。
それは、この場にいる誰もが理解している事だろう。
もしかしたら、この予言の謎を解き明かす事が、魔王攻略の最大のポイントなのかもしれない。
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よろしくお願い致します!!
次回:「430 不透明な展望」をお楽しみに!
【メモ】
子:バラード
丑:リーリア
寅:オルネル
卯:ウォレン
辰:リナ
巳:ララ
午:フユ
未:ナツ
申:バルン
酉:アイリーン
戌:ティファ
亥:トゥース




