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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十二章 ~地獄編~

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397 再・迷宮へ

「そう言えば、イーガルたちはどうだった?」

「もう強いなんてもんじゃないわよ。歴史あるチームだけに、連携とかは私たちより圧倒的に上。白銀もいい勝負してたわ。でもやっぱり集団戦ともなれば、あちらに一日の長ありね」

「へぇ、そんなにか。のわりには、あまり悔しそうじゃないな?」

「アンタ、ちゃんと話聞いてる?」

「俺たちが負けたとは、ベティーは言ってないぞ」


 ブレイザーの言葉に、俺もポチもハッとする。


「そういえばそうですね……」

「んじゃあ勝ったのか?」

「勝ったとも言っていない」


 ブレイザーのヤツ、わざと言ってるんじゃないか?

 俺はじとっとした目をブレイザーに向けるも、ブレイザーはただ黙っているだけだった。


「皆良い勝負してたわよ。レベル帯は似たようなものだけど、個々の技量では戦魔国側が有利だったわね」


 確かに、モンスターの発生や被害に関しては、戦魔国の方が酷いと聞く。国によって戦士の特性が変わってくるのも頷けるか。

 しかし、イーガルの指導能力には頭が下がるな。効率的かつ能動的に動かなければ、今の銀たちのレベルには追いつけなかっただろうに。ブレイザーやベティーの調子から見るに、どちらにとっても、良い刺激になったんだろう。


「おう、待たせたな」

「何だか面白そうな事があるんだってー?」


 ベティーの念話連絡を受け、最初にやってきたのはリードとマナだった。


「疲れてるところ悪いな。仕事だ」

「ポチビタンデッド飲んだし問題ないわ。それより話聞かせてよ」

「あぁ、これ」


 俺が持っていたガルムの手紙をマナに渡すと、それをのぞき込んだ二人は、揃って首を傾げる。


「レジアータ南の通りにある地に私財を隠したって書いてあるな」

「『長き迷宮の底の底に、ポーア、お前さんが欲しがる物を隠した。ついでにあの戦争で貢献したって事で、聖帝様からお宝を貰った。ついでにそれも隠した。お宝は誰かに奪われちまうかもしれねぇが、あっちの方は大丈夫だろう。』だって。これってどういう事?」


 マナの問いに、俺たち苦笑する。

 すると、ベティーが懐かしそうに過去を振り返った。


「あれは私たち三人とアズリーの出会いの事ね」

「あの時は我々がランクAで、アズリーがランクBだったか」

「ホント、あの時のマスターは頼りなくて、大変だったんですからっ」

「まぁ、否定は出来ないな。皆に迷惑ばっかりかけてたしな。三人には色々教わったもんだよ」


 あれは俺たちの出会いの時、ベイラネーアの冒険者ギルドでダンカンから紹介された仕事だった。確か、笑う狐に襲われたりもしたんだよな。

 目指す先はベイラネーアの北にある迷宮。

 この書き方から察するに、ブルネアに住んでいたガルムは、あの戦争の後、聖都レガリアに住んだのかもしれない。聖都から見れば、あの場所は確かにレジアータの南。こう書くのも頷ける。


「そんで、そこには一体何があるんだよ、リーダー?」

「我々が潜った時、確かに財宝は手に入れた。無論、それは依頼主に渡す契約だったが、財宝を閉じ込めていた()は……今もまだあそこに残っているはずだ」


 リードの質問を答えたブレイザーだったが、二人は未だ要領を得ない様子。


「んもう、檻だけじゃわからないわよ、ブレイザー」

「む、そうか。……その檻はある金属で出来ている」


 言いながら、ブレイザーは俺の持つ杖を見たのだ。

 すると、二人はようやく手紙の意味を知った。


「「あっ! ドリニウム鋼!」」


 そう、俺のドリニウム・ロッドと同じ古代の金属――ドリニウム鉱石。ガルムはそれを鍛え上げドリニウム鋼にし、檻に加工した。


「……ん、他の皆も来たみたいだな」

「え? あ、本当ですー!」


 ポチも気付き、遅れてブレイザーたちが気付く。

 最初に姿を見せたのはライアンだった。


「遅れて申し訳ありません。さて、どちらに向かうのでしょうか?」


 ブレイザーとベティー、そして俺とポチが顔を見合わせる。


「「帰らずの迷宮へ!」」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ララの空間転移魔法陣により、俺たちはレジアータへやってきた。

 メンバーはブルーツと春華(はるはな)のいない銀全員と、俺とポチ。そしてララとツァルも一緒に付いて来た。

 といっても、すぐに帰らずの迷宮に向かう訳ではない。

 陽も傾いてきたので、今日はレジアータで宿をとる事になった。

 トウエッドで休めばいい話なのだが、ララ、ナツ、そして何故かポチに強請られては、皆妥協するしかなかった。

 銀はミーティング。俺はポチと共に食事に出かける事になった。


「マスター! あそこ行きましょう! あそこ!」

「夕飯までお前が決めるのかよ!」

「マスターが言ったんじゃないですか!」


 はて? 俺が一体ポチに何を言ったというのだろう?

 ポチに連れられてやってきたお店は、もの凄く古ぼけた――食事処。

 ふむ、段々と思い出してきたぞ? 確か、サガンに会いに行く前にこのレジアータに寄ったんだった。段々思い出してきた。店の名前は……――、


「「ディルムッドキッチン」」


 俺の曖昧な記憶と、ポチの明確な記憶が重なる。


「そうだそうだ。確かにここはディルムッドキッチンだった」

「む、マスターが『現代でも営業してる可能性は高い』って言ったんですよ! 忘れちゃったんですか!?」


 なるほど、ポチが強請った理由はこの店か。


「いや、確かに覚えてるけどな……?」


 夜とはいえ、まだ十九時だ。

 それにしては客が少ない。稼ぎ時なのに二人しかいない――って、


「何だ、ララにツァルさんじゃないですか」

「おー、アズリーもここかー。ポチ! ポチここ!」

「お任せください! さぁ、食べますよ!」


 準備の早いヤツだ、まったく。


「「魔王復活が己が身に降りかかるも、営業しているとは中々の剛胆。そうは思いませんかな、アズリー殿?」」

「あぁ、そういえばそうでしたね。レジアータの防魔障壁は最後になってしまったんですが……」

「「人の可能性を感じますな。さぁ、我々はこちらで食しましょう」」


 ツァルに言われるがまま、ポチとララの席から少し離れた席に座った俺。

 はて、何か話でもあるのだろうか?

 確かに俺も、戦魔帝サガンの事は少し話したいとは思っていた。

 やがて飲み物が運ばれ、瑞々しい野菜がふんだんに使われた創作料理を楽しんだ。

 しかし、この味……どこかで?


「「どうかね? ここの食事は?」」

「あ、いえ。とても美味しいです」

「「そうだろう。私とララの『ららふぁ~む』で採れる野菜や果物は、全てここへ運ばれる」」

「あー、やっぱりそうですか。味に覚えがあったので、気になってました」

「「あちらのポチ殿の話では、過去にもここへ来た様子」」

「えぇ、でも今の方が断然美味しいです。味付けも進化してますし、何よりお二人の作った野菜が更に味を引き立ててます」

「「ふふふふ、そうか。主人もさぞかし喜ぶだろう」」


 ツァルはカウンターの奥にいる優しそうな男を見る。

 ここへ食事を運んだのも料理をしているのも彼。そしてツァルの視線。つまり彼がここ「ディルムッドキッチン」の主人という訳だ。

 主人はララとポチの会話に交ざり、とても楽しそうに仕事をしている。


「「彼の奥方は子供を産んですぐ、亡くなったそうだ」」


 唐突に重い話をしてきたな。


「いきなりですね」

「「そうでもない。これは重要な話だよ、アズリー殿」」

「というと?」

「「私が独自に調べたのだがね?」」

「はぁ?」

「「あれは、ララの父親(、、、、、)だ」」

「ぶふぁ!?」


 俺はツァルに向かって口の中のモノを全て噴き出してしまった。

 しかし、ツァルはそれを予期していたかのようにかるくかわした。

 だが、しかし……待て。


 なんだって?

今日は一話のみの投稿です。

明日か明後日には二話あげたいと思います。

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