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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十一章 ~新生・魔法教室編~

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348 三王の行進

 ポチの「やべぇ、忘れてた」的な顔を拝んだ後、俺はすぐにストアルームを閉じて一度アジトへ飛んだ。

 ウォレンとトレースが上手く対処してくれたおかげで、キャサリンとジェイコブは大事には至らなかった。


「ははははは、こんなお土産があるとは思っていませんでした」


 ウォレンは目の端に涙を見せ、お腹を抱えながら笑っている。


「はぁ〜、腐っても戦魔国の重鎮よ。どうしろってのよ、まったく…」


 そして、アイリーンは頭を抱えながら困っている。


「お任せしてもよろしいですか、アイリーンさん?」

「嫌……嫌なのに断れない……」


 物凄く項垂れるアイリーンを見て、俺は苦笑しながら頰を掻いた。

 さて、あの二人はこの先どうするのだろうか。究極的に性格が悪いとしても、やはり戦魔国の重鎮である事に変わりない。


「お願いします」

「……わかったわ。色々情報を持ってるだろうし、こちらで対応するわ」


 なんだかんだ言って、アイリーンはちゃんとしていた。いや、していない方が問題だけどな。こういった小難しい事は、おそらくウォレンやトレースがやるのだろうけどね。


「次のお土産、期待していますね」

「じゃあトウエッドで美味しそうなのがあれば買ってきますよ」

「おぉ、それは楽しみですね」


 ウォレンは手を合わせて喜ぶ。こんなに笑顔を見せるヤツだっただろうか。いや、アイリーンも心なしか驚いているようにも見える。

 もしかして、ウォレンは今まで友人と呼べる人間が少なかったのかもしれない。なんとも、謎の多い男だからな。


「では」

「お気をつけて」

「わ、私にもお土産持って来なさいよね!」


 アイリーンの不可解な請求に苦笑し、俺はポチと春華(はるはな)が待つエッドの家に戻った。


「どどどどどどうでした!?」

「何とか無事だったよ」

「よかったですー……」


 ホッと一息漏らすポチ。まあそうだよな。飲まず食わずで数日監禁してしまったのだ。少なからず罪悪感が……――


「――じゃあこの穴戻しておかなくちゃですね!」


 違った。

 完全に二人を異国の地に埋めるパターンも考えてたみたいだ。こちらの考えの斜め上をいくポチの感性には脱帽する。


「ん? あれ、もう子供たち来たの?」


 子供たちがドタバタする物音が屋敷内から聞こえてくる。それが足音だとわかったのは、俺の部屋に向かってその音が近付いて来たからだ。

 ポチの耳がピクリと動き、襖(ふすま)がバタンと開かれる。


「んなっ!?」

「「アズリー!」」

「「ホントだ、アズリーだー!!」」


 大波のように訪れた子供たちは、そのまま俺の膝下までやってきて、跳びかかってくる。俺はそのまま押し倒され、十数人の子供たちのクッションとなってしまった。


「ア、アズリーだー!」


 おや? どこか聞き慣れた声が?

 どうも腹部に巻き付かれている腕が、他の子供たちより長いような気が? しかも中々に力強い。頭部をグリグリと押し付けられる感覚。これは一体?


「あ……あ、あ、あ……っ」


 そんな驚きのような声が、左の方から聞こえた。

 俺は子供たちが馬乗りしている僅かな隙間から、目を覗かせる。すると、見慣れたチワワーヌの見慣れない驚愕した顔が見えた。


「…………タラヲ?」


 俺はゆっくりと上体を起こし、ずるりと落ちてキャッキャと喜ぶ子供たちと、ガッシリと俺の腰を固定して、微動だにしない緑髪の女の子の頭部を見下ろした。


「アズリーだー!」


 ふむ、他の子供のように喜んでいる。

 しかし、徐々に周りの声は失われていく。他の子供が黙った事に気付かずに、緑髪の女の子は「アズリーだー!」と顔をぐりぐりと腹部に押し付けている。

 周りからは「ししし」といった笑い声が聞こえ、「つんつん」、「つんつん」とその女の子に何かのサインを送っている。

 もう、俺にもわかっていた。周囲から零れるヒソヒソ話の中に、その女の子の名前もあったからだ。そして何より、世界が終わったかのような表情をしたタラヲの存在が、全てを物語っていた。


「何やってるんだ、ティファ?」

「アズ――――」


 沈黙は意外にも長く、数秒に渡った。しかし数秒後、がっしり固定していた腕を放し、ティファは真っ赤な顔をしたままジリジリと後退していく。

 やがて廊下に出たティファは両手で顔を覆い、「んぁっ!?」という奇声を発した後、廊下を走って行ったのだった。


「「あははははははっ!!」」


 直後、子供たちの爆笑の渦の中心で、俺はポチに向かって顔を向け、そして傾げた。にししと笑うポチの意図も読めなかったが、両頬を押さえて「ひぃぁあああっ!?」と叫ぶタラヲの意図も読めなかった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 部屋の割り振りや、こちらの状況を把握すべくエッドの屋敷に訪れたイツキに甘え、俺とティファ、そして春華(はるはな)はエッドの冒険者ギルドに出されていた、いくつかのパーティクエストを行う事にした。

 薫と潤子に会うための申請は終えたし、後は連絡を待つばかり。その間、生徒の成長を見るのも俺の仕事だと思っていたからだ。


「ふはははははっ! ここがトウエッドか! いずれ我の肉球の下にひれ伏せるがよいわ!!」


 相変わらずスケールが大きいのか小さいのかわからないチワワーヌだが、あの愉(たの)しそうな顔を見ると、サガンが上手くやってくれたのだと安心出来る。

 しかし、俺には一つの懸念があった。

 何故かティファは一言も喋らず、春華はそっぽを向いたままなのである。


「ぷい」


 あの春華がこんな言葉を口にするとは誰が想像しただろうか。


「…………」


 あれからずっと顔を覆っているティファ。春華もそうなんだが、それでも付いて来るという事は、やはり強くなりたいという事だろう。

「せっかく二人きり」がどうとか変な事を呟きながら口を尖らせる春華を見て、ポチがお腹を抱えながら大地をバシバシと叩いている。


「……え、えーっと、討伐対象はランクBのモンスター、ゾンビキングと、ランクAモンスターのグールキングとオークキングだ。一匹ずつはそこまで強くはないけど、これだけ集まれば厄介だからね。皆注意するんだよ」

「…………」

「つーん」


 おかしい。性格が変わったのだろうか。いや、けど今朝の春華はいつも通りだったはずだ。

 もしかして二人は仲が悪いのか? いや、ベイラネーアで二人は一番早く仲良くなったはずだ。喧嘩中なのだろうか? そして何より、ティファは顔を塞ぎながら何故真っ直ぐ歩けるのだろうか?


「「ふんふふーんふふーん♪ ふふふーん♪ マスターのぉ~……ふふ~ん♪」」


 ポチとタラヲは仲良く先程の歌を歌っている。何それ、使い魔界で有名なの?


「む、マスターッ、前方に強い魔力を感じます」


 ポチは鼻が利かなくなった分、魔力の察知能力が向上してきたようだ。タラヲより早く気付けているのは称賛に値するな。


「むっ!? むぅうう! すんすん! すんすんすん! げ、解せぬ……くっ!」


 反対にタラヲはまだわからないようだが――


「ティファ! あっちの方が臭うぞ!」


 タラヲは後方を後ろ脚で指す。念のため俺は振り返ってみるものの、魔力の気配すらない。まったく、ポチ相手に見栄張らなくてもいいのに。しかし、これがないとタラヲとも言えないしな。タラヲの事も立てておくか。


「うん、俺にも感知出来たぞ」

「おぉ! 誠かアズリー!?」


 そうだな、あっちの方に真っ直ぐ十日くらい走れば、モンスターにも出くわすだろう。

 ぱあっと喜び尻尾を振るタラヲ。そして俺に跳びかかってくる友人P。


「あいてっ!? 何するんだよ!?」

「私のぉ! 私の方が合ってるんですぅうう!!」


 やばい、ついにポチまで拗ねだした。

 くそ、あちらを立てればこちらが立たずってやつだろうか……!

 しかし、それはそれ程長くなかった。

 跳びかかってきたポチがすぐに俺の身体から降り、大笑いで喜ぶタラヲがピタリと声を止め、両手で顔を覆うティファが、つんとそっぽを向く春華が腰を落として臨戦態勢となったのは、皆のこれまでが、無数の戦闘に染まっていたからだろう。

 俺は眼鏡を指で上げ、正面に現れる王たちの行進を捉えた。


「戦闘準備」

「「はい!」」

「ふはははは! 任せろ!」


 ゾンビキング、グールキング、オークキングとの戦闘を前に、皆の目が光る。

 しかし、俺とポチはいち早くその異変に気付いたのだ。三匹の王の周りを漂い、噴き溢れ、覆っている闇のオーラ。

 それは俺にとって、非常事態を知らせた。


「何で闇憑(やみつ)きがトウエッドにいるんだ……!?」

本日、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」の第九巻が発売致します!


下記、正確な特典情報がわかりましたので掲載致します。


【購入特典SS】


書籍書き下ろしSS:『若き日の出逢い』

⇒アイリーン、ガストン、そしてビリーの魔法大学時代。これを丁寧に描きました。そして少しだけコノハとの出逢いについても触れています。壱弐参がニヤニヤしながら書けたので、読者の方もニヤニヤして頂ければ幸いです。


初回版限定同梱版:『危険な魔法士面接』

⇒アズリーが去った直後、イシュタルとサガンの出会いをSSにまとめております。タイトルの通り、緊張感あふれる内容となっております。


TSUTAYA様店舗特典:『嵐の初日?』

⇒銀がトウエッドに向かった後、ポチズリー商店で子供を任されたイツキのお話です!


とらのあな様店舗特典:『筋肉信仰への道』

⇒美少年時代のトゥースが、使い魔のブルと共に話し、筋肉に目覚めるお話です。


くまざわ書店様店舗特典:『幼き頃の憧れ』

⇒過去のアイリーンが冒険者ギルド前でアズリーとポチに出会う直前のお話を書いています。


WonderGOO様店舗特典:『伝説の失恋』

⇒魔王を倒したアズリーとポチ。伝説の戦場では灰虎(はいこ)が寂しそうに空を眺めていた。強大な魔力により、ポチが去ってしまった事を悟った灰虎(はいこ)の感情は!?


そんなストーリーであります!



また、コミックス版『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』第二巻も発売中です!!

是非、書店様や、ネットショッピングなどでお求めくださいませ!



またまた、その第二巻コミックス収録の十二話部分が、ニコニコ静画様に昨日アップされました。

総合デイリーランキング4位、青年漫画デイリーランキング2位と、ありがたい情報も届いております。

皆様、是非是非コメントしてみてくださいね! 壱弐参も読みに行きます!



そして漫画の11話、12話の更新の際、漫画家の荒木風羽先生がTwitterにアップしてくださった、宣伝イラストも貼っておきますね! ※転載許可頂きました。






挿絵(By みてみん)


11話はトレースさん! めっちゃ美人でうれし泣きした。


挿絵(By みてみん)


そして12話はアイリーンさん! この話のアイリーン、超かっこよくて、可愛いっす。




それでは皆様、原作小説、そして漫画を、何卒、宜しくお願い致します!


壱弐参

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↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
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