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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十一章 ~新生・魔法教室編~

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342 目と耳の略奪

SSネタのご提示ありがとうございました。

何とか書けたました。本当に助かりましたー!

 皆の意見が一致し、トウエッドに向かう事に決めた俺たちは、その日はアジトの自室で休む事にした。

 トウエッドにいるナツに、夜遅くに頼むというのも悪い気がしたしな。

 俺とポチは自室のベッドに倒れ込むなり、すぐに意識を失ってしまった。眠るというより、そんな感覚だった。

 それだけ身体に緊張状態を強いていたのだろう。


「マスター! マスター! 朝ご飯ですよ! 朝ご飯の時間ですよ!」

「うぅ、出来れば時刻で教えてくれポチ……」

「この腹具合は……八時三十二分です!」


 凄いな。体内時計の魔術と寸分の狂いもない。

 一体どんな腹と感覚をしているのだろう、ポチは。


「確か銀の皆とは、九時に待ち合わせだったか。……ふぅ」


 身体を起こした俺は、ポチと共に身支度をして部屋を出た。

 食堂へ向かった時には、既にブルーツが朝食をガツガツと食べていた。


「よおブルーツ、おはよう」

「おう! 今日から忙しくなんぞ! おめーたちの分も頼んどいたから食っとけ!」


 相変わらずガサツそうに見えて律儀だな、ブルーツは。

 俺とポチ、そしてブルーツが朝食を食べていると、ベティーとリーリアがやってきた。

 そう、リーリアの登場は予想外だったので、ベティーと同室となったのだ。

 何やら二人は楽しそうに話をしながら歩いて来る。夜の内に会話が弾んだのだろうか。

 まぁ、ベティーなら誰とでも上手くやりそうではある。

 少し間をおきブレイザーがやってくる。というか時間ピッタリだった。流石ブレイザー。真面目だな。


「さてっと、げぷっ」

「兄貴、汚い」

「そうですよブルーツさ――けぷりっ」

「ポチ、ばっちぃ」

「「すみません」」


 ブルーツとポチが謝罪を述べた後、ブレイザーが立ち上がる。


「ナツが来る」


 そう言って、ブレイザーは居住スペースの方を見た。

 すると、トコトコという足音と共にナツが現れた。

 その時、リーリアの表情がピクリと動いた気がした。


「あんなに小さい子が空間転移魔法を?」

「そうは言っても、確かナツももう十五になるんだよ。ジョルノとそこまで変わらないんじゃないか?」

「……確かに、ジョルノが前線に出たのもそのくらいだったわね」

「そうそう、そういう事」


 まぁ、ナツは、フユや周りの十五歳の女の子よりかは少し小柄なのかもな。


「ブレイザー! おはよう!」


 とつんという音を聞かせ、ナツはブレイザーの懐に跳び込んだ。

 仲良いよな、この二人って。


「あぁ、おはようナツ」

「ナツー、変わった事はあったー?」


 ベティーはナツの頭をぐりぐりしながら聞く。


「昨日ね、春華が大きな男の人たちに囲まれてね! 大変だったの!」


 なんて危険なところなんだ、トウエッド。


「でも全員を刀でずばばーって斬って丸裸にしちゃったの! あ、(ふんどし)ってやつは残ってた!」


 なんて危険なところなんだ、銀。


「なーんだ。前にも似たような事あったじゃない? まぁトウエッドはまだ慣れない土地だし仕方ないかー」


 ベティーはケタケタと笑いながら言った。

 そうか、前にもあったのか。春華も成長したんだよなー。

 皆の話じゃ銀のチームランクは既にSと言っていいレベルだ。

 ナツもランクSの昇格審査が近いんじゃないかと話があるそうだし、皆、相当頑張ったんだろうな。


「よし、それじゃあ行くか! トウエッドに!」


 ブルーツの声に皆頷き、俺たちはナツが描いた空間転移魔法陣に乗った。

 あれから五千年後のトウエッドか、これはちょっと楽しみになってきたな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……ここは?」

「首都エッドの宿の私の部屋だよー」


 俺の問いに、ナツはそう答えた。


「お待ちしておりました、アズリー殿」


 部屋で待っていたのはライアンだった。


「ライアンさん、他の皆はどうしたんです?」

「エッドの冒険者ギルドで待機しています。私は別件でこちらに」


 別件? はて、どういう事なんだろう?

 すると、ライアンはブレイザーに何か紙を渡していた。


「後はリーダーのサインだけです。宜しくお願いします」

「わかった」


 ブレイザーはそれだけ言って、俺たちと別れてしまった。

 どうやらライアンが渡した紙に、何か理由があるのだろう。


 ライアンに案内されるままに歩いてみた感じ、エッドの雰囲気も五千年前とあまり変わっていないように感じる。

 やはり魔王という(くさび)が、文明の進化を阻んでいるという事か。

 魔王という存在を根本的に消す事は出来ないのだろうか?

 勿論、目下の課題は山積みだが、五千年周期とはいえ一時しのぎである事には変わらない。

 本当に重要なのは、その周期すらもなくす事にあるんじゃないか?

 そんな事を考えている内に、俺たちはエッドの冒険者ギルドに着いた。

 見た感じ開放的な酒場という感じだ。

 ギルドの受付員が座っている場所は外からでも見られる。

 座席も外にあり、扉の奥からも喧噪が響いてくるから、表でも外でも、好きに飲めるような場所なのだろう。

 扉を開けると、そこにもギルドの受付員がいた。

 おや? これは一体?


「あー、やっぱり最初はそうよね。こっちでは依頼を受けて、外のは報告用ね」


 ベティーが簡単に説明してくれた。

 なるほど、作業効率を考えるなら悪い事じゃない。

 ここはトウエッドの首都なのだし、依頼や報告も多いだろう。


「「アズリーさん!」」


 酒場スペースまで行くと、そこから嬉しそうな声が響いた。

 声から察するに、春華とアドルフか。

 マナは俺を見るなり髪の毛を整え始めた。ふむ、大変な討伐依頼でもこなしていたのだろうか?


「お元気そうで何よりでありんす」

「アズリーさん! 後で是非ご一緒したい依頼があるんです!」


 春華はつつましく、そしてアドルフは少年のように目を輝かせて俺に言ってきた。

 春華は身のこなしが更に軽くなったな。きっとベティーの指導のたまものだろう。

 アドルフも、フォールタウンにいた頃とは比べものにならない程成長している。フォール勇士団の生え抜き……か。いやはや、若い人材は伸びるのが早い。


「あぁ、時間が空いたら一緒に行こう」

「はいっ!」


 嬉しそうなアドルフに笑みを送る。

 するとアドルフはちらりと横に目線を移した。


「それで、こちらの方は?」

「あ、えーっと……彼女はリーリア。俺の仲間だ」


 ツンとしているリーリアが何故か俺を見ている。

 いや、俺を見ていない? もう少し下の方だ。これは腕か? 俺の腕の方を見ているのか? あぁ、やはり腕だ。春華がちょんと触れている俺の腕をちらりと、そしてまたちらりと見ている。

 春華もその視線に気付いたようで、そっと外すところは流石だな。色食街(しきしょくがい)で働いていたからか、ボディタッチにそこまで抵抗がないのか、よくわからないが、この前の再会の時もちょくちょく触れてきたような気がする。


「えーっと……まぁ頼りになる仲間だよ。仲良くしてやってくれ」


 そう言うと、リーリアは無言でうんうんと頷いていた。

 あれは喜んでいるのだろうか?


「も、勿論です! よろしくお願いします!」

「ん、よろしくね」


 あれはもしかして照れているのか?

 まぁ、リーリアもあの時から精神的に大分成長しているだろうし、そうなのかもしれない。

 その後、リーリアと皆は短いながらも挨拶を交わしていた。

 何故か。何故か春華とマナとの挨拶は他の皆の挨拶より少しだけ長かったのは気のせいだろうか?

 ポチは笑っていたが? まぁ女性同士、気が合うのかもしれないな。


「そんで? リーリアが言ってた良い場所ってのはここから近いのかい?」

「エッドの神山、その向こうにある一帯が濃い魔力を持ったモンスターが多かった」

「神山か……通り抜けるにゃ、ちょっと大人の事情が必要かもしれねぇな」


 確かに、神山ともなれば、国からの許可も必要だろう。


「といっても、未だにあそこがあるとは限らない。まずは情報を集めるのがいいんじゃないかしら?」


 そう言ってリーリアは俺を見た。


「そうだね。情報を集めつつモンスターの討伐依頼をこなして、トウエッドの土地に慣れる事も大事だと思う。どうでしょう、ライアンさん?」

「私も同意見です。レイナ、面白そうなパーティクエストを探しておきなさい」

「はい、長」


 レイナが立ち上がると、リードとブレイザーもそれに付いて行った。

 パーティクエストで一度に受けられる依頼は三件。

 色々吟味するのかもしれないな。


「ポチ、ちょっと外出てくるよ」


 俺はポチに小声でそう言うと、ポチはすぐにその意味を理解した。


「薫さんと潤子さん……ですか?」

「あぁ、神山への入山許可も頼まなくちゃいけないし、色々話したいしな」

「かしこまりました。ではお気を付けて」


 俺が立ち上がると、ライアンが「どちらへ?」と聞いたが、「野暮用」という事で納得してくれた。

 薫や潤子がいる聖堂までかなり近いし、討伐依頼が決まる頃には戻って来られるだろう。


 ギルドを出て、小走りに聖堂へ向かっていたら、俺の鼻を特徴的な匂いがくすぐった。

 この独特な匂いは……麝香(じゃこう)

 それは今しがたすれ違った女から漂ってきた匂いだった。

 振り向くとそこには土地に合わない褐色肌の女が一人、ちらり……ほんのちらりとこちらを向いていたのだ。

 肉感的な腹部を露出させた民族衣装のような服。

 額には金装飾のサークレット。顔の下半分を隠すフェイスベールから覗かせる妖しい薄紫(はくし)の瞳。

 何故か、俺は何故か、この女から目が離せなくなっていたのだ。


「……愚者……」


 大変だ、耳も離せなくなった。

ありがたい事に、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」が「小説家になろう」様の累計ランキング(小説家になろうに掲載されている全作品の中の上位300位)に観測されました。

まだ299位なので、すぐに消えちゃうかもしれませんが、569,207作品(2018/5/23時点)の中で300位って結構凄いのでは!?

という訳で、皆様ありがとうございます!


【小説家になろうの豆知識】

読者の方は知らない方がいるかもしれませんが、作品をお気に入り登録すると、2ポイント作品に加算されます。更に文章評価とストーリー評価で最大10ポイント。つまり、アカウント1つにつき最大12ポイントを作品に付与できるのです。

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」は今、このあとがきを書いている時点で「64,456」ポイントです。

これがランキングとかに反映される訳です。

これ程お気に入りや評価をしてもらえて本当にありがたい事です。


という訳で、応援している作品や作家さんがいれば、是非お気に入り登録や、評価をする事をおすすめします。作家さんが喜ぶよ!

因みに、文章評価と、ストーリー評価はその作品の「最新話の最後まで」読まないと出来ないので注意です。

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