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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第八章 ~聖戦士編・後編~

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247 匍匐前進

 まったく、こんな忙しい時に誰だ、一体?
 この魔力波動は……あれ? 何でポルコが?

『緊急事態なのだよ、ポーア君』
『あ、はい。え? 一体何がどうしたっていうんですか?』

 俺がソドムの街にいる事を知って尚ポルコ・アダムスが念話連絡をしてくるという異常事態。
 それだけでポルコの言葉の頭にあった意味は伝わってきた。

『驚かないで聞いてくれたまえ』

 ん~……物凄く嫌な予感しかしないのは気のせいか?
 いやいや、きっと茶柱が立ったとかそんな類の話だろう。

『実はだね。フェリスと――――』
『――――ちょっと待ってください…………』
『何かね? これはかなり急を要する事態だよ?』
『その「フェリスと――」の後に続く言葉。まさか「ブライト君とチャッピー君が」とかにならないですよね?』
『……ハッハッハッハッハ!』

 おぉ、何か笑い飛ばしている感じが――――――

『そのまさかだよポーア君! その三名様がブルネアの大空へ羽ばたいて行ってしまったよ!』

 ――――――しなかったっ!?
 くそ。道理で緊急事態とは言いつつ声が慌てていないと思ったよ!

『いやぁ、流石は神に認められた聖戦士。実に見事な慧眼だねぇ。ふふふふ、これで私も安心が出来るね』
『何が安心ですか! アダムス家のご息女が家出したんですよ!? もう少し真面目に考えてくださいよ!』
『可愛い子には旅をさせろと言うだろう? 娘が大事な私ではあるがね? 娘に期待しない私でもないのだよ?』
『いや、ポルコ様はそれでいいかもしれませんが、ジュン様が大変でしょうっ?』

 ブライト少年大好きラブラブのあのジュンだぞ? 今頃取り乱しているに違いない。

『それも君の耳に入れておこうと思っていたのだよ』

 おや? こちらについても落ち着いていらっしゃる?
 何かあったのだろうか?

『あの三人がブルネアから飛び立ったという知らせ。当然知らせてくれたのは空間転移魔法でクッグ村に転移してきたジュン殿だった。しかし、彼女は落ち着いていた。私が驚く程にね……』

 あのジュン…………が?

『彼女が今大変な時期(、、、、、)にあるという事もあるのかもしれない』

 大変な……時期?

『ふむ、これは前から決まっていた事だし今言う事ではない、か。今の話は忘れてくれたまえ』
『随分と気になるような言い方ですねぇ……』
『ハハハハ、友人のたまの意地悪だと思ってくれたまえ』

 まったく、本当に都合のいい友人だよな。
 皇后の隠し財産からお金が戻ってきて、泣きながら喜んでた癖に。

『まぁいいです。……それで? ジュン様は何と仰っていたんです?』
『何も。ただ一言「行ってしまった」とだけ……』

 …………ジュンは一体どんな気持ちでその言葉を言ったのだろう。
 きっと、思うところが色々あったのだろう。
 これまでジュンはブライト少年に溺愛とも言える愛情を注いでいた。それがぽっかり抜け落ちて消えてしまったのか、それとも自分がブライト少年に負わせてしまった愛情という名の重みを悟ってしまったのか。
 その奥底に眠る感情は俺にはわからない。
 もどかしいが、これも歴史の一端という事なのだろう。酷な話だが、俺が手を出せる事じゃない。
 俺が今もブルネアにいないのは、何故だ? そう、魔王を倒すためにソドムにいるからだ。
 割り切る事でしか気持ちを制御出来ないとはな。

『……三人を見つけたら必ずそちらへ戻します。そうジュン様にお伝えください。あ、いや俺が直接――――』
『――――いや、私から言っておこう。今君はそちらの対応に集中すべきだ』

 止めるように言い放ったポルコ。
 確かにそうだよな。
 ポルコ自身も、ここでの念話連絡は本意でないはずだ。
 俺に連絡してきたって事は三人からの連絡も、ポルコからの連絡も取れないという事だからな。
 まったく、あの三人め…………見つけたらまたお説教だな。
 少しは成長しただろうが、中身はあんまり変わっていないようだな。
 チャッピーのヤツ…………もしかしてブライト少年とフェリス嬢に毒されちゃったか?
 子供の成長は早いというが、こうやんちゃに育ってしまうとどこか責任を感じてしまうな。

『……ありがとうございます。では、ジュン様によろしくお伝えください』
『うむ、武運を祈っているよ、ポーア君』

 ポルコが念話連絡を切る。
 すると、俺の前を匍匐前進(、、、、)しているポチが睨んでくる。

『ちょっとマスターッ。ちゃんと集中してくださいよっ。見つかったら(、、、、、、)大変なんですからねっ』

 念話連絡ですら小声で怒ってくるポチ。
 そう、俺は……俺たちは今非常に困難な旅の途中だった。
 マントが擦れ、ボロボロになる程匍匐前進(ほふくぜんしん)をしているのには理由がある。
 音を立ててはいけない。気配を漏らしてはいけない。それ程の脅威を前に逃げ出してはいけない。
 脅威とはつまり――――西に向かい谷に下り、山の中から東に向かい、自然に出来たであろう洞窟を通る今…………頭上を覆いそうな程の数の、すやすやと眠る古代モンスター《ヒュドラ》の巣を横切っているのだから。
 インビジブルイリュージョンで姿を隠しているとはいえ、これだけの事をするには理由がある。
 ヒュドラの平均レベルが二百を超えているからである。数にして約二十匹。
 聖戦士の力を持った俺と、天獣の力を持ったポチでも、強力な再生能力を持つヒュドラを相手には出来ない……とは言えないが、かなりきついだろう。
 ガルムのヤツめ…………さてはこれを知っていたな?
 なるほど、ヒュドラは火に弱い。魔法が使える俺とブレスを使えるポチが適任か。
 予め情報をくれたっていいのに…………。
 そしたら多少は準備ってもんが出来たはず………………いやぁ、今の状況じゃ無理だったか。
 こういった突貫行動も必要だという判断か。あのおっちゃん、意外に色々考えてるな。
 ところで前で尻はふりふりと、そしてもぞもぞとしているポチ君の進行方向がおかしい気がするのは俺だけだろうか?
 いや、俺しかいないんだけどな。

『ポチ君ポチ君……そっちは違うのではないのかい?』
『いいえ、私の鼻がこっちだと告げていますっ! 美味しい船に乗ったつもりで付いて来てくださいっ』

 美味しい船…………聞いた限りじゃ溶けてしまいそうな印象ですけど?
 うーむ、コイツを先に行かせたのは失敗だったんじゃないだろうか?

『…………ん? そういえばポチ? いつの間にそんな嗅覚が戻ったんだ?』
『こと食べ物に関しての嗅覚は変わる事はありません! 未来永劫ね! ふんふんふん……むっ!』

 ………………食べ物? 美味しい船?
 この短い時間で得た情報を元に整理すると……ポチのヤツ食べ物の匂いを見つけたって事か?
 あれ? 確か美味しい匂いを発して獲物を集めるモンスターがいたような――――ぁ。

『おい、ポチ待て! それ以上先に行くなっ!』
『おぉ! 見てくださいマスター! 美味しそうな実をした植物さんですよ!』

 ……しまった。

「ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウイッッ!!」

 まるで食料を見つけたかのような嬉しそうな声。
 こちらにいらっしゃるのは植物系モンスター唯一のランクSS――デッドグッドフレグランス。
 近づかなければ危険のないモンスターが、何故古代からランクSSに位置付けたかには理由がある。
 デッドグッドフレグランスから生えるいくつもの触手が届く範囲であれば、たとえ同ランクのモンスターであっても捕食対象となり、そのモンスターは自らの運命を受け入れなくてはならないという……。
 その触手に――――

「いやぁああああああああああっ!?!?」

 ――――捕まったポチさん。

「助けて! 助けてマスターッ!?」
「うるさい! それどころじゃない!」
「いつからそんなに薄情になったんですか!!」
「違う! 俺も助けて欲しいんだよ!!」
「はえっ?」

 背後から触手に吊るされたポチが、間抜けな声で俺の視線を追う。

「ヒュドラが……起きちゃいましたね? てへっ♪」

 可愛く言うなよ。

「つまり」
「私たちは」
「「……ピ~~ンチ……」」
いつも「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」を読んで頂きありがとうございます!

コミカライズ担当の漫画家の「荒木風羽あらきふうう先生」が描いている、コミカライズの三話が知らない内にあがってました\(^o^)/ 宣伝絵の転載許可を頂きましたので下の方にペタッ。
















挿絵(By みてみん)

マナちゃんのどあっぷ
気が強い感じが出てて好きです。
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