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(2)

明け方のことである。


昨日が昨日だったから、僕もあれでほっとして、エロゲを起動する間もなく、しーちゃんの横で、すっと寝てしまった。ていうかあんなのがあったあとでエロゲなんかやれるはずがないっつの。


僕は僕の出来ることをしたい。しーちゃんがあれほど苦しんでいるのなら、ほんのわずかでも、それの助けをしたい。


多分それが、「弟」ってことなんだと思う。


ところで、しーちゃんは、僕が起きる前から起きていた。


毛布をめくり(僕にきちんと毛布がかかるようにしてくれていたのが優しいところだ)、上半身を上げ、じっと虚空を見つめている。


僕は目が覚め、その光景を、その彼女を見ている。


こんなことを言うのは不謹慎かもしれないけど、


美しい。


ある種の虚脱状態なのかもしれない。それかもしくは、深く自分を省察しているのかもしれない。何かを悟っているのかもしれない。生に対するひとつの充足感を得ているのかもしれない。


そんなもろもろを感じさせる、意志の強さ……「儚い強さ」という形容がもし許されるのなら、今のしーちゃんはそうだった。


人格が崩壊しそうな夜のあとで。嵐のあとで。


アレは暴風雨以外のなにものでもなかった。


なにがしーちゃんをあそこまでさせるのだろう? わからない。


やがてしーちゃんは僕が起きるのに気づく。開口一番、


「……ごめん……、ね」


そう、言った。


「ほんとにごめんね。いつもいつも……」


「よく頑張ったね」


それ以上の言葉は彼女に言わせない。彼女は本当によく頑張ったのだから。惨めな思いをこれ以上する必要なんて、ない。ましてや僕に申し訳なくなる気持ちなど。「心胆寒かしめる」ほどの悪夢を見た人間が、謝る必要なんてないんだ。


僕は彼女の頬を撫でる。


キスのひとつでも出来りゃ上出来なんだろうが、すまん。ヘタレで。それに、この状況につけこむのは、最大級に卑怯だろう。


彼女の先ほどからの表情は……「シーナ・ヒラサキ」のものではない。ある種巫女的な、神聖ささえたたえたものでもある。それは恐らく、世の誰も見ることが出来ないものだ。


それを見るたび……そう、子供のころからだ。僕はある種の畏敬の念にかられる。


「頑張ったよ」


もいっかい、僕は言う。


かすかに彼女は微笑む。いつものように、にっこり、ではない。ただ静かに、なにかを確認するように。


それはひとつの儀式だった。嵐のあとの。発作のあとの。僕としーちゃんの、世界でふたりだけの。


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